考えていますか?デジタル終活、2組のご夫婦に伺った現状と対策

エンディングノートが話題となっていますが、「デジタル遺品」や「デジタル終活」って聞いたことありますか? 
以前もアンケートや専門家の記事で取り上げたこの問題。実際に、30代と60代のご夫婦に、その認識やどんな対策を行っているのか伺ってみました。

●そもそも「デジタル遺品」や「デジタル終活」ってなに?

もしあなたが突然亡くなったら、そのスマホの中身も「デジタル遺品」となります。

「デジタル遺品」とは、パソコンやスマホ、タブレットなどのIT器機や、SNSやクラウドなどのインターネット上にあるデータのこと。中には、オンライン銀行口座、電子マネー決済、オンライン投資などの、金融資産に関わる情報も入っています。
もちろんそれだけじゃなくて、写真、メール、SNSの記録も、家族にとっては、お金にかえられない大切な思い出です。

もし、あなたが突然亡くなったら、これらデータにアクセスすることができずに失われてしまう可能性があるのです。そんなことがないように、どこにどんな資産やデータがあるのか、デジタルに関することを整理してわかるように残すことが「デジタル終活」と言われています。

●夫婦だけど、お互いに相手のパスワードを知らない

今回は、実際に親世代・子世代の2組のご夫婦に「デジタル終活」についてお話を伺ってみました。2組とも、公私ともにふだんからスマホやSNSを使っている方々です。

井村晋作さん・佳那さん(30代)。どちらもIT系に強い共働きご夫婦。2歳のお子さんがいる。

——「デジタル終活」という言葉を聞いたことはありますか? また、たとえばお互いのスマホのパスワードをご存じですか?



井村さん(夫)

いや、知らないですね。「デジタル終活」なんて話をしたこともないし。

井村さん(妻)

「デジタル終活」については知ってましたが、何にもしていないし、お互いのパスワードも知らないです。

中村 篤さん・秀⼦さんご夫婦(60代)。お2人で豊島区の着物屋さんを切り盛りしている。成人した息子さん(30代)は独立。



中村さん(夫)

あれこれ設定するパスワードがあまりにも多すぎてね。自分でも覚えきれていないくらいですから。

中村さん(妻)

自分でもわからなくなっちゃうくらいですから、相手に伝えるなんて、とてもとても…。

中村さん(夫)

ただね、ちゃんと伝えておかないといけないなってのは思っていますよ。いざという時に、残された家族が困るし、わかるようにしてあればすごく助かるだろうから。

●パスワードの保管方法は?「実はクラウドに保存している」

デジタル資産ジャーナリスト古田雄介さん作成の「デジタル資産メモシート」(写真左)を、2組のご夫婦に見ていただきました。対象サービスとID/パスワードを一覧にしてまとめるテンプレートです。

▼テンプレートの詳細は以下の記事から
マンション住民のギモンに答える、デジタル終活の始め方

IT関係のお仕事に携わっている井村さんご夫婦。仕事でよく使っているからこそ、使用するサービスやアプリの数は膨大なはず。

——今後銀行の通帳もなくなる方向にシフトし始めているようです。そうすると、通帳すら残せなくなってしまうかも。「デジタル資産メモシート」のようなテンプレートもありますが、皆さんは実際に対象サービスとID/パスワードはどのように取り扱っていますか?


井村さん(夫)

ちゃんとまとめておきたいと思いつつ、まとめられていない状況ですね。

井村さん(妻)

私は、自分が覚えきれないので、「Evernote」(※1)というクラウドのメモアプリを利用して、「★☆」とか伏せ字を組み合わせて、内容と結びつかないようなかたちで保存してあるんです。ただ、あくまで自分用で、誰とも共有していないし、誰にも開け方がわからないと思う。

※1 Evernoteとは?

ノート、ボイスメモ、写真などのデータを保存して一元管理できるクラウドサービス。どの端末からでも必要な情報にアクセスできる。
→Evernote
※外部サイト

オンラインショップも運営しているので、公私ともにデジタルデータ管理は必須という中村さん。



中村さん(妻)

私もいろんなところに書いてあるんだけど、自分でもわかんなくなっちゃってまた再設定したりして(笑)。まず、まとめるもの一覧が欲しいですね。ただ、これだけのリストじゃ、きっと全然足りない!



中村さん(夫)

実は私も、自分が必要なネット関連の一覧データをクラウド(※2)に保存してあるんですよ。商売でも必要ですからね。もちろん僕自身しかわからない内容にしてあるし、そもそもクラウドアカウントにアクセスできないと開けない。



中村さん(妻)

えー、それは私には操作できないから、息子にちゃんと言っておいてね(笑)。

※2 クラウド(Cloud)とは?

さまざまなデータを、インターネット上のスペースに保存して一元管理できるストレージサービス。どの端末からでも必要な情報にアクセスできる。主なクラウドサービスに、Googleドライブ、OneDrive、Dropbox、iCloudDriveなどがある。

——なるほどなるほど、実はお2人ともちゃんとリスト化していらっしゃるんですね?



中村さん(夫)・井村さん(妻)

基本、自分のためですから!(笑)

自分が日常的に使っているサービスは、備忘録的にクラウドにリストを保存しているというお2人。これをもう少し整えていけば、パートナーにもきちんとわかるかたちで「デジタル資産」を伝えられそうです。

ただ注意点は、本人が亡くなったあとの有料クラウドサービスは、引き落とし口座の凍結によって自動更新がされなくなり、利用中のサービスが停止する場合(※サービス種類によって異なる)もあることですね。

●SNSも「デジタル遺品」、どうする?どうしたいか?

SNSは、距離や場所、国籍を越えて、誰とでもつながることができる交流の場。

——写真投稿や日々の出来事を書き綴っているSNSも、「デジタル遺品」になると思うのですが、亡くなったらどうしてほしいですか?



井村さん(夫)

ミクシィとか、昔よく使っていたSNSには黒歴史が残っているので、いま見ると恥ずかしくなります。あとで古いSNSは消しておかなくちゃ(笑)。

中村さん(夫)

SNSには見られたくないものを載せていないから、最終的には残しておいてもいいんじゃないかな。2年前に亡くなった友人のSNSのアカウントは、命日のたびに友人から投稿があって、オンライン上の偲ぶ会みたいになっていて、それはそれでいいなあと思いますね。

井村さん(妻)

私は、万一亡くなったときのFacebookの追悼アカウント(※3)の管理人を夫に指定しています。リアルなメールアドレスや電話番号を知らなくて、SNSだけでしかつながっていないという友人・知人も多いので。追悼アカウントに切り替えて貰えば、SNS上で皆に知らせることができますから。

井村さん(夫)

そうだったんだ。僕は設定していないな。

※3 追悼アカウント

Facebook、Instagram、TwitterなどのSNSでは、故人が生前利用していたアカウントを、家族や友人が思い出を共有するためにそのまま残す「追悼アカウント」という設定方法がある。死後も、故人のアカウントを閲覧したり投稿したりでき、悪用や乗っ取りを防止できる。設定方法は、SNSサービスによって異なる。

——SNSも、将来お子さんに思い出を残せる「デジタル資産」になるのではないでしょうか?


中村さん(夫)

あると思いますよ。SNSって日記みたいなもんだから。うちの父がなくなったばかりなんですが、遺された父の日記や手紙を見て、妹と「へえ、この頃こんなこと考えていたんだ」って思いますからね。昔なら遺された手紙や日記が、現代ではSNSになるのかも。

●「デジタル終活」のための新しいサービスってどんなのがいい?

——家族に「デジタル資産」を遺すことが重要だと感じられたと思います。では「デジタル終活」のために、どんなサービスが欲しいですか?



中村さん(夫)

パスワード一覧みたいに、生命保険、銀行の一覧とか、息子がこれを見ればすべて「デジタル資産」がわかるようなエンディングノートのオンライン版が使えればいいのかな。ただ、よほど信頼できる会社が提供するサービスじゃないとね。

井村さん(夫)

オンラインに預けるサービスなら、「この順番で連絡するといいですよ」ってナビゲートまでしてくれるといいですね。

中村さん(夫)

うちの父が亡くなる前後も、めちゃくちゃ大変でね。家のことで、ある会社に相談したら、父が字も書けない状態なのに、どうしても本人の確認とサインが必要だと言われたことがありました。将来はこういう手続きも、これからはどんどんデジタルにシフトしていくのかなと思ってます。

井村さん(妻)
Siriみたいなナビゲートが声紋認証で全部パスワードとか教えてくれるシステム
がほしいですね。問題は、自分が亡くなったときだけど。パスワードとしての声紋を録音しておかないといけなくなっちゃう。

中村さん(妻)

夫婦のどちらかが亡くなった場合だけじゃなく、一緒に亡くなってしまう場合もあるので、そこも考えないといけないですね。

中村さん(夫)
家族で共有できる「中村家フォルダ」をクラウド上に作成する
しかないか。下二桁は一緒にしておくとか、「母親の旧姓は?」とか、家族の合い言葉で開く共有フォルダみたいなものですかね。

●自分が亡くなった後に気にかかるのは、ネット金融のオンライン口座がトップ!

▼「デジタル遺品(故⼈のデータ)」に関するアンケート結果
マンション住民に聞きました。デジタル遺品、どうしていますか?

2019年に実施した「デジタル遺品(故⼈のデータ)」に関するアンケートでは、「デジタル遺品について考えたことがない」という人が約60%でした。
また、自分が亡くなったあとに気になるデータのトップは、「ネット金融(銀行、証券など)のオンライン口座」。

ネット金融情報などの「デジタル遺産」や、思い出の写真データやSNSなどの「デジタル遺品」を、どうやって家族にわかるように残すのか、またその情報をどうやって安全に守るのか、というのがこれからの社会の課題です。

終活やエンディングノートといった取り組みに加えて、「デジタル終活」についても、今後真剣に考えていかなければなりません。


井村さん・中村さんご夫婦のお話で、「デジタル終活」をもっと身近に感じる事ができました。皆さんも一度、ご夫婦・ご家族で、「デジタル終活」について話し合ってみませんか?

▼「デジタル大掃除のすすめ」も参考にご覧ください。

デジタル終活の仕方などを専門とするデジタル資産ジャーナリスト古田雄介さんに教わる、デジタル大掃除のすすめ。

2020/11/02