マンション住民のギモンに答える、デジタル終活の始め方

以前マンション・ラボ会員の皆さんにデジタル終活についてのアンケートを行ったところ大きな反響が!今まで考えていなかったものの、重要なことなので改めて家族と話合いたいという声が多く上がっていました。そこで今回、マンション・ラボではデジタル終活の進め方について、専門家へ寄稿いただきました。「デジタル遺品」って何?という方も、これを機に一緒に学んでいきましょう。

マンション住民に聞きました。デジタル遺品、どうしていますか?

【ライター】
デジタル資産ジャーナリスト:古田雄介さん

1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年に執筆業へ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。「古田雄介のアキバPick UP!」(ITmedia PC USER)、「インターネット跡を濁さず」(d.365)、「ネットと人生」(インプレス シニアガイド)などを連載。著書に「ここが知りたい! デジタル遺品」(技術評論社)、「故人サイト」(社会評論社)、「死とインターネット」などがある。
2020年1月に中公新書ラクレよりデジタル遺品に関する新著を刊行予定。

デジタル遺品の二大特性をつかんで終活を

初めまして。デジタル遺品を追いかけている記者の古田と申します。

デジタル遺品を定義づければ「デジタル環境を通してしか実態がつかめない遺品」となります。電源を入れてログインしないと使用状況が分からない故人のスマホやパソコン、そこに保存されているアプリやファイル、電子メール、インターネット上にあるSNSのアカウントやオンラインバンクの口座なども、すべてひっくるめてデジタル遺品といえます。

とはいえ、本質的なところは「従来の遺品の“デジタル版”」でしかありません。紙に焼いた写真もデジタル写真も写っている景色に差はありませんし、株券も紙とデジタルで価値に違いは生じません。

それでも何だか正体不明な感じがするのは、次の二つの特性からくるところが大きいと思われます。

 その1…モノとして見えにくい、分身する、拡散する
 その2…困ったときに誰に相談したらいいか、どんなサポートがあるか、分からない

その1はデジタル本来の特性です。デジタルデータはモノとして存在しませんし、0と1で作られた記号でしかないので、完全なコピーを作ることも容易です。あるはずのネット銀行の口座の情報が郵送物や書類からはまったく見つけられなかったり、故人が残した情報がネットで拡散してしまう不安に襲われたり。このあたりは、形ある遺品にはない難しい部分です。

 その2は、ITやインターネット業界が利用者の死後の対応に、まだ手探りのところが多く、サポート体制が整備途上にあることが原因です。故人のスマホのロックを解除できなくなっても、通信キャリアやスマホを作ったメーカーは基本的に助けてくれません。故人のブログを相続できるか否かは、そのブログの運営元の方針によって異なります。デジタル自体が世間に普及して30年程度しか経っていない新興の存在なので、業界全体のノウハウがまだ十分にたまっていない側面があるのです。

こうした事情があるため、デジタル資産を持つ人が何も備えずに亡くなると、遺族は形ある遺品では味あわないような苦労や不安に苦しむことがあります。ですから、持ち主が元気なうちに率先してデジタル終活することはとても重要なのです。

デジタル終活を実践することで、契約自体を忘れていた課金サービスに気づいたり、できれば家族に見られたくないデータを目立たなくさせたりと、持ち主のメリットにもなります。家族のためだけでなく、自分のためにも取り組んでみましょう。

伝えるべき情報はA4用紙などにメモして実印と一緒に保管

デジタル終活は、死後の放置リスクを把握して持ち物を整理することが肝要です。下の図を参考に大きく3タイプの持ち物を意識してください。

デジタル資産の分類

A…放置リスクが高い持ち物

放置すると日常生活へのリスクが高くなる持ち物です。ネット銀行の口座やFX、仮想通貨といったオンライン上の金融資産、自宅のネット環境の通信契約などは、持ち主に万が一のことがあったときに家族が気づかないと、相続や家族の日々の生活に支障が出ます。仕事のデータをパソコンやスマホに入れている場合、職場の同僚や取引先に迷惑をかける可能性が高いので、ここに含まれます。これらのデータにアクセスするために使っているスマホやパソコンのログインパスワード情報も、同様にわからないまま放置すると残された人にリスクをもたらします。

B…家族に伝えたい持ち物

家族写真など思い出を共有しているものは、持ち主の死後も家族が残したいと思うでしょう。データは「iCloudの写真フォルダー」のように保存場所をリストアップしておきましょう。家族に残したいメッセージやエンディングノートのデジタル版といった、家族に託したいものも同様に、保存場所をリストアップしておくことを勧めます。

ここまで整理できたら、AとBは紙にリスト化して、実印や預金通帳と一緒に保管しましょう。A4用紙1枚にまとめる程度が理想です。こうしておけば、いざというときに家族の目に触れられる可能性が高くなります。私のホームページ(外部サイト)ではサンプルシートを無料公開していますので、よろしかったら使ってみてください。

ただ、IDとパスワードを併記したメモを保管するのはセキュリティの問題があります。スマホのパスワードのように、書く以外に保管方法のないものは、紙の表裏に修正テープを走らせて、スクラッチカードのようにマスキングすることをお勧めしています。日常生活を送っていて、盗み見られたとしても痕跡が残るため、すぐに対処できます。

デジタル遺品メモシート

C…隠したい持ち物

放置されても大きなリスクはなく、持ち主も隠しておきたいと思う、趣味性の高いコレクションや写真、あるいは家族を傷つけてしまう可能性のある持ち物は、隠したいものにリストアップしましょう。その際、家族がAやBの資産にたどり着く際の導線と重ならないように、別の場所に保存するよう整理し直すことがポイントです。

なお、へそくりがある場合、死後まで隠し通そうとするとトラブルの種になるので、Aに含めるようにしてください。「放置リスクが大きいものは“隠さない”」が鉄則です。

アンケートの質問にお答えします

今回、マンション・ラボで実施されたデジタル遺品に関するアンケート結果を拝見して、みなさまの関心の高さを実感しました。こうしてみると、本当にいろいろなところでデジタル遺品は正体不明なところがありますよね…。

より具体的な方法は、語り尽くせないところがありますので、アンケートの質問にお答えしつつ、気になる対応方法を共有します。少しでもお役に立てれば幸いです。

Q.ネット銀行等の口座の管理が自分以外には分からない点が不安です。

A.ネット銀行やオンライン証券も、従来からある銀行や証券会社と同じ法律で遺族対応してくれます。遺族が口座の存在に気づきさえすれば、あとは金融機関の窓口がナビゲートしてくれるので安心してください。金融庁に登録してある仮想通貨取引所も相談体制が整いつつあります。

Q.自動更新されるインターネット上の有料サービスを利用したまま、本人が亡くなった場合の対処方法を教えてください。

A.現状では引き落とし先口座の凍結により、支払いを止めるのが一般的です。ただ、死後の対応方法はサービスごとに異なり、場合によっては死後、解約まで数ヶ月分は利用継続となり、請求書が郵送で届く可能性もあります。契約しているサービスが明確な場合は、各運営会社へ個別に連絡するのが安全でしょう。

Q.デジタル遺産を閲覧する権利、削除する権利は誰にあるのでしょうか?

A.インターネットを経由して、故人の契約サービスの中身に触れるのは不正アクセス禁止法に抵触するおそれがあります。ただ、ダウンロード済みのメールを見たり、スマホやパソコンにログインしたりする行為は同法の対象外となります。なお、故人のスマホやパソコンは遺言書がなければ、一旦は法定相続人の共有財産となります。一人の判断で削除や廃棄するのは他の相続人の権利を侵害する可能性があります。

Q.家族が前触れなく、突然亡くなった場合の対応はどうしたらいいのでしょうか?

A.大変ですが、いちから情報収集するしかありません。スマホやパソコンの中身のほか、郵送物や契約書類、預金通帳やクレジットカードの履歴を調べるなどして実態を探ることになります。

Q.自分が亡くなった後ならば構わないのですが、現時点で家族に知らせたくない口座をどのように管理したらよいのでしょうか?

A.上記のようにデジタル資産メモを残しておき、いざというときに確認できるとよいですが、厳重にするなら銀行の貸金庫にその口座に関する情報を預けておくのもひとつの手だと思います。

さて、古田さんのお話、いかがだったでしょうか?デジタル遺品という概念や、整理のポイントが少し見えてきた気がしますね。古田さんがおっしゃるように、契約サービスの整理のためにも、一度デジタルアカウントやデータを書き出して、整理してみるものいいかもしれません。

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2020/01/21