マンションの部屋でWi-Fiを使っていて、時々「なんか遅いな〜」とか「寝室でだけつながりにくい!」とかいう、小さな不満はありませんか?
実はそのWi-Fi環境に関する不満、改善する方法があるみたいですよ。マンション・ラボ編集部が、ITの専門家に伺った電波&速度の改善策を実施してみました!
●部屋によってネットにつながりにくいのは、そもそも何が問題なの?
●計測するためのアプリの準備
●部屋の中のつながりにくいポイントを計測してみよう!
●改善策実験①「無線LANルータ1台+中継機」
●改善策実験②「無線LANルータ1台+無線LANルータ1台(ブリッジモードまたは、アクセスポイントモード)」
●2つの実験結果とメリット・デメリットを比較!
部屋によってネットにつながりにくいのは、そもそも何が問題なの?
そもそも、ちゃんとインターネット回線を引いて無線LANにしているのに、どうして部屋の中で「つながりにくい」「動画が途切れる」のでしょうか?

「そうだ、わかんないことは、専門家に聞いてみよう〜!」ということで、
ITの達人の栁澤さんに教えていただきました。
ちなみに栁澤さんは、以前IoT野菜作りでもお話を伺ったITの達人です!
→誰でも美味しい野菜ができる!マンションの一室で栽培される、IoT(Raspberry Pi)を使った野菜作りをレポート!
——部屋によってWi-Fiのつながりやすさが違うのは、なぜですか?
栁澤さん
ずばり、無線LANルータから室内を飛んでいるWi-Fi電波のレベル不足です。よく「スマホのアンテナが1本しかない!」と言いますが、アレと一緒です。
どうして室内のWi-Fi電波がレベル不足になるかというと、
①無線LANルータからの距離
②部屋の中の障害物
が関係しています。マンションの室内には、ボード壁(断熱材)、仕切り扉、家具といった障害物があって、Wi-Fi電波を遮ってしまいます。特にキッチンや浴室はそうですね。

宅内ハブと無線LANルータが玄関の収納スペースにある間取りの場合。Wi-Fiの電波は、アンテナを中心に全方向に広がります。ルータから一番遠いバルコニー側の部屋や、機器から近くてもキッチン・浴室はつながりにくくなります。
——キッチンや浴室は構造上どうにもならなさそうですが、無線LANルータを部屋の真ん中に移動すればいいのでは? もしくは無線LAN中継機を使うとかはどうですか?
柳澤さん
そうですね。一般的には中継機を使うことが多いようなので、実験してみたらどうですか?
でも、それでは根本的な解決にならないし、電波をリピートして電波が不安定で、通信の遅延が発生しインターネット速度もでません。
僕のオススメは、ブリッジモード(アクセスポイント)でもう1台新しい無線LANルータを接続して、無線LANルータ+アクセスポイント(無線LANルータ)の2台運用方法です。2つの改善方法を試して数値を計測して、効果をみて判断したらいいんじゃないでしょうか。
——2台無線LANルータ? ルーター同士が干渉しないんですか?
柳澤さん
最近の無線LANルータは自動で干渉を回避する仕様になっています。大元の無線LANルータを最新機種にして、古いルータをアクセスポイント(ブリッジモード)として利用します。ただ、設定が必要なので、割と上級者向けになるかもしれませんね。でも、これは改善率が高いのでオススメです。
ということで、部屋でWi-Fiがつながりにくい原因がわかったので、2つの解決方法を実際に試してみることにしました! まとめると以下です。
①無線LANルータ機器からの距離が遠くてレベル不足
②障害物(ボード壁(断熱材)、仕切り扉、家具)がWi-Fi電波を遮ってレベル不足
※間取りによってはその両方もある
↓
無線LANルータ1台+中継機
②無線LANルータ1台+無線LANルータ1台(ブリッジモード)
計測するためのアプリの準備

ノートPCとスマホの計測アプリで、各部屋のWi-Fi電波の強度と通信速度を計測します。
柳澤さん
まずどの部屋がつながりにくいのか、各部屋でWi-Fi電波の強度と通信速度を実際に計測してみましょう。計測にはPCのソフトやスマホのアプリを用います。計測数値は変わりやすいので、2〜3回同じ条件で測定するといいですね。やり方を教えるから自分で計測しましょう♪
——自分で計測!?(ガーン!) わかりました…。
Wi-Fi電波の強度と通信速度を計測するために、栁澤さんオススメの以下のアプリを活用することにしました。実施条件として、各部屋のドアはすべて閉めている状態で計測してみます。
→Windows用 (外部リンク)
→Android用(外部リンク)
部屋の中のつながりにくいポイントを計測してみよう!

この間取りの①〜⑦のポイントで、Wi-Fi電波の強度(2.4GHz帯/5GHz帯)および通信速度を、PCとスマホで各3回計測しました。
この部屋での体感としては、宅内ハブ&無線LANルータを設置している玄関から一番遠い「⑦リビング・ダイニング」と「⑥和室」がつながりにくい状態です。
実際に計測しても、無線LANルータから一番遠い「⑥和室」は、Wi-Fi電波が時々途切れる状態で、通信速度も低い数値であることがわかりました。
Wi-Fi電波の強度(dBm)※上から強度が強い順番 | ||||
---|---|---|---|---|
4 | ![]() |
2〜-65(dBm) | 快適な状態 | ①廊下 ②洋室1 ③洋室2 |
3 | ![]() |
-66〜-75(dBm) | 普通の状態 | ④浴室 ⑤キッチン ⑦リビング・ダイニング |
2 | ![]() |
-76〜-80(dBm) | 時々途切れる | ⑥和室 |
通信速度(Mbps)※上から速度が速い順番 | ||
---|---|---|
速度の目安 | 用途 | |
100Mbps以上 | 高画質動画、オンラインゲーム、動画・写真・ソフトウェアのダウンロード(容量によってダウンロード時間は異なる) | —— |
20Mbps以上 | 動画、ゲーム、ネットショッピングなど | ①廊下 ②洋室1 ③洋室2 ⑦リビング・ダイニング ⑤キッチン ④浴室 |
10Mbps以上 | ネットサーフィン、メールなど | ⑥和室 |
改善策実験①「無線LANルータ1台+中継機」

①「無線LANルータ1台+中継機」
無線LANルータとつながりにくい部屋の間に、無線LAN中継機を入れて電波を中継する。
では、改善策実験その①として、同じ部屋の中央に中継機を設置してみます。

無線LAN中継機は、無線LANルータと電波の届きにくい場所との間に設置することで、Wi-Fiがつながりにくかった部屋へも、中継機を介して電波の届く範囲を拡げることができます。

中継機を部屋の中央、廊下のコンセントに差し込みました。
さて、中継機設置後に計測してみると、
・「⑥和室」の電波の強度と速度が改善!
・全体的に通信速度が改善!
と、目に見える効果が確認できました。
但し、通信速度は、3回の計測で改善したりしなかったりとちょっと不安定な感じ。
通信速度に関しては、「④浴室」は5GHz帯の方が速く、「⑤キッチン」では2.4GHz帯の方が速くなるという変化も。
「電波が強ければつながりやすい!」と思い込んでいたけど、そうではなくって、「通信速度やGHz帯(使用電波)も重要なんだ」と感じました。
Wi-Fi電波の強度(dBm)※上から強度が強い順番 | ||||
---|---|---|---|---|
4 | ![]() |
2〜-65(dBm) | 快適な状態 | ①廊下 ③洋室2 ②洋室1 ⑦リビング・ダイニング |
3 | ![]() |
-66〜-75(dBm) | 普通の状態 | ⑥和室 ④浴室 ⑤キッチン |
2 | ![]() |
-76〜-80(dBm) | 時々途切れる | —— |
通信速度(Mbps)※上から速度が速い順番 | |
---|---|
速度の目安 | 計測値 ※上から速度が速い順番 |
100Mbps以上 | ③洋室2(5GHz帯スマホ最高値:226.00Mbps) ①廊下(5GHz帯スマホ最高値:183.00Mbps) ②洋室1(2.4GHz帯スマホ最高値:185.00Mbps) ⑤キッチン(2.4GHz帯スマホ最高値:122.00Mbps)※1 |
20Mbps以上 | ⑥和室(5GHz帯スマホ最高値:84.40Mbps)※1 ⑦リビング・ダイニング(5GHz帯スマホ最高値:34.20Mbps)※1 ④浴室(5GHz帯スマホ最高値:104.00Mbps)※1 |
10Mbps以上 | —— |
※1 計測3回毎に数値変化が激しい
改善策実験②「無線LANルータ1台+無線LANルータ1台(ブリッジモードまたは、アクセスポイントモード)」

②「無線LANルータ1台+無線LANルータ1台(ブリッジモード)」
従来のルータの他に、もう1台ルータをブリッジモード(アクセスポイントとして使うモード)でつなげる。
さて次に同じ部屋で、今度は2台目のルータを宅内ハブと同じ場所に設置してみます。たとえば大元の無線LANルータには最新の機種を使って、古くなっていらなくなった無線LANルータを2台目のアクセスポイント用に使うというのもアリです。

2台目の無線LANルータをリビング・ダイニングに設置しました。今回の設置で、強度・速度共に、無線LANルータが2.4GHz帯/5GHz帯から最適な周波数帯を自動的に選ぶようになりました。
Wi-Fi電波の強度が全体的に向上して、すべての部屋でレベル4の強度を達成しました。
通信速度に関しては、200Mbps以上出る部屋も多くなり、平均してどの部屋でも安定してつながっている体感でした。
Wi-Fi電波の強度(dBm)※上から強度が強い順番 ※最適な帯域を自動的に選択 | ||||
---|---|---|---|---|
4 | ![]() |
2〜-65(dBm) | 快適な状態 | ①廊下 ②洋室1 ③洋室2 ⑦リビング・ダイニング ⑥和室 ⑤キッチン ④浴室 |
3 | ![]() |
-66〜-75(dBm) | 普通の状態 | —— |
2 | ![]() |
-76〜-80(dBm) | 時々途切れる | —— |
通信速度(Mbps) | |
---|---|
速度の目安 | 計測値 ※上から速度が速い順番 ※最適な帯域を自動的に選択 |
100Mbps以上 | ③洋室2(スマホ最高値:236.00Mbps) ②洋室1(スマホ最高値:224.00Mbps) ①廊下(スマホ最高値:219.00Mbps) |
20Mbps以上 | ⑥和室(スマホ最高値:57.20Mbps) ⑦リビング・ダイニング(スマホ最高値:55.90Mbps) ⑤キッチン(スマホ最高値:47.50Mbps) ④浴室(スマホ最高値:42.80Mbps) |
10Mbps以上 | —— |
2つの実験結果とメリット・デメリットを比較!
実験結果から、2つのメリット・デメリットを表にまとめてみました。
改善策実験①「無線LANルータ1台+中継機」 | |
---|---|
メリット | デメリット |
・設定が簡単 ・2.4Ghz/5Ghz両方を使って効率よく電波を飛ばせる ・安価でコンパクト |
・電波状況は改善されるが、通信速度にはムラがある ・同じWi-Fiを中継するだけなので、通信速度が半分になる |
①は速度にムラがあるが気になるけれど、全体的には設定も簡単で初心者向けという印象でした。
改善策実験②「無線LANルータ1台+無線LANルータ1台(ブリッジモードまたは、アクセスポイントモード)」 | |
---|---|
メリット | デメリット |
・電波と通信速度の改善率が高い ・どの部屋でも安定してつながる |
・PCを使って設定する必要があるので知識が必要 ・新たな無線LANルータを購入する場合にはコストがかかる。 |
②は、電波も通信速度もかなり改善されるし、どの部屋でも安定してつながりますが、設定がちょっと大変そう。設定ができる上級者向けの改善策と感じました。
計測を終えて、部屋によってつながりにくかった状況が、こうやって改善される方法があるということがわかったのは、非常にいい体験でした。きちんと計測するって大事です!
ただ、2つの改善策には、どちらも長所・短所がありますので、自分で最適な方法を考えたいですね。また、お使いのPCやスマホの機種の性能によっても通信速度は異なってきますので、端末自体の性能もチェックした方がよさそうです。
2019/12/26