専門家に聞いてみた!大規模修繕工事やマンション防災に果たしてドローンは使えるの?

ドローンが、マンションの大規模修繕工事の調査や防災に活用できるのではないか?という話をよく耳にします。はたして本当にそうなのか? すでに現場で活用されている事例はあるのか? 専門家集団である一般社団法人日本建築ドローン協会で伺ってまいりました!

建築分野や災害分野でのドローン活用って、どこまでできてるの?

以前マンション・ラボの「災害時のドローン活用の可能性を探る!」記事で検証したドローン活用。

これまでにマンション・ラボ編集部は、マンションでドローンを活用できないかと、実際にドローンを飛ばして検証したり、マッピングとドローンを防災活動に役立てる古橋さんほか防災の達人と「妄想マンション」を考えたりしてきました。

しかし、実際の建築現場でドローンが使われているのかについてはよくわかりません。テレビでは台風などの被害調査のためにドローンを活用している映像を見ますが、マンション防災に役立った!という体験談は見かけません。
ドローンって、本当にマンション修繕や防災に使えるツールなの? 使えないの? という疑問を、一般社団法人日本建築ドローン協会さんにぶつけてみました!

一般社団法人日本建築ドローン協会 副会長・博士(工学)の宮内博之さん(写真向かって左)と、事務局長の石田晃啓さん。

——まず一般社団法人日本建築ドローン協会(以下JADA)は、どのような団体なのでしょうか?

石田さん
JADAは、建築分野とドローン分野の技術の融合と開発を促進するコンソーシアム的な機能を持っています。建築分野だけでもドローン分野だけでもダメで、その両方の知識を持つ専門家がこれからは必要となります。特に市街地でのドローン活用ではまず「安全」を第一に考える必要があるため、建築現場特有の安全知識を学んでいただく「建築ドローン安全教育講習会」を定期的に開催しています。そのほか、「建築ドローン飛行管理責任者」の研修、建築ドローン標準業務仕様書の制定、ドローンのプライバシーや騒音に関する対応に関する報告書の作成、さらに産官学で建築とドローンの技術交流や研究会やセミナーを実施するなど、建築分野でのドローン技術の普及を行っています。

——建築分野では、ドローンはどのように活用されている状況でしょうか?

宮内さん
建築物における点検調査に関するドローン活用の用途は大きく2つあります。
①ビルやマンションの外壁点検
②戸建て住宅の勾配屋根などの点検
現在は、①の潜在ニーズが高いようですが、まだ実例は少ないのが現状です。建築分野でのドローン活用は、話題性が先走っていて、販促ツール的な使い方が多いのではないでしょうか?

確かにそうかもしれません!
タワーマンションの大規模修繕工事のコンサルティング会社の競合プレゼンテーションで、「ドローンによる調査も可能」という会社さんを見かけました。他社との差別化や話題性提供という意味で、ドローンを活用した提案だと目立った効果を得られそうです。

宮内さん
ドローンへの関心が高い一方で、ドローンの飛行は航空法の対象となることが多く、小型無人機等飛行禁止法などの規制も厳しくなり、またプライバシーといった問題がクリアできず、実際にはドローンを活用できないケースが多いのではないでしょうか。

<参考>
警察庁 小型無人機等飛行禁止法関係 ※外部サイト
国土交通省 小型無人機等の飛行禁止区域について ※外部サイト

ふむふむ。実は、マンション・ラボ編集部スタッフのタワーマンションで、競合プレゼンテーションの結果、ドローン活用も視野に入れたコンサルティング会社に決定したのですが、実際の調査ではドローンを飛ばすことはありませんでした。これはやはり、航空法の問題などがあったのかもしれません。では、建築分野でのドローン活用って、客寄せパンダ的な位置付けなのでしょうか?

疑問1:大規模修繕工事でドローンは活用できるの?メリットとデメリット

マンションの大規模修繕工事の現場や調査で、はたしてドローンは活用されているのでしょうか?

——実際、高層マンションの大規模修繕工事の調査でドローンは活用できないのでしょうか? また可能な場合、ドローン活用のメリットとデメリットを教えてください。

宮内さん
一戸建ての勾配屋根の調査などでドローンを活用している事例はあります。これは、短時間に簡単に勾配屋根部分の調査ができるからです。
高層マンションの場合には、外壁点検時に足場を必要とせずに調査ができますのでコストメリットが大きいです。しかし、高層マンションは、一般的に人口集中地区に立地していることや、壁面に対する近接撮影のための高い操縦技術や飛行技術が要求されます。さらに建物周りの飛行空域では、GPSによる自己位置推定精度が低下することにより安定した飛行ができなかったり、電波障害なども発生したりするため、ドローンを飛行させるには難易度が非常に高いです。このため、実際のところ、ドローンを一般的な業務として活用するまでに至っていないのが現状です。

「国土交通省からのお知らせ 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールについて」より。ドローン購入は簡単だからといって、誰でも自由に飛ばせる訳ではありません。

石田さん
マンション壁面を撮影する際に、隣接する第三者の所有地上空付近を飛行させなければならない場合、一般的にドローンを飛ばす上での事前交渉や承諾が必要となります。また、ドローンのカメラに映り込む可能性のあるマンション居住者と周辺住民にも、ドローンを飛ばすことを説明して了承を得る必要があり、時間がかかるのも問題でしょうね。

宮内さん
ドローンは、一般的に飛行に影響を及ぼす障害物がなく、GPS衛星からの電波を精度よく捕捉できる空域で活用することが望ましいです。しかし、建物の調査ではその理想的な環境とは真逆な状況で使用しなければならず、さらに建物の周りには居住者や通行人もいるので安全第一で細心の注意を払ってドローンを飛行させる必要があります。

国土交通省からのお知らせ 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルールについて ※外部サイト

マンションの大規模修繕工事でドローンを活用する場合、外壁などのプレ調査で足場を組む必要もなく短時間・低コストという一方で、周辺への周知や配慮の問題・航空法の制限などによって、現状ではドローン活用は難しいようです。

【マンション大規模修繕工事でのドローン活用の可能性】

・メリット :短時間、低コスト
・デメリット:周辺の安全性の問題、居住者・近隣への周知と確認に時間がかかる、航空法の制限がある、建物の周りでは電波やGPSが届きにくい

疑問2:高層マンションの防災活動にドローンは活用できるの?

ダンボール箱を輸送するドローン。災害時に、マンション上層階の住戸へ救援物資を送ることはできないのでしょうか?

——地震などの災害時にはどうでしょうか? 特に超高層マンションで大地震が起こるとエレベーターが動かず、上層階が孤立します。上層階の人の安否確認や救援物資の運搬に、ドローンは活用できないでしょうか?

宮内さん
災害時にはドローンにより発災後短時間での人の安否確認や避難経路の把握や、その後の救援物資の運搬に活用できると考えています。ただし、災害時に関係者と確認をせずにドローンを飛ばしてしまうと、他のドローンやヘリコプターと衝突するなど、二次被害を引き起こす可能性が高くなります。このため、平常時から自治体および関係者と情報共有をして、災害時には連携して直ちにドローンを活用できる環境づくりが必要となります。なお、災害時には電気や電波が消失していて、ドローンを飛ばせない可能性もありますので、今後のドローンの技術開発だけでなく、インフラ整備が重要になると考えています。

——そうなんですね…。いろいろと制約や課題があるということがよくわかりました。

ドローン利活用は2022年以降に本格化!?

ドローンが飛び交う便利な未来は、いつやってくるのでしょうか?

——現状、マンションでドローンを活用するのは難しいとわかりました。しかし将来的にはどうでしょう?
近未来のドローンの使われ方について教えていただけますか?

宮内さん
現時点では、建築分野が一番ドローン活用が遅れているといえるでしょう。しかし将来的には、新築建物の施工管理、建築物の維持・保全、マイクロドローンによる天井裏の設備点検などの面でのドローン活用が考えられます。法律が整備され、人々にドローンが安全で便利な一般的なツールであることを受け入れられれば、ドローンはもっと建築分野で積極的に使われていくはずです。国土交通省では、その先駆けとして「建築基準法整備促進事業T3」という事業で、建築物の外壁調査におけるドローンの活用が検討されました。

国土交通省「T3:非接触方式による外壁調査の診断手法及び調査基準に関する検討」 ※外部サイト

  
——マイクロドローンによる内部の点検などは、確かに便利そうです! ドローンが建築分野に活用されていくと、建築時や修繕時のコストダウンにもつながりそうですね。

宮内さん
現在、経済産業省による「空の産業革命に向けたロードマップ2019」で、物流・災害対応・農林水産業・インフラ維持管理・測量・警備業の分野で、ドローンの利活用の検討が進んでいます。ロードマップによると、2022年度以降に、ドローンの利活用のレベル4「有人地帯での目視外飛行(第三者上空)」が可能となる予定なので、都市の物流や警備などの分野で本格的にドローンの利活用が行われていくはずです。課題は、レベル4を実現する環境整備や技術の確立、安全性、そしてドローンを使用する側の責任の所在の明確化ですね。安全性を高めるには、ヒューマンエラーを防止できる自動飛行技術が最適です。安全な自動飛行技術の確立とそれを適正に運用できる技術者が育てば、さまざまな分野で利活用できるはずです。

経済産業省「空の産業革命に向けたロードマップ2019」 ※外部サイト

——2022年以降、本格的なドローン時代になるのかもしれませんね! そこからマンションでのドローンの利活用も始まるのかもしれないという期待が持てました。本日はありがとうございました!


建築分野やマンションでのドローン活用は、これから先の話であることがわかりました。まさにいまは過渡期ですが、大いに期待できそうです。これからのドローン活用の動向を見守りたいと思います。

一般社団法人日本建築ドローン教会(JADA)


2017年に設立。建築分野の各種業務においてドローン技術を活用できる人材の育成、及び技術支援、標準化等の事業を行う。建築分野でドローンを活用可能な技術者の育成を目的とした「建築物へのドローン活用のための安全マニュアル」を活用した、「建築ドローン安全教育講習会」を定期的に開催。
また、JADAでは建築物の点検・調査等においてドローンの調査管理と飛行管理の両方を行う「建築ドローン飛行管理責任者」を定義し、その実務を学ぶ「建築ドローン安全教育講習レベルアップ研修会(建物調査編)」を実施。さらに、建築物に関わるドローンを利用した点検・調査業務において標準となる業務仕様を提示した「建築ドローン標準業務仕様書(案)【点検・調査編】」を制定。そのほか、ドローンのプライバシーや騒音に関する対応に関する報告書「居住者から見た建築物調査時等のドローンの評価手法研究会報告書」を作成。そのほか、産官学で建築とドローンの技術交流や研究会やセミナーを実施し、ドローン技術の普及を行う。

日本建築ドローン協会「建築ドローン安全教育講習会」 ※外部サイト
日本建築ドローン協会「建築ドローン安全教育講習レベルアップ研修会【建物調査編】」 ※外部サイト
日本建築ドローン協会「建築ドローン標準業務仕様書(案)【点検・調査編】の制定」 ※外部サイト
日本建築ドローン協会「居住者から見た建築物調査時等のドローンの評価手法研究会報告書」 ※外部サイト

一般社団法人日本建築ドローン協会 ※外部サイト

2019/12/20