AIでマンション管理はどう変わる!?人気のマンション管理士に聞いてみた!

最近何かと話題のAIは、今後のマンションでの暮らしにどのような変化をもたらすのでしょうか。今回は、さまざまな事例に詳しい深山州さん(マンション管理士・メルすみごこち研究所)にお話を伺いました。

【今回お話をうかがった方】

深山 州さん
マンション管理士。株式会社メルすみごこち事務所(外部リンク)/株式会社クローバーコミュニティ(外部リンク)・代表。日常の管理組合運営に関する助言や修繕工事のコンサルティングなど、首都圏・近畿圏で常時約50の管理組合と長期コンサルティング契約を行っている。

AIがもたらすのは管理費のコストダウンと理事会運営の負担軽減!?

【参考:AIとは】
AI(articicial intelligence、人工知能)というのは、学習・推論・判断など、人間の脳を人工的に再現するコンピューター・システムのこと。情報を集めたり、命令を実行したりするその他の技術や設備と連携することで、初めてAIの恩恵を享受できます。下の図のように、生活にまつわるあらゆるものがインターネットに接続され、相互に情報をやり取りするIoT(Internet of Things、モノのインターネット)と、AIの指示を受け取って実際の行動をするロボットなどとの連携によって、私たちの生活に役立つシステムとなり得るのです。
──まず、マンションの管理がAI化されると、どのようなメリットが考えられますか?

そうですね、「人間同士のコミュニケーションや合意形成が必要」なこと以外は、AIによるメリットをかなり得られるでしょう。特に、
・日常の管理業務をAIに置き換えることで管理費をコストダウン
・理事会運営の負担を軽減
することが可能だと思います。
労働人口の減少や退職年齢の延長といった社会的動向は、マンション管理業界にも「管理員や清掃員不足」という大きな影響を及ぼしています。外国人を採用することで人手不足を補う業界もありますが、生活に直接影響するマンション管理業務には、言葉や文化の異なる外国人の採用は、管理会社も慎重にならざるを得ません。AIを導入することで、日常の清掃や機器の定期点検などさまざまな業務を合理化することができれば、遠くない未来、人手不足解消にもつながるでしょう。
また、駐輪場や駐車場の部外者による不正利用、共有スペースへの不審者の立ち入りといったセキュリティの面でも、AIの活用でより安心安全な環境づくりができそうです。

――なるほど。人の代わりにAIとなることで、管理体制も一律化できそうですね。

例えば、分譲マンションで問題になりがちな「民泊」トラブル。現状では、不特定多数の人間が出入りすることに不安を感じたり、実際に騒音などの被害に遭った住民もいるでしょう。AIによって、人の出入りや共有部での行動(騒音や出入りの時間)を記録させ、一定の基準を超えた利用者に対しては自動で警告する、ということも可能になるでしょうから、プライバシーとの兼ね合いに配慮をしつつ、活用次第で不安の解消につながるのではないでしょうか。

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高度な情報分析が進むと、管理組合運営はよりコミュニケーション重視になる!

──「管理組合運営」については、AIを導入することでどのようなメリットが考えられますか?

いま、大手マンション管理会社などが、管理組合や住民限定のホームページを提供しはじめています。そこにAIが導入できれば、データで保管した理事会の活動記録や図面・工事見積資料、住民名簿やアンケート結果といったあらゆる資料・記録を瞬時に取り出し、分析する、ということも可能になるでしょう。理事会や総会での合意形成に必要な事前準備の負担やミスがなくなることは、管理組合を運営するにあたっては、とても大きなメリットだと思いますね。

さらに、資料を多言語化して外国人の住民に共有したり、総会や理事会で配布される資料がAIによって自動的にデータ化され、スマホで閲覧や決議ができるようになると思います。
また、過去の理事会が積み上げてきた経緯なども、AIを活用して分析できれば、未来に向けたマンションのあり方を検討できる材料として活用することもできますね。
煩雑な事務や運営の負担を大きく軽減するだけでなく、より精度の高い検討が素早くできるようになることも、大きなメリットだといえるでしょう。
AIの導入によって、理事の業務は軽減されるでしょう。その分、もっとも注力すべき「合意形成」や「住民間のコミュニティ醸成」に集中できるようになるので、より暮らしやすく、魅力的なマンション形成ができるようになると思います。

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──日々の管理業務やフロント業務は、どのように変化していきそうでしょうか?

そうですね、たとえば管理員さんによる窓口業務は、タッチパネルやbot(人間に代わって作業を自動化するプログラム)が対応するようになるでしょう。
住民から寄せられた相談は、データベースに蓄積・解析されていきます。AIは学習しますから、日ごとに対応がスムーズになっていくでしょうね。すでに実験をはじめているマンションデベロッパーもあるようですから、数年後には運用がはじまっているかもしれません。

また、管理会社のフロント業務も、将来的には劇的に変わっていくでしょう。
フロント業務の大半を占める「資料の作成/整理・保管」「月次報告や参考資料の提供」「社内業務」といったルーティン作業が、AIによって速く・正確に実行されます。そのため、フロント業務はAIの行った作業をもとに、マンションをより良くするための具体的な提案や、理事や住民の合意形成支援、コミュニティづくりの支援といった、コンサルタントやファシリテーター的な要素が求められていくかもしれません。

人の手によって行われていたことをAIが代替することで、住民にとっての利便性向上、サービスの品質向上、理事による管理組合運営の負担軽減につながると思います。

「AIによってあらゆるデータが集約されれば、スマホ一つで住民同士がマンション管理の情報を共有することも可能になる」と語る深山さん。

AI導入の課題と、始まりつつあるマンション管理のAI化

──メリットの大きいAI化ですが、課題もあると思います。どのようなことが考えられますか?

AIを上手に活用するためには、まずはマンションのさまざまな情報をインプットし、常にアップデートする必要があるでしょう。AIの導入期には、理解や認知が進まず、一部の住民から情報提供に反対する意見も出てくるでしょう。また、AIの導入に多額の費用がかかる場合は、コスト以上のメリットが明確でなければ住民の理解を得るのは難しいでしょう。
ただ、AI時代に対応した法整備と認知度の向上、メーカーやサービス提供側の試験導入などにより、そういった抵抗感もいずれは解消されるのではないでしょうか。

──マンションにAIが普及するまでには、どれくらい時間がかかるでしょう?

おそらく、管理会社としてはリスクを犯してまで他社に先駆けて先進的な取り組みをするよりも、現在行っている管理業務を着実に行うことを優先するでしょうし、AI化によってマンション住民への影響も考えられます。また、新たなIoT機器の導入やシステムの構築、ロボットの導入などを考えると、莫大なコストがかかりますから、すぐに、というわけにはいかないと思います。AIの導入と運用のコストが、現状の管理コストを下回るようになったとき、資金力があり、スケールメリットを享受できる大手管理会社、または新しい技術に敏感で、合理化を目指すベンチャー気質の管理会社があれば、徐々にマンション管理分野へのAI導入も進んでいくのではないでしょうか。
個人的には、この先5年くらいかけて大きく状況が変化していくのではないか、と見ています。

――今後、徐々にマンションへのAI導入は広がっていきそうですね。

マンションのAI化というと、「突然何か生活が変わるようなイメージ」を持たれるかもしれませんが、実はその変化はすでに始まっているんです。例えば、最近のマンションによく導入されている遠隔操作ができる宅配ロッカーのシステム。宅配の受け取り以外にも、クリーニングの受け渡し、シェアサイクルの貸し出し管理などを、インターネットで24時間予約・キャンセルが可能です。今後、運営会社が住民の利用データを蓄積・分析し、新たなサービスへの展開を考えても不思議ではありませんよね。

私たちが手にするスマホやタブレットなども、受け入れられるまでに多少時間はかかりましたが、それでも10年足らずで生活に浸透していますよね。マンションのAI化もそれと同じで、気づいたらみんなが利用していた、当たり前になっていた、という状況になると思いますよ。

――深山さん、ありがとうございました。

深山さんのお話で、AI化がマンション管理にもたらすものが見えてきました。マンションへの具体的な導入はまだ先になりそうですが、マンション管理の効率化や人材不足への対応など、大きなメリットをもたらしてくれそうです。AIの導入によって、より豊かで快適なマンションライフになるよう、期待したいですね。

(取材・文:Loco共感編集部 トミザワ ヒナ)

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2018/11/02