災害時、君は上りきることができるか?~10リットルの水を20階まで運んでみた~(動画)

今回のラボ編集部の何でもやってみ隊!は、某タワーマンションにご協力をいただいて約10リットルの水を非常階段で20階まで運び、水を運びやすい容器や疲労度、所要時間についてレポートすることにしました!

・・・これだけ聞くといったい何のことやらサッパリ、と思う方も多いでしょう。詳細にお伝えしますと、地震等の災害で被災し水の配給がマンションの1階で行われた場合、タワーマンションの高層階の住民は果たして水を運ぶことができるのか実際に試そう、というものです。想像するだけでもしんどそうな予感がしますね・・・!水を運んでいる様子は記事の後半部分に動画で掲載しています。果たして編集部は水を無事に運ぶことができたのでしょうか!?

では、まずは具体的に被災の様子を想像いただくために、以下のコラムをご覧ください。


みなさん、ちょっと想像してみてください。

あなたは今、マンションの20階に奥さん(もしくはご主人)と小さなお子さんの三人で住んでいます。

とある日の午後、突然大きな地震がマンションを襲いました。かなりの激しい揺れが十数秒ほど続き、家族はそれぞれ安全な空間に避難して、なんとか無事に難を逃れました。室内も大型家具の固定をしていたのが幸いして、なんとか大きな被害は避けられました。

ホッとしたあなたは、まずは落ち着こうと水を飲みにキッチンに向かいました。そしておもむろに蛇口をひねってみたのですが・・・・いつもは勢いよく出るはずの水が、まったく出てきません。

「まさか。。。」

焦って電気やガスもチェックしてみたものの、いずれも反応はありません。どうやらライフラインはすべて停まってしまったようです。かなりの大きな地震だったため、ひょっとしたら復旧にはまだまだ時間がかるかもしれません。そのあいだ、なんとか家族みんなで暮らしていかなければならない。そう思ったあなたは、まず「水」のことを考えます。

「そうだ。とりあえず水をなんとかしなきゃ。子供のミルクもつくらなきゃならないし。脱水症状も防せがなければ。もしかしたら、下に降りれば水を配っているかもしれない。」

あなたは家を飛び出し、エレベータへと向かいます。しかし・・・頼みのエレベーターが、停まっていました。これではもし下で水を確保できたとしても、非常階段を使って家族が必要とする水の量を20階まで運ばねばなりません。

「いったい何リットル、何往復すればいいのだろう・・・」

冷たくなったエレベーターを前に、あなたは途方に暮れるのでした・・・。


被災状況はイメージできましたでしょうか?では、ここからは実験内容に移ります!

非常階段を懸命に上るラボ編集部!

実践した内容は以下のとおりです。

●タワーマンションの非常階段を使い20階まで約10リットルの水のタンクを持って上ってみる。
●所要時間、疲労度、持ち運びのしやすさ、運ぶ際の注意点を調査する。
●持ち運ぶタンクの種類や方法は以下のとおり。
①5リットルポリタンク×2
②10リットルポリタンク×1(両手持ち)
③6リットル給水ポリタンク(背負い式)×2
④10リットルの水を二人で運ぶ(キャリーフ※を使用)※携帯型の不織布担架です。

今回つかった道具類。ちなみにキャリーフは通常は担架として使用するものです。

いったいどれくらい大変だったのかを、編集部員の運ぶ動画や感想をまとめてみました。ぜひご覧ください。

※今回非常階段を上った編集部員は、頭部に装着したヘッドカメラを安定させるため、ニット帽子を被って実験に参加しています。見苦しくて申し訳ありませんが、ご理解をお願いいたします。

①1回目:5リットルポリタンク×2

まずは初めに5リットルのポリタンク×2を持って階段を上ってみます。

<動画>

・所用時間:10分35秒(18階到達時)
・運びやすさ:★★★
・疲れにくさ:★★★
(★の数は5段階評価です)

編集部員の感想

両手に持つので、フラつくことなくバランスよく運べました。10階あたりまではあまり「重たい」という感じもなく、スムーズに上っていけましたが、10階を過ぎると息が荒くなり、15階を過ぎたころには手足がだるくなって「キツイ」と感じるようになりました。(持ちやすく、疲れもそこまで感じなかったものの、日頃の運動不足がたたって18階で足がつり、リタイヤしてしまいました。。)

持ち手部分はさほど痛みは感じかったですが、気になる人はタオルなどを巻いて運ぶと持ちやすくて良いかもしれません。また、タンクによっては上る際に水が大きく揺れて蓋の部分から微妙に漏れてしまう可能性があります。今回も床にこぼれてしまい、もし後ろから上る人がいたりすると滑って危ないな、と感じました。両手がふさがっている状態なので、余計に危険を感じます。

②2回目:10リットルポリタンク×1(両手持ち)

続いては、10リットルのタンクを一つ持ち運んでみました。

<動画>

・所用時間:13分53秒(20階到達時)
・運びやすさ:★★
・疲れにくさ:★★

編集部員の感想

「同じ10リットルでもここまで違うのか」というくらい、ズッシリとした重みを感じました。両手で持って階段を上ると、前方に重みが偏るため、バランスが崩れて運びにくい印象を受けました。かといって両手で抱えるようにして運ぶのも、両手が完全にふさがってしまうので転んだりするととても危険だな、とも思います。

もちろん片手に10リットルずつでバランスを取る方法もありますが、片手で10リットル(計20リットル)を運ぶのは至難の業だと思うので、よほど腕力や体力に自信のある方を除いてはやめたほうがいいでしょう。

持ち手部分は片手でも両手でも重みがどっしり加わるので、上るにつれて痛みを感じます。タオルなどで持ちやすくするといった工夫が必要ですね。休憩しながら運んで行くしかないように思います。

③3回目:6リットル給水ポリタンク(背負い式)×2

今度は手持ちではなく、リュックタイプのポリタンクで運んでみることにしました。

<動画>


・所用時間:12分11秒(20階到達時)
・運びやすさ:★★★★
・疲れにくさ:★★★☆(3.5)

編集部員の感想

今回は、2個のリュックを前面・背面それぞれに背負って階段を上ってみました。やはり両手が空くのはいいですね!腕や手の負担がなく、バランスもとれて安定して上っていけます。ただ、途中でポリタンクの紐が取れかかってしまいました。しっかり結んでおかないと落ちてしまう可能性がありますね。そのため、一般的なリュックサックにこの背負い式ポリタンクを入れて運ぶのが安全性・安定性から言ってベストという印象を受けました。

あとは、10階を過ぎるとやはり12リットルの重みがズッシリと体に加わってきて、かなりしんどくなってきます。20階に到着するころには、3回目ということもありかなり息も上がってしまいました。何度か往復する場合には、十分休憩を取りながら運ぶといいと思いました。

④4本目:二人で運ぶ(キャリーフ)

最後は、携帯型の不織布担架「キャリーフ」を使って、10リットルの水を二人で運んでみました。(運びにくく途中で終了したため、動画は撮影しませんでした。)

・所用時間:途中で終了
・運びやすさ:
・疲れにくさ:★★

編集部員の感想

二人で運ぶので一人よりも負担が小さく楽だと考えていましたが、甘かったですね。まず階段が狭いので、非常に運びづらいです。横並びでは難しいので縦に並んで運んでみたものの、上の人は後ろ向きで運ぶため転倒する危険があるほか、相手と呼吸を合わせて運ぶ必要もあるため、狭い階段という場所を考えると、一人で運ぶ方が良いと感じました。

ただ、平地で女性や高齢の方が数名で協力して物を運ぶ場合は、活用の幅があるようにも思います。(キャリーフはあくまで人を運ぶためのものです。今回の評価はあくまで非常階段でポリタンクの水を運ぶという特殊な環境においての感想で、製品自体の優れた性能や評価を損なう意見や見解ではありません)

みなさん、いかがでしたでしょうか。

何度も往復したため、最後の方はかなりバテてしまいました。複数回往復すると、息も上がって足もガクガクしますし、指や腕への負担もかなり出てきます。一人で何度も往復するのは本当にしんどいので、まずはできるだけ水の備蓄をし、運ぶ際にはできるなら家族で分担したり、ご近所の方と助け合ったりすることで負担を軽減するのが賢明だと思いました。

特に一人暮らしの女性や高齢の方の世帯などは、階段の上り下りだけでも相当な負担になると思いますから、助け合える関係づくりなどを意識しておくことも大切ですね。

水の備蓄量については以下の記事をご覧ください。
[地震対策・水の備え]マンションで1家族に必要な飲料水の備蓄量は?

防災訓練などで非常階段の上り下りを体験してみたり、個人でできる水の備蓄のほか、各フロアもしくは5階くらいに一か所非常時でも水が補給できるような準備をしておくと、負担や混雑が避けられて良いのではないかと思いました。

いずれにしても、災害時の長期にわたるライフラインの停止を想定した様々な物資の補給を今のうちから検討し、準備しておいたほうが良いでしょう。この記事がみなさんの防災力の一助となれば幸いです。

取材協力:株式会社河本総合防災
https://www.k-ksb.co.jp/

2015/03/26