防災計画書や防災訓練…自主管理に優れたマンション「コープ南砂」の防災力がすごい!

コミュニティ活動の活発なコープ南砂の取り組みを紹介するシリーズ第三回目は、自主防災組織の防災委員会(別名:災害協力隊)をご紹介する。

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住民同士“お互いさま”で助け合う!人情マンション「コープ南砂」の江戸長屋的コミュニティ力

第二回はこちら
ごみの減量や構内緑化…自主活動に優れたマンション「コープ南砂」のコミュニティ力がすごい!

江東区のモデルにもなっている防災計画書

防災計画書。現在、津波や浸水被害を想定した防災計画を追加した改定版を検討中だという。

コープ南砂防災委員会は、1997年に管理組合と自治会の合同組織として設立された。地震や火災などの大災害が発生した際、公的な支援が差し伸べられる前に、いかに居住者同士が助け合って自助できるかは、生死の分かれ目ともなる。東日本大震災発生以降、首都圏のマンションで自主防災への取り組みが活発になっているが、コープ南砂では、阪神・淡路大震災後しばらくして防災委員会を発足させて、独自のマニュアルづくりや防災設備、防災用品の拡充に取り組んできているという。

「我々のマンションが独自に作成した防災計画書は、江東区の防災課が提供する計画書のモデルにもなっています。マニュアルには、緊急避難・避難場所・防災関係機関の紹介、災害時の活動計画、平常時の防災対策などが網羅されており、見直しをしつつ改訂しています

昨年の3.11大震災の際にも、日頃の防災訓練通り、一時集合場所となっている敷地内公園への避難が迅速に行われた。しかし実際の災害を体験して、いくつかの課題も明らかになった。

「あの日は寒い中、敷地内の公園に100名近くが避難しました。ただ、建物内の安全が確認できるまでは、中に戻れなかったので、お年寄りにはその間の寒さがこたえたようでした。この反省をもとに、一時集合場所用に大型テントを購入。これで60〜80名の方々を収容できるようになりました。また、防寒用のブランケットも50枚ほど購入しました」」

日々の避難訓練の積み重ねがいざという時に生きる

コープ南砂では毎年9月に防災訓練を実施している。9月22日(土)に行われた2012年度防災訓練では、以下のような内容の訓練が実施された。訓練には防災組織のない隣のマンションの住民も毎年参加している。防災は「地域防災」が必要だ。防災訓練には122人が参加した。

2012年9月実施 防災訓練 テント仮設訓練・炊き出し訓練

・避難訓練(避難時には、玄関扉に「避難完了」ステッカーを貼り、居住者は階段を利用して、一時避難場所の敷地内公園に避難)

・テント・災害時用トイレ仮設訓練(防災委員会)

・防災訓練(居住者の初期消火訓練・地震体験訓練、放水訓練など)

・炊き出し訓練(公園に仮設した竃・釜でお米を炊き、おにぎりづくり)

各戸に配布されている「避難完了」シートはマグネット式。ふだんは玄関扉の裏側に貼り付けておき、いざという時にこのマグネットシートを玄関扉の表に貼り付けてから避難するようになっている。これで避難確認がぐんと効率的になる。

「防災訓練への参加率は高いです。皆さんの防災への関心の高さの現れですね。他にもAED・応急救護講習会を年に一度実施するなど江東区の防災課とも連絡しあって、さまざまな活動を行っています。敷地内には防災倉庫を設置して、防災用品や機材を備蓄していますが、食料や生活必需品の備蓄などに関しては消費期限の関係もあるので、各戸で行っていただくようにしています」

1階エレベータホールに設置されているAED。

避難テント・トイレ・避難口・避難通路 配置図。

防災委員会が提供するのは指揮系統、機材、災害時用トイレ、発電機、照明設備、給水ポンプといったマンションでの避難生活に必要な最低限の部分。防災倉庫にある簡易トイレは敷地内に2箇所設置、防災テントの設置場所なども避難マップに細かく規定されている。また、ポンプ室の受水槽から80トンを給水できる手動ポンプも備えている。

災害時に欠かせない情報は、避難者名簿と防災カルテ「要援護者名簿」だという。防災カルテ「要援護者名簿」は自主申告制で作成している。災害用名簿は、どこのマンションでも個人情報の問題で作成が難航している。しかしコープ南砂の場合には、管理組合や自治会、防災委員会、助け合いの会といった日頃のコミュニティ活動を通して、互いの信頼が出来上がっているせいか、住民からの協力もスムーズにいっているという。信頼関係の構築がいかに防災に大切かということの実証でもある。

日々の防災はイコール防犯にもつながる!

日頃の防災活動は、イコールマンションの防犯力にもつながっている。

「うちのマンションは、犯罪発生率ほとんどゼロなんですよ。構内駐車場の車上荒らし被害があったくらいで、その後、駐車場には防犯カメラを設置して防犯対策は怠っていません。うちのマンションは、オートロックではなく出入りはオープンです。しかし、建物の造りは開放廊下形で、住民同士の挨拶も頻繁で、あちこちで出会った人同士の会話もある。清掃や植栽に関わるボランティアの活動も多い。こうしてマンションの隅々にまで目を配っている様子がわかると、犯罪者のつけ込む隙がありません」

敷地内の緑豊かな緑地帯に隣接して、小さい子どもが遊ぶ敷地内の公園があり、どこかに住民の誰かの見守りがある。その点が子どもを安心して遊ばせることができるとお母さんたちからも好評だ。

一時避難場所の敷地内公園。幹線道路に面しており、まわりが開けていて、落下物の危険が少ない安全な場所だ。手作りのベンチ、足ツボウォークやスプリングバーなどの健康器具も設置されており、住民の憩いの場でもある。

「結局、防災活動も防犯活動もすべて、人と人とのつながりと信頼がベースにあるんですね。その信頼なしにはどんな活動も長続きしません。もちろん、皆が皆参加して、コミュニティ活動に協力しているという訳でなく、仕事に追われていて参加できない人、人との関わりを好まない人もいらっしゃいます。しかし、あくまでも自主的に集まって、責任を果たし、公正に配慮して活動していけば、いつかは理解につながるはずです。なんといっても皆知り合いで、笑顔で挨拶できるマンションは、自分が住んでいても気持ちいいでしょう?」と小林氏(防災委員会広報班長)が説明してくれた。

確かにそうだ。こんな人の心の息づくマンションなら住んでみたい、そう思わせる配慮がいたるところにあるのだ。マンションの資産価値は、コミュニティ力にもある。コープ南砂は、そう実感させるマンションだった。


住みよいマンションとは、建物や設備のハード部分だけでなく、人と人のつながりのソフトの部分までを含んでいる。そして、そのソフトの部分は、時間をかけてコミュニティがつくりあげていくものなのだということを実感する。あなたのマンションのコミュニティ力はどうだろう? コープ南砂の事例をきっかけに、ぜひお住まいのマンションのコミュニティ活動についても検討していただきたい。

コープ南砂

江東区にある165戸のマンション。1981年竣工。入居当初から30年以上に渡って、居住者の協力のもとで自主管理を貫いてきた。コープ南砂が行っているさまざまなコミュニティ活動への取り組みには、他のマンションや自治体からの見学・取材も多い。

2012/12/10