熊本・大分地震に学ぶ!その3応急危険度判定の誤解

pixta_22046020_S熊本・大分地震を教訓に、マンション防災を考えるシリーズ。今回は応急危険度判定の誤解についてです。

被災した地域の建物が安全かどうかを判定する「応急危険度判定」

熊本・大分地震には、全国の応急危険度判定士が現地入りして、被災した建物の危険度を調査しました。被災した建物がどのくらい危険なのかは、素人目ではなかなかわかりません。自分の家だからきっと大丈夫という素人判断では、せっかく助かった命が、その後の建物の倒壊や物の落下で失われてしまう可能性もあります。

応急危険度判定による調査結果は、以下の3種類のステッカーが建物の見やすい場所に表示されます。皆さんもニュースなどで、こうしたステッカーをご覧になったことがあるでしょう。

・危険(赤紙)   この建物に立ち入ることは危険です
・要注意(黄紙)  この建物に立ち入る場合は十分注意して
・調査済み(緑紙) この建物は使用可能です

この調査を専門家に行ってもらうことにより、被災者がそのまま自宅にいていいのか、避難所へ避難した方がよいのかを判定できます。また、建物の復旧作業や安全な建物の後片付けなどがスムーズに進みますし、被災者の方にとっても専門家に判定されたことで精神的に安心できます。応急危険度判定は、地震直後にできるだけ早急に実施される、欠かせない調査です。

応急危険度判定時に使用する住民向けパンフレット(出典:全国被災建築物応急危険度判定協議会)

応急危険度判定時に使用する住民向けパンフレット(出典:全国被災建築物応急危険度判定協議会)

全国被災建築物応急危険度判定協議会「応急危険度判定とは?」
(出典:全国被災建築物応急危険度判定協議会)

応急危険度判定と、罹災証明のための建物被害調査とは違う!

応急危険度判定は、その建物が使用できるか否かを、あくまで応急的に判定するものです。ところが、「赤紙=全壊判定、黄紙=半壊判定」と勝手に誤解されている方も多くいらっしゃるようでした。
地震後の建物の復旧対策検討のために実施するのは、「被災度区分判定」です。建築の専門家が、被災した建築物に引き続き住むためにどのような補修を行えばいいのかを、詳細に調べて判定します。
さらに、いわゆる「全壊、半壊」認定を行う「り災証明」は、市町村長が家屋の財産的被害程度を調査して証明するものです。これにより、地震保険やさまざまな公的支援への申請が行えます。簡単に区分けすると以下のようになります。

・被災建築物応急危険度判定
地震直後の二次災害防止とともに、自宅避難か避難所への避難かを判定するために公共団体が行う調査。
・被災度区分判定
応急危険度判定後に、建築物の恒久・継続使用のために、どのような補修・補強をすべきかを、建築の専門家が判定する調査。
・り災証明
り災した家屋の財産的被害程度(全壊、半壊など)を明らかにするために市町村長が証明するもの。

マンション管理組合で、応急危険度判定がなされたときにどのように行動するか、被害度区分判定結果によりどのように費用を捻出して補修・補強するのか、り災証明で半壊、全壊判定された場合にはどのような合意形成方法で判断するのか、事前に考えておくべきことは山積みです。住民全員で、ひとうひとつの事柄を勉強しながら、解決の手段を模索するのも、マンションの防災行動のひとつです。
「備えあれば憂いなし」といいますが、防災にはどれだけ備えていても足りることはありません。日々勉強だと考えて、前向きにマンション防災に取り組んでいただければと思います。私たちは、災害事例から多くのことを教わり、未来のためによりよく改善していくことができるのです。

告知:熊本・大分地震被害支援金プロジェクト

国崎信江が理事長を務める一般社団法人危機管理教育研究所では、「熊本・大分地震被害支援金プロジェクト」を立ち上げました。皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。詳細につきましては以下をご覧ください。
http://kikyoken.or.jp/kikyouken_kumamoto_shien.pdf

2016/07/21

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


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