オンライン防災ワークショップ&炊き出しを実現した戸建分譲地に学ぶ、withコロナ時代のマンション防災

コロナ禍にあっても、「待った無し」で発生するのが大地震や水害などの自然災害。それに備えるための防災訓練も、定期的に行うのが本来あるべき形です。しかし多くの住民が集まることでの感染リスクを考えると、果たしてどうするべきか、頭を抱えてしまう管理組合や理事会も多いはず。その抜本的な解決策になりうる取り組みが7月12日(土)、千葉県柏市の戸建分譲住宅『パレットコート柏たなか エヴァーシティ』で行われました。全150世帯の大規模な戸建分譲地で実現した画期的なオンラインでの防災訓練の企画、運営、さらにはマンションで実施する際のポイントについて、このイベントに携わった方々の話をもとにお伝えします。

リアルな防災訓練は開催できない…オンラインでやってみよう!

埼玉・千葉を中心に戸建分譲地の開発を手掛けるポラスグループ『中央グリーン開発株式会社』では、開発販売したすべての分譲地で住民同士の交流会を提供しています。しかし新型コロナウィルス感染症の流行により、それが困難な状況に。数回延期をしながら様子をみたものの、収束には年単位の時間を要するという予測が出始めると、新たな交流のカタチを模索する必要に迫られることになりました。

「コロナ禍で住民のみなさんの不安が高まっている一方で、リアルな場での交流ができない状況。そこで5月から、住民交流会をオンラインに切り替えてみたところ、十分に実施することは可能であるという手応えを得ることができました。それならばと、もともと今年初めに予定されていたパレットコート柏たなかエヴァーシティでの防災訓練を、リアルとオンラインを組み合わせてやってみようということになりました」と、同社の横谷薫さんは話します。

管理組合側としても、毎年開催してきた交流イベントをどうしようかと悩んでいたところでの画期的な提案とあって非常に好意的に受け止め、準備も積極的に協力してくれました。もともと存在していた住民間のLINEグループでイベントの周知を行うとともに、懸念事項だった屋外からの配信のためのネット環境の確保も、理事のご家庭が有線LANを提供してくれたことで解消。こうして全国的にも珍しい、オンライン防災訓練実現に向けての準備が着々と進められていきました。

「全150戸という大きな分譲地での開催ですから、オンラインでも多くの参加者が飽きずに喜んでいただける工夫が必要だなと思いました。何度も企画を練り直し、画面に表示する資料の推敲を重ね、結局準備は当日の朝までかってしまいました(笑)」と横谷さんは振り返ります。

配信はzoomとYouTubeライブの2つのツールを活用することで、住民の皆さんがオンライン環境に入りやすくする配慮と、参加できなかった人でも後から観ることができる工夫を施しました。

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オンラインならではの工夫と企画

イベント当日、開始10分前から入居者のみなさんが“会場”となるzoomの画面に入ってきました。その数、42世帯、約120名。参加者それぞれのパソコンやオンラインミーティングに関する知識が異なるため、あらかじめ操作の方法や流れを説明する動画を作成。それを観たうえで参加した方が多かったことで、イベントのスムーズなスタートを切ることができました。

操作の手順を流したことが、スムーズなイベントのスタートに繋がりました。

進行役となる管理組合理事会の小酒部秀光理事長と一般社団法人減災ラボ・鈴木光代表理事の趣旨説明に続き、パレットコート柏たなかエヴァーシティに備え付けられている防災用ベンチ『KONOBAベンチ』の紹介、そして防災に関する○×クイズが行われました。各自が自宅にいながら、楽なスタイルで防災の基礎知識を学べるというのは、オンラインならではのメリット。ふたりの軽妙な掛け合いのもとで、有意義なレクチャーが展開していきました。

進行役を務めた管理組合理事会の小酒部秀光理事長と一般社団法人減災ラボ・鈴木光代表理事

防災用ベンチ『KONOBAベンチ』の中身を一つひとつ解説

防災に関する○×クイズは、オンラインでも楽しめる良コンテンツ

「食」はオンライン防災訓練でもキラーコンテンツ

続いて行われたのは、ミニ炊き出し体験。事前に各自宅で1時間以上水につけてもらったパスタと、1つの鍋で同時調理ができるポリ袋を活用した減災時短レシピを参考に、それぞれが工夫を凝らした炊き出しメニューを調理していきます。

減災ラボとの取り組みで誕生した「エヴァーシティ減災ボーイズ」の青木さん、中森さんが、炊き出しメニューの調理を実践

大葉とじゃこのパスタ、天かす入りのパスタ、トマト缶となすパスタ、りんごのコンポートなど、おいしそうな一皿が出来上がったところで、それぞれ画面に披露。すべてが出揃ったところで、いくつかのグループに分けてディスカッションを行うことができるzoomの小部屋機能(ブレイクアウトルーム)を活用し、各グループの一押しプレートを決めて競い合うミニコンテストが行われました。

出来上がったパスタを画面に披露。ミニ料理コンテストを開催しました

「ともに学ぶ」という防災訓練の趣旨に、「楽しく競う」というゲーム性を盛り込み、各自が離れた場所から参加してもイベントの一体感を得ることができるという、これからのオンライン交流会の可能性を示した試みとなりました。

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「今後もオンラインでいいかも!?」参加者からの好意的な反応

今回のイベント終了後、参加した家族からは

・各戸で調理してそれを共有する。歓談交流する。というのが当初イメージしていたよりも良い感じだった。
・減災の知識が為になった。
・コロナの時期に、オンラインで防災を学べて交流出来た良い機会でした!
・もう少し時間が長くても良かったです。

という、数々の好意的なコメントが寄せられました。中には「毎年オンラインでもいい感じがします。それくらい気軽に交流できました」というものもみられるほど、この新しい取り組みに対する住民からの評価が高いことがわかります。

また管理組合理事会の小酒部理事長は「オンラインとリアルをうまくミックスすることで、参加した皆さんと連帯感を得ながら楽しむことができました。日頃からのコミュニケーションを取れる間柄であるための交流と、いざという時の防災知識の共有ができた今回のイベントは大変有意義でした」と振り返り、コロナ禍で諦めざるを得ない状況になる防災ワークショップや交流会が、オンラインという手法を用いることで十分に実現可能であることを強調しました。

さらに運営側からの感想として、中央グリーン開発株式会社の中村高志さんは「これまでもパレットコート柏たなかエヴァーシティでは、地域コミュニケーションの活性化と災害避難時のイメージをつけるための住民交流イベントが行われ、多くの住民が参加していた実績があります。また管理組合もオンライン技術の導入に積極的で、すでにLINEやzoomを使った理事会なども行われていました。いきなり『オンラインで防災訓練をしましょう』ではなく、住民や管理組合の中にしっかりとしたベースが築かれていたことも、今回の企画がうまくいった一因ではないでしょうか」と話しました。

また企画を手がけた同社の横谷さんは「今後は私たち開発事業者の手を離れ、住民の皆さんが独自で防災訓練などのイベントを行なっていくフェーズに入っていきます。コロナ禍の終息もまだ見えない状況ですので、引き続きオンラインを活用することも視野にいれなければならないと思いますが、今回のイベントのアーカイブが継続した実施の役に立つのではと思います」と語り、この経験が次に繋がるという明るい見通しを示していました。

マンションにこそ活用したいオンライン防災訓練

この取り組みは、パレットコート柏たなかエヴァーシティという戸建分譲地で行われたものでしたが、同様の企画をマンションで行おうと考えた場合、どのような工夫やコンテンツが考えられるでしょうか。

「マンションは同じ建物を共有している分、戸建分譲地よりも各家庭間の距離が近い。また災害時は在宅避難が前提となりますので、よりコミュニティで助け合うという意識を持つための防災訓練は重要です」と減災ラボの鈴木さんは話します。

「とはいえ、なかなかリアルでの防災訓練を行うことが困難な状況ですから、オンラインを活用して行うという取り組みはマンションでも今後さらに求められるのではないでしょうか。今回私自身が実際に体験してみて、オンラインのレクチャーやワークショップでも、基礎的な防災の知識や意識を参加者の皆さんの腑に落とすことが十分に可能だと感じました。むしろオンラインであるが故に、防災訓練に参加するためのハードルを下げることができるかもしれません」。

さらにオンラインという特性を活かした利点もあると、鈴木さんは付け加えます。「オンラインの防災レクチャーやワークショップであれば、それを記録に残し、住民がいつでも観られる状態にすることができます。マンションは戸建に比べて入居者の入れ替わりが多い。オンライン防災訓練の記録があれば、新たな住民に対して個別に『家庭で観る防災訓練』を行うことが可能になります。またそれがそのままマンションのソフト面での資産価値に繋がるという意味でも、オンラインによる防災訓練の実施と、そのアーカイブ化は大変重要になってくると思われます」とし、これからのマンション防災の新しい形に発展していくのではという期待感を語ってくれました。

ポラス 中央グリーン開発株式会社:【入居者交流会】パレットコート柏たなか エヴァーシティ (全150棟)、安心・安全につながる減災炊き出し@オンライン交流会
http://www.polus-green.com/support/events/detail/?ceno=300&ct=7

2020/09/10