女性防災士の取り組みがマンションも地域もつなぐ—みなとBOUSAI女子会

東京都港区で女性防災士として活躍する久保井 千勢さん。お住まいのマンションの防災委員会委員長として、防災を軸としたマンション内コミュニティ活動を進め、現在は近隣のマンションと連動した地域防災活動へ発展しようとしています。その取り組みについてお話を伺いました。これからマンションに防災グループをつくりたい人必見です!

なんとマンション防災委員会設立のきっかけは、警備員さん

マンションの防災訓練で、ダンボールの防災トイレを作るワークショップを開催。お子さんも参加して楽しそう!

はじめの一歩は、「マネしていこう!」

お仕事のかたわら女性防災士として、ご自分の住むマンションや地域の防災活動に取り組む久保井 千勢さん。お住まいのマンション「三田シティハウス(180戸・1998年竣工)」では、2016年3月に防災委員会が発足しました。

——防災委員会発足のきっかけは何でしょう?

久保井さん
年に2回防災訓練を行っているマンションでしたが、防災組織はありませんでした。長年うちのマンションに勤務している警備員の方が「いざというときに自分たちで身を守れるように、マンションの防災に真剣に取り組んだ方がいい」と提案してくださったのがきっかけです。
防災訓練にも毎回参加している熱心な警備員さんなので、防災に興味のありそうな居住者にピンポイントで声をかけてスカウトしてくださって(笑)、あれよあれよという間に15名ほどのメンバーが集まり、防災委員会を設立することができました。

【POINT①自治体の防災支援—防災士資格】

久保井さんは、港区の地域活動で防災士の資格を取得されました。港区では、地域防災の担い手として、区民・区内在勤者・在学者向けに港区防災士養成講座の実施や資格試験受験料負担するなどして資格取得を支援しています。自治体の防災支援活動はぜひ活用したいですね。
港区公式ホームページ ※外部サイト

はじめの一歩は、「マネしていこう!」

防災委員会設立後に作成した、三田シティハウスの防災マニュアル。

——まだまだ防災組織のないマンションが大半だと思います。委員会を発足して、まずどんな活動からスタートしましたか?

久保井さん
23区の各自治体HPで各種防災パンフレットをダウンロードして、その中でわかりやすいものを参考にしました。中でも千代田区や新宿区の『マンション防災はじめの一歩』は、わかりやすくて良かったですね。ゼロスタートは大変です。はじめの一歩は、こうしたマニュアルの中から、できそうなことを「マネしていこう!」と考えてスタートしました。

【POINT②各自治体のマンション防災マニュアルを活用】

マンションの多い自治体では、マンション防災マニュアルを公開しています。ぜひ参考に!
新宿区公式サイト>中高層マンションの防災対策~マンション防災はじめの一歩~ ※外部サイト

管理組合の配下に設立した防災委員会は、災害時には以下の5班に分かれて対応します。
①本部長・副本部長

②情報・広報班

③防火・消火・浸水班

④救助・救護・避難班

⑤避難・物資・生活班

防災委員会メンバーには、実はハザードマップの専門家やお医者さんもいて、それぞれの得意分野で活躍できるように立候補制で役割分担しました。やはりマンションは人材の宝庫ですね。

特命役員制度を設けて多種多様な職能の居住者が参加しているマンション自治会の記事もあわせてお読みください。
府中市の大規模マンション・リムザに学ぶ!マンション内外のコミュニティの作り

集会室の防災害備品展示。どんな資機材があるのか、居住者に一目でわかる情報共有です。

久保井さん
水や食料などの防災備蓄は各戸で行ってもらうことにして、防災委員会では防災用の資機材をリストアップして揃えることにしました。資機材は、港区の「高層住宅への防災資機材助成」制度を活用して購入。また、環境を整備するための防災予算として150万円を計上しました。総会で決議しましたが、防災の必要性を理解している居住者が多かったのか、反対する方はいませんでした。

【POINT③自治体の防災助成を活用】

防災予算が計上できないマンションでも、自治体の助成制度が活用できる可能性があります。まず自治体に相談してみましょう。
港区公式ホームページ>高層住宅の震災対策 ※外部サイト

賃貸以上分譲未満の関係人口を増やそう!でも100%は期待していない

「みんなのカフェ」は、集会室でお茶とお菓子を食べながらお喋りができる場です。

都心にある三田シティハウスは、180戸のうち分譲と賃貸の居住者が半々位。賃貸の居住者にも防災訓練への参加を呼びかけるだけでなく、マンション内の顔見知りを増やす場づくりとして、2018年から毎月1回集会室で「みんなのカフェ」を開催しています。

久保井さん
「みんなのカフェ」にはお子さんからシニアまで幅広い年代の居住者が参加してくださっています。居住者がさまざまなリソースを持っていることがマンションの一番いい点。「みんなのカフェ」は、参加者が得意なこと・楽しいことを披露する場になりました。目指しているのは、「賃貸以上分譲未満」の関係性のゆるいコミュニティづくり。100%は目指していません(笑)。

参加者は、得意なこと(折り紙、手話、マッサージ、防災食クッキングなど)を持ち寄って場づくりに協力。また外国人居住者も多いことから掲示チラシを英語に翻訳してくれる人、データ分析を手伝ってくれる人など、自分にできることを手伝ってくれる居住者が徐々に増えてきました。

「みんなのカフェ」のチラシ。翻訳版は、居住者が自分から「英語版もあった方がいいのでは?」と言って翻訳してくださったもの。

久保井さん
少しずつ顔見知りが増えて、防災やコミュニティの土台が出来上がってきた手応えを感じています。外のイベントで知り合った男の子が実は居住者で、扉にお裾分けのキャベツがぶらさげてあったりしたことも(笑)。賃貸で住んでいた方がずっとここに住み続けたいからとお部屋を購入したケースもありました。

これは、防災活動やコミュニティ活動が実を結んで、賃貸の居住者が長く住み続けたいと思うほど、住み心地のいいマンションコミュニティが醸成されているということではないでしょうか? 防災委員会の設立から4年が経ち、防災を通じたコミュニティパワーが、実は資産価値向上にもつながっているのですね。

さらに凄いのは、災害時に安否確認するための「緊急時連絡票」を総会委任状の裏面に記載し、180世帯中179世帯が回答、99%の回収率であるということ。素晴らしい協力体制です。

近隣のマンションとつながる、地域とつながる「みなとBOUSAI女子会」

「3マンション連携防災訓練」時の展示。他のマンションにどんな資機材があるのかわかるだけでも参考になります。

2019年には、同じ町内にある3つのマンションで「3マンション連携防災訓練」を実施しました。合同防災訓練ではなく、それぞれのマンションによって事情も異なるので、各々のマンションで防災訓練を実施。居住者はどのマンションの防災訓練に参加してもOK、お土産や費用は訓練を開催したマンションで負担するというシンプルなルールによる連携防災訓練でした。

久保井さん
築年数も防災設備も異なる3マンションで連携できれば、きっと防災力が高まるはずです。防災訓練は別々の日に行うので、参加できる日程の選択肢も増えますし、他のマンションの防災取り組みを知ることもできます。これがきっかけでマンション内外の「顔が見えるご近所付き合い」が始まりました。

「みなとBOUSAI女子会」では、専門家を招いた講演会が行われています。この日は、数々の団地の建替え事例を担当した旭化成不動産レジデンスの大木祐悟さんの講演。
被災後のマンションの建替え事例を紹介した大木さん

久保井さんがリーダーとなって組織している港区の女性防災士のグループ「みなとBOUSAI女子会」では、定期的に地域防災イベントを開催し、女性ならではのしなやかな視点の防災の取り組みを行っています。その取り組みが評価され、今年は2020年度港区立男女平等参画センターの助成金事業に採択されました。

マンション内だけに限らない防災活動が、地域にもつながっていくのですね。

久保井さんが登壇した「マンション防災減災サミット」の様子。
マンション防災に必要なのは地域連携とコミュニティ形成

これからマンション防災を始めたい人へのアドバイス

—最後に、これからマンションに防災組織をつくりたい、活性化させたいと考えている方に向けてアドバイスをいただけますか?

久保井さん
最初はマネから始めるのでいいと思います。他のマンションの成功事例は、ひとつのピース。自分のマンションで足りないピースは、他の成功事例を教えてもらって、ピースを補えばいい。みんなでピースを出し合うことで、よりスピーディに、より豊かな防災力が育つはずです。

防災委員会メンバー、発足を促してくれた警備員さん、いつもサポートしてくれる管理員さんという、かけがえのない仲間がいることも活性化の鍵です。マンション内に防災仲間を見つけて、がんばってください。


女性らしくしなやかな視点でマンション防災に取り組み、役立つ情報や良いアイデアはどんどん実践していく久保井さん。防災委員会メンバーや女性防災士という、防災仲間とのヨコのつながりも大切にされています。これからマンションの防災組織をつくりたい!活性化させたい!という方は、ぜひ参考にしてください。

みなとBOUSAI女子会 ※外部サイト

久保井千勢さんがリーダーとなって組織する、港区・女性防災士の集いの場。「防災を女性らしくしなやかに」をテーマに活動中。2020年度港区立男女平等参画センターの助成金事業に採択される。

2020/06/17