NHK「体感 首都直下地震」で紹介された「被災ツリー」を使って、マンションの防災力をUPしよう!

2019年12月1日〜8日、NHKテレビで1週間にわたって放送された「体感 首都直下地震ウィーク」シリーズは、大きな反響を呼びました。特に多くの方々から感想をいただいた「被災ツリー」についてご説明します。

マグニチュード7.3の地震が東京で発生したら? NHK「体感 首都直下地震ウィーク」

昨年12月に1週間にわたって放送されたNHKテレビの「体感 首都直下地震ウィーク」シリーズは、大変な反響を呼びました。

NHK”体感 首都直下地震ウイーク” ※外部サイト

このシリーズは、今後30年以内に高い確率で発生するとされている、マグニチュード7.3の地震が東京で発生したら、どんな被害が起こるのか?ということを、発災から1日後、1週間後、1ヶ月後と、時系列で様々な切り口で被災を追いかけたものです。

私も番組に出演・協力させていただきましたが、その反響の大きさに驚きました。

いままで災害に無関心だった視聴者の方々が、首都直下地震の恐ろしさを身近なものとして考え始めたとか、飲料などの防災備蓄品を揃え始めたという声を伺い、テレビの影響力を痛感しました。

首都直下地震から考えられる被害のすべてを書き出す「被災ツリー」

「被災ツリー」の収録風景。「被災ツリー」づくりの作業は、約7時間にわたってスタジオで行われました。

シリーズ後半の番組NHKスペシャル「終わりの見えない被災」では、兵庫県立大学 室崎益輝 教授(復興・火災)、名古屋工業大学 渡辺研司 教授(経営システム)、日本医科大学 布施明 教授(救急医学)、東北大学 阿部恒之 教授(心理学)、専修大学 佐藤慶一 教授(都市防災)、そして被災者支援の専門家として私、という6名の専門家が集まって、首都直下地震で考えられる被害をすべて時系列で付箋に書き出しました。

6人の専門家が首都直下地震で起こりうるすべての被害を書き出した「被災ツリー」の原型。
想定被害の付箋で、壁面が埋め尽くされました。

「被災ツリー」では、首都直下地震発生直後、24時間後、2〜3日後、4〜6日後に、どんなことが起こるのか、住宅、インフラ、経済・産業といったさまざまな場面を想定し、枝分かれしながら、どんどん連鎖していくさまざまな被害を「見える化」していきます。

たとえば、首都直下地震が発生してインフラが遮断すると、停電や断水によって病院の器機が使えなくなり、他の医療スタッフも病院に駆け付けることはできません。これらの被害により、地震から生き延びることができても、必要な治療を受けることができずに、多くの人が亡くなってしまう可能性がわかりました。

また、人口が集中する東京では、避難所が不足し、物資不足から仮設住宅も不足。多くの住宅難民は行き場がなくなり、半壊した家に住み続ける・地方へ避難する・車中泊を続けざるを得なくなります。

地震が落ちついたとしても、1年後、数年後の日本社会は、首都圏機能の被害から、全国の経済・産業分野にも大きな被害が派生していきます。

「被災ツリー」の特徴は、これら被害の連鎖を書き出していくことで、発災直後の不手際や見逃しが、実は後々大きな被害につながっていくのかがわかるということです。

後々の被害の連鎖を防ぐためには、どこまで遡って、どの時点で被害を防げばいいのか、そのヒントを得るために役立てることができるのです。

NHK WEB特集 “地獄絵図”「被災ツリー」で見えた首都直下地震3つの危機 ※外部サイト

マンションで「被災ツリー」を考えるとしたら?

マンションの非常階段も、外階段と内階段とでは、災害時の対策が違ってきます。

「被災ツリー」は、災害によって、自分と自分を取り巻く環境にどんなことが起こるかを考えるツールです。これによって災害時のシナリオが浮かび上がってきます。

これまでにも、時間軸で災害時の行動をイメージするために、東京大学の目黒公郎教授が考案した、災害状況イマジネーション支援システムのためのツール「目黒巻」を活用したマンション防災をおすすめしてきました。

「目黒巻」による、マンション内での災害時行動イメージトレーニングを!

「目黒巻」で災害時の自分の行動をイメージすることももちろん重要ですが、「被災ツリー」は、自分と自分を取り巻く環境でどのような被災が起こるのかを知るためのツールです。

たとえば、夜に地震が発生してエレベーターが停止したら、マンションの非常階段を使うしかありません。外階段だとすれば、照明のない中で転落の危険もあります。内階段であれば、非常用電源で照明が点くかもしれませんが、数日しか持ちません。窓も照明もない中で、内階段の非常階段は安全に使用できるでしょうか? 

大規模マンションであるほど非常階段は大混雑し、まるで最近の富士山登山のような行列になる可能性は高いでしょう。このことが後に、足腰の弱い高齢者住民の引きこもりや生活不活発病、引いては災害関連死につながっていくかもしれません。しかし、インフラが停止しても非常階段を安全に使えるように対策しておけば、こうした関連被害は起こらないのでは?

マンションでも「被災ツリー」ワークショップを開催してみよう!

マンションで「被災ツリー」を考える場合は、
人、建物、インフラなどの多角的な面から起こりうる被災を考えていくとよいでしょう。

命、住宅、社会の危機をあぶり出してくれた「被災ツリー」は、専門家を交えてしっかりと被害の可能性を考えていく必要はありますが、皆さんが想像もしていなかった被害の連鎖の可能性を教えてくれる有効なツールです。

番組を視聴した方々からは、「ぜひ取り入れたい」「防災減災教育の教材にしてほしい」という声を多くいただきました。

マンション住民の皆さんも、防災の専門家やファシリテーターを交えて、防災活動の一環として「被災ツリー」ワークショップを行ってみてはいかがでしょうか?

実際のワークショップでは、大地震が起こったらマンションで起こりうる被害についてポストイットに記載し、それらを時系列かつカテゴリ―別に分けて整理していきます。

住民の皆さんで「被災ツリー」を作成すれば、自分と自分たちのマンションを取り巻く環境でどのような被災が起こるのか、どの時点で対処すればよいのか、さまざまなことが明確になるはずです。

©NHK

2019年12月に”体感 首都直下地震ウイーク”と題して、NHKスペシャルを中心に、番組、デジタルサービス、イベント展開を交えた新しい形で、首都直下地震の被害の全貌を紹介した。

現在、amazon prime video NHKオンデマンド「Nスペ 体感 首都直下地震」にて全12エピソードを配信中。「被災ツリー」は、「エピソード11 終わりの見えない被災」で紹介されている
※amazon prime videoでの動画配信は、予告なく中止する場合があります。

2020/03/06