通電火災を防げ!全戸に感震ブレーカーを導入したマンションの防災対策


地震による停電後、電気が復旧した際に起きる通電火災。
阪神淡路大震災や東日本大震災では、停電から復旧した際に通電火災が相次いで発生通電被害を引き起こしました。
今回はこうした通電火災を防ぐため、感震ブレーカーの全戸一括導入を行ったアドリーム湘南平塚管理組合様に、そのきっかけや経緯を伺いました。

大地震の出火原因の約6割以上が電気火災!!感震ブレーカー普及を促進中

内閣府、消防庁、経済産業省が促進する感震ブレーカー設置促進チラシ。

通電火災とは、災害による停電が復旧したときに、家の中で破損した電気配線や転倒した電気器具が通電して発生する電気火災のことです。

阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)共に、地震発生時の出火原因のうち約6割が電気に起因するものでした(※2)。
揺れを察知したら電気を止める感震ブレーカーなどの普及が一定の抑制効果を有するという専門家の提言を受けて、政府および各自治体は、通電火災を防ぐ感震ブレーカーの設置を促しています。

地震を感知したときに自動的にブレーカーを落として電気を止める感震ブレーカーは、分電盤タイプ(内蔵型、後付型)コンセントタイプ、簡易タイプの4種類があります。

マンション・ラボでも通電火災の怖さについて、啓蒙していますので、こちらの記事もご覧ください。
電気が復旧したら火事になる!?通電火災の怖さと対策について

2つの大震災での通電火災被害を知ったことがきっかけ

突然の地震発生! 身の安全を優先する避難時に、室内の電気ブレーカーを落とすことまで考えられないのが人の常ですよね。

神奈川県平塚市にあるマンション、アドリーム湘南平塚では、管理組合が「感震ブレーカー」の全戸一括導入を行いました。早速お話を伺いましょう。

——感震ブレーカーを知ったきっかけは何ですか?

理事長
2018年のマンションの防災訓練を実施したときに、平塚消防暑の起震車で震度6〜7の地震を体験しました。その際に消防署の方から、東日本大震災では仙台のマンションでも通電火災の被害があったので、感震ブレーカーを導入するとよいと勧めていただいたのがきっかけです。私も仙台のマンションで火災があったということはニュースで知っていましたし、それが通電火災ということなら、我々のマンションでも起こりうる得る可能性は高いと思いました。しかしそれまでは、感震ブレーカーというものが存在することすら知りませんでした。

アドリーム湘南平塚の管理組合としても、地震対策は住民の安全や資産を守る大切な取り組みのひとつ。早速、翌月の理事会で検討することにしました。

感震ブレーカー導入の決め手は、性能・取り付けの簡単さ・導入サポート

感震ブレーカー震太郎(大和電器株式会社)」は、アース付のコンセントに差し込むだけ設置可能。震度5強相当の地震が起こったときに、主幹ブレーカーを自動遮断して、停電復旧時の通電火災等を防ぎます。※一般財団法人日本消防設備安全センター「消防防災製品等」の推奨品です。

平塚市では、「平塚市感震ブレーカー設置推進事業」を推進しています。自治体で勧められた感震ブレーカー(簡易タイプ)は、1個500円という安価な反面、個々のお宅での取り付けは難しいと感じるものでした。そんなとき、管理会社の長谷工コミュニティから、大和電器株式会社の製品「感震ブレーカー震太郎」を紹介されました。

理事長
住民の中には高齢者や単身者も多く、全戸に配付したからといってひとりで取り付けできるかどうかはわからない。全戸に配布しても宝の持ち腐れになる可能性が非常に高い。また、安価な感震ブレーカーは性能面でもどうなのか不明でした。そこで説明会を開いて、製品についての情報を得た上で、理事会で「感震ブレーカー震太郎」を全戸導入することに決定しました。

感震ブレーカー震太郎(大和電器株式会社) ※外部サイト

「感震ブレーカー震太郎」の仕組み。震度5強相当の地震を検知後、避難の余裕を保って3分後に主幹ブレーカーを遮断。地震による電気火災(二次災害)を予防できるので、住民はまず身の安全の確保だけに専念して避難できます。

——「感震ブレーカー震太郎」の決め手は何だったのでしょうか?

理事長
「感震ブレーカー震太郎」は、アース付きのコンセントに差し込むだけなので、取り付け面の不安もありませんでした。本製品は「消防防災製品等」の推奨品でもあり、性能面でも十分に信頼できるものでした。導入決定前に感震ブレーカーとはどんなものなのかわからない住民向けに説明会を開いてくださったり、希望住戸には直接取り付けも行ってもらえるというお話をいただいたり、大和電器さんのきめ細かな対応も決め手のひとつでした。

全戸一括導入には全住民賛成!その背景には防災対策を育んできた土壌があった

これまで丁寧に防災活動を積み上げてきたからこそ、住民の防災意識が育まれてきたに違いありません。

——理事会が提案した全戸一括導入に関して、住民からの反対意見などはありましたか?

理事長
反対意見は、ありませんでしたね。住民の資産と安全を守るという大切な防災設備ですから。
これまでにも、部屋の閉じ込めを防止するための防災製品を全戸玄関ドアに導入したり、エレベーター内での閉じ込めに備えてエレベーター用防災キャビネットを導入したり、管理組合として防災力を高める備えを行ってきましたので、住民にも防災意識が育まれてきたと思います。

これまでにも、東日本大震災時に仙台のマンションで玄関ドアが開かなかったり、エレベーターでの閉じ込めが起こったという話を聞いて、管理会社と相談して防災設備を導入してきたという理事会。被災情報を都度自分のマンションに置き換えて、“自分ごと”化してきたことが、今回の感震ブレーカー全戸導入の賛成にもつながったのでしょう。

理事長
感震ブレーカー導入決定後には、個人で取り付けする住戸の他に、取り付けを依頼した住戸20数戸には、在宅の多い土日に大和電器さんの担当者が来て対応してくださいました。売るだけじゃなくて、ちゃんときめ細かく対応してくださったことも有り難かったですね。

理事
私は、すごく助かりました。実は阪神・淡路大震災の通電火災への警戒心があって、このマンションへ5〜6年前に引越してきたときに、他メーカーさんの感震ブレーカーを個人的に取り付けていたんです。分電盤って高い位置にあって、以前の製品を外すのがすごく大変だったので、取り外しから新規設置まで助けていただけて有り難かったです。

合意形成の鍵!住民関係も防災も積み重ねが大切

——災害時の通電火災を防ぐためとはいえ、高価な防災製品です。住民全員が一括導入に賛成された合意形成の背景には、やはり日々の住民関係や防災活動の積み重ねが大切ということでしょうか?

理事長
まさにそのとおりだと思います。総戸数60戸というコンパクトさも、意見がまとまりやすい一因ではないでしょうか。また、管理会社さんと大和電器さんの協力が大きかったですね。たとえよい防災商品があったとしても、管理組合の理事だけで情報を収集するには限界があります。専門家から、地震による被害事例などと合わせて優れた防災製品の情報などを教えていただけるのは、マンションにとっても有益なことです。マンションの防災対策は、管理会社さん、メーカーさんとの信頼関係を高めて、よいパートナーシップを築いていくことも大切だと思います。


管理会社やメーカーと連携して、感震ブレーカーの全戸一括導入を実現させたアドリーム湘南平塚 管理組合の皆さん。よい住民関係だけでなく、よいパートナーシップづくりも重要だというお話に納得出来ました。また、防災設備の導入時には、都度災害事例をあわせて伝えると説得力を増すという話にも共感できました。今後、感震ブレーカーをはじめとした防災設備の導入を検討している管理組合の皆さんも、ぜひ参考にしてください。

取材協力:アドリーム湘南平塚
神奈川県平塚市にあるマンション。1995年竣工。茅ヶ崎市と津波一時退避場所として協定を締結している他、防災活動に力を入れている。

参考資料
※1 神戸市「通電火災ってご存じ?」(2016年)
※2 内閣府防災情報のページ「大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について」(2015年)

2020/01/16