マンション防災のエキスパートたちが語った、絶対タメになる取り組みと成果を紹介!

日本各地で大きな地震が相次ぐいま、防災に注力するマンションや団体が集まり、「マンション防災減災サミット」でそれぞれの取り組みや成果を披露しました。その内容は、皆さんのマンションの役に立つはずです。今回は当日発表された内容を要約してご紹介します。

「マンション防災減災サミット」とは?

2019年2月に東京で開催された「マンション防災減災サミット」は、川崎市議会議員の小田理恵子さんが中心になって制作した「マンション防災減災事例BOOK VOL.1」の発行を記念したイベントです。冊子で紹介されたマンションや団体が参加して、3部構成で事例の発表や交流が行われました。

「マンション防災減災事例BOOK」VOL.1(2018年12月23日発行)とVOL.2(2019年3月31日発行)。防災に関して非常に優れた取り組みを行っている全国18のマンションを紹介した事例集です。

第1部 マンション防災に必要なのは地域連携とコミュニティ形成

登壇(写真左から):BELISTA横浜 防災委員会 委員長 坂井誠仁さん/リムザ 自治会長・防災会 会長 林田健一さん/小杉駅周辺エリアマネジメント 防災座長 亀井正樹さん/三田シティハウス 防災委員会 委員長 久保井千勢さん/ラゾーナ川崎レジデンス 自治会長 上嶋満一さん/NPO法人かながわ311ネットワーク 代表理事 伊藤朋子さん(モデレーター)

第1部のテーマは「地域連携とコミュニティ形成」。5つのマンションと連合の自主防災グループが登壇し、モデレーターの伊藤さんの進行で話し合いました。

第1部のポイント! マンションと地域のつながり強化が大事

地域の町会に加入する/単独で自治会を結成するかは、マンションの規模や状況によって異なってきますが、「これからのマンション防災には地域連携が重要だ」と、皆さんお考えのようです。マンション単体で防災力を高めることも重要ですが、地域連携というヨコのつながりも強化して、共助の仕組みを広げていけるといいですね。

【マンションごとの取り組み】

●三田シティハウス(180戸) 久保井さん
・マンションの防災拠点としても活用している集会室では、月に1回「みんなのカフェ」を開催。ご近所との関係づくりにも役立てている。
・町会に加入して、婦人部やお祭りなどの地域活動のお手伝いを行う。地域連携は、ふだんからの地道なお付き合いが重要。

●防災ワーキンググループ 亀井さん
・武蔵小杉エリアのタワーマンション・商店街・個人が参加する「小杉駅周辺エリアマネジメント」の中に、周辺地域と協力して防災対策を進める「防災ワーキンググループ」を設置。
複数のタワーマンションによるヨコのつながりを強化。共助のための勉強会を実施。
・2017年に制作した冊子「コスギ防災」は、6つのタワーマンションの住民約5,000人に全戸配付。「具体的でわかりやすい!」と評価を得た。
・住民が積極的に地域のお祭りや趣味の集まりに参加し、地域コミュニティが活発になった。防災面でも好影響がでていると思う。

●リムザ(553戸)林田健一さん
・自治会に加入する必要はないという住民もいたが、行政や地元との関係づくりには自治会が欠かせない、と説明を重ねて、マンションとして自治会を結成。
・府中市はお祭りなどのイベントが多い街なので、他の自治会とも積極的に交流している。
・防災委員会は、管理組合配下に設置されているので、入居期間中は全員が防災班に配属される仕組みになっている。
・別に給料をもらってやっている訳ではないので、「マンションの防災活動は楽しくできること」が重要。地元のお祭りに参加したり、マンション内外で仲間をつくったりして、楽しみながら防災力をアップしていけるとよい。

●BELISTA横浜(199戸)坂井さん
・自治会がなく地域交流イベントも特にない。
・竣工から7年後に自主防災委員会を設置して、「できることをやる」というスタンスで、無理のない防災組織づくりを心がけている。
緩やかにしっかりとした防災体制をつくるために、自分たちのマンションに合った班毎・項目毎に分離できる防災マニュアルを作成して、住民全員が閲覧できる共用部のライブラリーに設置している。(居住者用はA4両面全戸配布)

●ラゾーナ川崎レジデンス(667戸)上嶋さん
・規模が大きいため、マンション単独で自治会を組織。
・入居前から地元に住んでいた住民も多く、自身も近隣の町会長を長年務めてきたため、地域を熟知している。
・行政支援の利用、他町会の防災訓練やお祭りなどの地域交流イベントにも参加して、マンションだけで孤立することがないように地域連携を行う。
・マンションの防災訓練では、近隣の戸建て住民にも参加を呼びかけて、共助意識の強化を心がけている。

第2部 優れたマンション防災活動の発表

登壇(写真左から):溝の口減災ガールズ リーダー 山本詩野さん/サーパス草薙運動場前 管理組合 理事長 濱田晴子さん/リガーレ日本橋人形町 管理組合 理事長 鈴木健一さん/ライオンズタワー仙台広瀬 管理組合法人 理事長 佐々木秀喜さん/ブラウシア 防災委員会 委員長 加藤 勲さん/モデレーター:一般社団法人減災ラボ 監事 山本美賢さん

第2部は、防災で優れた活動を行っている5つのマンションや団体の皆さんの登壇です。それぞれが、規模や立地にあわせた防災対策に取り組みを、モデレーターの山本さんの進行でご紹介いただきました。

第2部のポイント! 今後も多様な防災対策に期待!

大規模・小規模マンション、それぞれの防災対策事例が目立った第2部。
中でも興味深かったのは、女性視点の防災、マンションと地方との連携、地域拠点としての大規模マンションの役割、美味しい炊き出しの魅力の4つのトピックスでしょうか。積極的に女性が防災活動に取り組むことで、いままでにない視点が生まれ、多様で魅力的なマンション防災の取り組みが増えていきそうです。

【マンションごとの取り組み】

●リガーレ日本橋人形町(335戸)鈴木さん
・人形町の再開発事業として生まれた39階建てのマンション。
・防災委員会は、住民・町会・テナント・敷地内の神社が加入。中央区の支援を受けて防災マニュアルを作成した。
地域の防災拠点としての役割を担っているので、万全な防災設備を備えているのが特徴。
・防災訓練は、人形町の飲食店関係者がいることもあり、ローストチキン丼や鴨団子汁など、創意工夫の美味しい炊き出し食で参加者を増やす努力を行う。

●ブラウシア(438戸)加藤さん
・BBQ世界大会8位を受賞したマンション住民が、イベント時に腕を奮う。防災委員会は始まったばかり。
・昨年から群馬県の川場村と協定を結んで、都市のマンションと農村とで「里山縁組プロジェクト」をスタート。最近のデュアルライフや関係人口づくりの取り組みとして、マンションと農村や漁村がつながれば、地域活性化はもちろん災害時の助け合いの可能性にもつながるのではないかと考える。

千葉市のマンションと群馬県の農村が「里山縁組プロジェクト」をスタート

●溝の口減災ガールズ 山本さん
・溝の口減災ガールズは、パークシティ溝の口、メイフェアパークス、ザ・タワーアンドパークスなどのママ友同士で結成。
ローリングストックや防災食の「ミニ炊き出し」レシピをワークショップ形式で紹介して、防災減災意識を高めるための活動を各地で行う。
・ご近所さん同士で集まってできる「ミニ炊き出し」レシピは、主婦はもちろん、小さい子どもでもできる簡単なものばかり。もっと広めていき、全国のマンションで「ご当地減災ガールズ」が生まれていくことに期待する。

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●ライオンズタワー仙台広瀬(409戸)佐々木さん
・2010年に防災マニュアル策定を決議。事前ヒアリングとして、今日一緒に登壇しているリガーレ日本橋人形町の鈴木理事長の下へ視察に伺うなどして、準備を進めていた。しかし、まさにその最中に東日本大震災が発生。
・防災マニュアル自体は完成していたが、印刷はストップ。自治会や知事会の役員は、すでに防災マニュアルの中身が頭に入っていたため、最小限の被害で対応することができた。

3.11被災マンションの防災対策に学ぶ、事前準備の大切さとコミュニティ力

●サーパス草薙運動場前(68戸)濱田さん
・理事長になって3年目。住民みんなが防災を自分ごと化するためにどうしたらいいのかを考えている。
・68世帯なので敢えて自主防災委員会は設けない。いざというときには、その場にいる人がリーダーとして動きを決める。そのためにも、積極的に外部の講師を招いたワークショップの記載、「安心カード」と呼ぶ居住者台帳の作成、全戸の情報がわかる住民マップの作成などを実施して、住民の誰もがアクションを起こせることを目指す。
小規模マンションだからこそできることが、実はたくさんあるはず。

第3部 被災後のマンションの建て替え事例を紹介

登壇(写真左から): NPO法人かながわ311ネットワーク 坂井誠仁さん/旭化成不動産レジデンス マンション建て替え研究所 主任研究員 大木祐悟さん/モデレーター:一般社団法人 減災ラボ 代表理事 鈴木 光さん

第3部のポイント!

第3部では、熊本地震の被災マンションの建て替え事例を中心に、区分所有者の参加意識や情報のオープン化の重要性について話し合いました。地震に打ち勝つ「最強のマンション」とは、堅固な建物と住民の力の両方が備わっていることなのだと気付かされました。

・地震に打ち勝つ「最強のマンション」とは?

モデレーター 鈴木さん
大木さんは、熊本地震で被災した上熊本ハイツ(100戸・5棟)の建て替えのサポートを行われました。上熊本ハイツは驚異的な速さで円満に合意形成が実現したそうですが、途中揉めたりすることはなかったのでしょうか?

旭化成不動産レジデンス 大木さん
ほとんどなかったと思います。まず第1にご近所関係をベースにしたコミュニティができあがっていたこと、第2に子どもの帰りが遅くなったらみんなで探すほどの共同体意識があったこと、第3に積極的に管理組合活動に参加する土壌ができあがっていたことなど、まさに「住民の力」ですね。
5棟ある団地の被害状況は異なっていたのですが、全員の区分所有者様が毎回集まって議論を交わされていました。区分所有者様の参加意識の高さを痛感しました。

熊本地震で被災したマンションが、1年半のスピード決議で建替えを実現できた理由に迫る!

建て替えにあたっては、大木さんは「区分所有者の参加意識」が重要だと言います。

モデレーター 鈴木さん
地震に打ち勝つ「最強のマンション」として、ふだんからやるべきことはありますか? 

旭化成不動産レジデンス 大木さん
建物が壊れないことです。建物さえ壊れなければ、命が救えます。地震が起こっても、できるだけ壊れない建物を維持していくことができれば、それも防災力のひとつです。旧耐震基準のマンションであれば耐震診断や耐震改修を行い、新耐震基準のマンションであれば日々のメンテナンスを怠らず、建物の維持に備える。そして、区分所有者の参加意識が高いこと。それこそが「最強のマンション」ではないでしょうか。

・緩く巻き込む「防災サポーター」づくり

坂井さんは、「適度な緩さ&情報オープン化」が大切とのこと。

モデレーター 鈴木さん
坂井さんは、BELISTA横浜の防災委員会 委員長であり、マンション管理士でもあります。いまどこのマンションも、理事の担い手や後継者不足に悩んでいます。輪番制にしなくても、防災に人が集まるコツはありますか?

かながわ311ネットワーク 坂井さん
「適度な緩さ&情報オープン化」でしょうか。BELISTA横浜は、あえて自主防災組織を輪番制にしていません。防災に興味のある人を巻き込みながら参加できるようにしています。そのコツは懇親会です。ざっくらばらんに話せる懇親会で意見交換しながら、みんなを緩く「防災サポーター」として巻き込んでいます。
また、理事会が意見箱を置いて住民からの意見を反映するようにしていますが、基本的には部屋番号を書いていない要望や意見には答えないようにしています。住民は、意見があれば理事会へ出席もできます。適度な緩さを保ちつつ、責任ある参加ルールが保たれるといいですね。


サミット参加の皆さんはとにかく勉強熱心で、気軽に情報共有してくださる方ばかりでした。もしマンション防災で悩んでいる管理組合や理事の方がいらしたら、こんな先輩たちに相談できるだけでもずいぶん心強くなるのではないでしょうか?

マンション同士でオープンに話すことができる場って、少ないものです。防災だけに限らず、もしかするとコミュニティづくりやマンション修繕などのさまざまな面で、気軽に情報を共有できる場が求められているのかもしれません。ネットが活発になっているいまだからこそ、顔を見て意見交換できる場が求められているのでしょう。
マンション・ラボでも、これからマンション同士のヨコのつながりについて、そのメリットを追いかけていきたいと思います。

お問い合わせ先

「マンション防災減災事例BOOK VOL.1&2」についての詳細は、以下メールでお問い合わせください。
マンション防災減災事例BOOK制作委員会 mbousaiLab@gmail.com

「マンション防災減災サミット」概要

・主 催:マンション防災減災事例BOOK制作委員会
・開催日:2019年2月27日
・場 所:東京・赤坂

「マンション防災減災サミット」参加11マンションおよび団体 ※リンク先はすべて外部サイト

・リムザ(東京都府中市)
NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント 防災ワーキンググループ(神奈川県川崎市)
・ラゾーナ川崎レジデンス(神奈川県川崎市)
・三田シティハウス(東京都港区)
・BELISTA横浜(神奈川県横浜市)
リガーレ日本橋人形町(東京都中央区)
溝の口減災ガールズ(パークシティ溝の口、メイフェアパークス、ザ・タワーアンドパークスほか)(神奈川県川崎市)
・ライオンズタワー仙台広瀬(宮城県仙台市)
・サーパス草薙運動場前(静岡県静岡市)
ブラウシア(千葉県千葉市)
旭化成不動産レジデンス マンション建て替え研究所
認定NPO法人かながわ311ネットワーク
一般社団法人減災ラボ

2019/04/22