マンション防災のよくあるギモンに、専門家の国崎先生が答えます!

今回は、マンション防災に関して住民の方から寄せられたギモンに、危機管理アドバイザーの国崎信江先生にお答えいただきました!

Q. 地震の後にマンションの下水管が使えるかどうかは、どうやって調べればいいの?

大地震が起きたあとマンションの下水管が破損していないかどうかは、どうやって調べればいいのでしょうか? 下水管の状態がわかるまでトイレは使ってはいけないって本当ですか?

見た目は大丈夫そうだけど、中の排水管の状態まではわかりません。

A. 専門業者が確認に来るまで待つしかありません。

マンションも一戸建ての場合も、大地震後の下水道の取り扱いは同じです。
見えないところで破損している可能性がありますから、基本的に断水時はトイレや生活用水を流すのは控えましょう。水道管の点検をする業者が来るまでには時間がかかるかもしれないので、断水して水が流せなくてもマンション内で過ごせるようにトイレの対策を万全にしておくしかありません。

震度5強以上の地震が起こったら、マンションのトイレが危ない?

・被災時はマンション内でトイレを使わない・排水しないルールを!
大地震の後は、マンション内でトイレを使ったり排水をしたりしないというルールを設けておいて、断水でなくても、配水および排水管の被害の有無が確認できるまでは水を流さないという体制を取るしかないでしょう。

・飲料水外にもエチケット用品の備蓄も必要
しばらくは水を使わないで生活できるグッズを準備しましょう。熊本地震の被災地では、お風呂を待つ人で長蛇の列ができて、2時間以上待つことも珍しくありませんでした。毎日入浴するのが体力的につらく、2日、3日と間を空ける人も少なくありません。このような事実から、体の衛生を保つためのドライシャンプーや体を拭くシートなどを備蓄しておきたいものです。

熊本・大分地震に学ぶ、今後のマンション防災に必要なもの〜トイレとお風呂問題

Q.あたり前だと思っていた「浴槽に水をためる」は、実はNGって聞いたけど本当?

以前は、災害で水が使えなくなる場合に備えてお風呂のお水をためておくとよいと言われていました。しかし最近テレビで、細菌が繁殖するからお風呂の水はためておかない方がいいと効きました。いったいどちらが正しいのでしょうか?

浴槽の水は災害時に使える?使えない?

A.まず自分で考える、そして常に防災知識をアップデートする

災害時に浴槽の水をどう使いたいのかによっても変わってきます。
浴槽の水を飲料として使いたいのであれば災害用の浄水器が必要ですが、数日経った水で細菌が繁殖していても、消火用水などに使えます。ただ大地震の際には、浴槽にためた水がスロッシング現象(地震などの振動によって液体表面が大きくうねる現象)で溢れ出してしまう可能性があるので、マンションの高層階ではためておかない方が漏水の危険からもよいでしょう。

「風呂水を何のために使うのか」「災害時に排水できない場合はどうするのか」という状況まで考えて行動しましょう。以下の記事もあわせてご覧ください。

マンション防災対策の勘違い―地震に備えてお風呂に水をためておくのは良い?悪い?

・地震が起きたら机の下で安全確保ができるかどうか?
浴槽の水に限らず、防災の知見というのは常に進化しています。
たとえば「地震が起きたら机の下に潜る」という行動も、家具固定されていない机だったら逆に危険な場合もあります。
高層階のマンション居住者には、部屋に手すりを設置したり固定したポールのようなものを設置したりしてそこに掴まる方が体を守るためには有効かもしれません。

地震が起こったら? 机の下に潜るよりも、ポールに掴まる方が安全

やみくもに、以前聞いたことをそのまま鵜呑みにして行動するのではなく、自分の環境や生活に根ざした防災行動をとることが、いま求められています。

・防災の知見は進化していかないといけない
たとえば、以前「地震の際にはトイレが一番安全な避難場所」という間違った情報が流布していました。トイレという狭い面積には柱が4本あるからトイレに逃げ込めば安全という話が由来のようです。関東大震災ではまだ一般の住宅はほとんどが平屋でした。このときに、たまたまトイレで助かったという事例があったのかもしれません。

マンション防災対策の勘違い—地震の時にトイレは安全な場所!?

しかし関東大震災のときに命が助かった防災行動があったからといって、それがそのまま、いまの社会にふさわしい防災行動であるとは限りません。

関東大震災は、台風一過の強風と地震という複合災害

過去の災害から学ぶことはとても重要ですが、時代を反映した防災対策が求められます。
いまは情報が溢れています。受け身になるのではなく、自分から積極的に防災情報を探しましょう。
そして昔の常識や固定観念にとらわれず、よい意味でその効果を疑いながら、常に最新の防災情報にアップデートするようにしましょう。

Q.高齢者世帯の備えは、どうしたらいい?

高齢になってくると、どのような防災の備えが必要でしょうか? 災害が起こったら、高齢の自分たちだけでは不安がいっぱいです。

家具固定はできていますか?

A.高齢者のための防災を考えましょう

高齢になると、思うように体が動かないこともあるでしょう。素早く動けないことを想定して徹底的に、室内の安全対策を行いましょう。
家具を極力減らし、ドア付近や寝室には置かず、家具が倒れてこないように固定をして、室内の安全を確保します。子どもが自立して空いている部屋があったら迷わずタンス部屋にして家具をまとめて置くようにしましょう。

・家具固定で部屋を安全にすることが大前提
もし部屋に閉じ込められたりしたら、蹴破り戸を蹴破る力がなかったり、助けを呼ぶための大声がでなかったりするかもしれません。防犯ブザーを用意して、できないことを補えるツールを準備しておく必要があります。また、持病の薬や老眼鏡なども予備を多めに用意しておくと安心です。

マンション防災対策の勘違い—突っ張り棒を使った正しい家具固定のやり方

・「賢く受援体制を築く」
ご自身でできる限りのリスク回避を行い、「賢く受援体制を築く」ことも考えてみてください。高齢のご夫婦や一人暮らしの方は、PCやSNSを活用できない場合も多く、災害情報が得られず、情報難民に陥りがちです。同じマンション内の高齢者の方々と互いに助け合う体制をとり、不安なときには同じ部屋に集まるなどの対策を、ふだんから考えておきましょう。

「災害時のマンションの安否確認名簿」作成のための書面サンプル

また同じ年代の方と交流するだけでなく、自治会活動などに積極的に参加して若い世代の方々と出会う機会を持つようにしてみましょう。人との交流が、いざというときに互いに役立ちます。


防災は人に聞くだけでは解決しません。
まず、それぞれの特性や状況を考えて、自分や自分たちで防災を考えて行動してください。調べて考えて、それでもわからないのであれば専門家に聞きましょう。その手前で、安易に答えだけを聞いても、困っていることのすべての答えを得られる訳ではありません。被災したらどうすればよいのかわからなくなって、結局は迷うことになるでしょう。大切なのは常に自分や自分たちで解決しようとする気持ちです。

構造・規模・立地、ひとつとして同じマンションはありません。
「災害時にどうしたらいいですか?」と聞くではなく、「どうしたらいいのか」を、まず自分や自分たちで考えてみましょう。マンションには、集住のメリットがあります。マンションの住民みんなで考えて、お互いに助けあえる方法を模索しましょう。

2019/04/09

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


株式会社危機管理教育研究所

一般社団法人危機管理教育研究所