災害時こそ、マンションの強みを活かして乗り越えよう! 〜共用部分の活用方法を考える〜

関西地方に大きな被害もたらした「平成30年台風第21号」、最大震度7を記録し北海道全域を停電させた「平成30年北海道胆振東部地震」と、昨年から大きな災害が続いています。
今後もさまざまな災害が想定されることから、今回、あらためてマンションの強みを活かした災害対策を考えてみたいと思います。

マンションの強み=「共用部分・施設」を災害時に活用することを考えよう!

大きな災害が発生した場合、耐震性の高いマンションの住民は、避難所ではなく、マンション内で避難生活を送ることが想定されています。そのため、各家庭での対策だけでなく、できればマンション全体での対策を講じておきたいですよね。そこで今回着目したのが、マンションの共用部分・施設です。マンションの規模によって広さや施設の有無も異なりますが、共用で使用できるスペースがあるのはマンションの強みと考えられるのでは。とはいえ、実際に活用できるのでしょうか?国崎先生にうかがいました。

国崎先生
たとえば充分な広さのあるエントランスホールは、災害対策本部、要介護者用や住民の一時避難場所、支援物資の受け渡し、住民の交流スペース、炊き出し、ペットの一時預かりなどのさまざまな用途に活用できます。
マンションの規模によって、共用施設の有無や数が変わってくると思いますので、ご自分のマンションの共用部分・施設をすべて書き出して、災害時には何に使うのか、実際にそのスペースは活用できるのかについて、事前に検討しておくのは災害対策として有効だと思います。

以下の記事でも、マンションの共用部分を避難所として活用する方法をご紹介しています。

熊本・大分地震に学ぶ!マンションの共用部分を避難所として活用するなら?

なるほど。共用部分や施設も、十分災害時に活用できそうです。ここからは、具体的な準備方法についてまとめていきましょう。

その1:被害ごとに、マンションでできる対策を考えてみる

まずはじめに、大地震が発生したら、マンションではどんな被害が発生するのか、そのためにどんな対策が必要かを、整理してみましょう。

1.ライフライン(電気・ガス・水道)の停止
地震で被災したマンションの事例集
【対策案】
・マンション住民同士で被害情報の共有(災害対策本部設置の必要性)
・自家発電設備の利用

2.エレベータ停止による高層階住民の帰宅困難
仙台で被災した32階建て高層マンションの事例
【対策案】
・エレベーター停止によって高層階の部屋に戻れない住民を収容する一時避難所の必要性
・停止した際にとるべき行動の周知徹底

3.飲食物の不足
マンション内被災生活で乗り越えた仙台のマンション
【対策案】
・マンション住民による炊き出し
・支援物資や飲料水の配布
・貯水槽の活用

4.トイレの不足
災害用トイレの備蓄量
【対策案】
・災害用トイレの使用

5.災害ごみ
熊本地震の災害ごみ問題
【対策案】
・マンションごみ置き場の管理
・各戸ごみの一時保管
・衛生管理や消臭対策

6.災害ストレス
長期化した災害による精神的な負担など。
車中泊の注意点
【対策案】
・マンション住民同士で相談できる場の提供
・車中泊住民がいれば健康被害への注意

こうして被害と対策を考えて整理してみると、準備すべき対策がより明確になってきますね。
では、その対策をどんな共用施設・設備を使って行えそうか考えてみましょう。

その2:マンションの共用部分・施設を使って、どんな対策ができるかを具体的に考えてみる

国崎先生とマンション・ラボ編集部のメンバーで、災害時に共用部分・共用施設を活用するアイデアを考えて、ホワイトボードに書き出してみました。

国崎先生
「まず災害時にどんな場面があって、どのくらいのスペースが必要になってくるかのイメージがわかっていると、自分のマンションだったらこの共用部分・共用施設を活用できる!ということがわかってくると思います。先に挙げた想定被害とその対策例を踏まえて、マンション内被災生活を過ごす場合に、どんなシーンや場所が必要かを考えてみましょう」

災害時に想定される対策や状況

□災害対策本部の設置(作業のための長テーブルが置けるスペースが必要)
□要支援者(高齢者、子どもなど)の一時待機場所
□住民の一時避難場所(高層階の住民がエレベータ停止や揺れのために部屋にいられない場合)
□備蓄物資の受け渡し(マンション内の備蓄物資の受け渡し)
□相談窓口
□災害情報の伝達・交換(掲示板活用)
□住民同士の交流の場
□炊き出し(カセットコンロや非常用電源が使える場所)
□ペットの一時避難(ペットと飼い主さんが一時避難できるための、屋根付きの場所)
□一時預かりスペース(公的な支援物資の一時預かり場所)
□災害用トイレの設置場所(下水道が被災して使えない場合、
□外部:帰宅困難者の一時受け入れスペース
□外部:地域住民の一時避難場所としての公開(津波などの避難ビルとしての活用)

次に、上記の対策に活用できるマンションの共用部分・共用施設をピックアップしてみましょう。マンションの規模によって、共用部分・共用施設の有無や数は異なりますから、自分のマンションの共用施設や設備の種類や広さなどを把握しておくといいですね。

災害時に活用できそうなマンションの共用部分・施設リスト

□エントランスホール
□駐輪場
□駐車場
□公開空地
□ゲストルーム(和室)
□ゲストルーム(洋室)
□ラウンジ
□集会室
□植栽スペース
□共用トイレ
□非常階段
□キッチンスタジオ
□その他共用施設(フィットネスルーム、シアタールーム、カラオケルーム、ライブラリー、自習室など

このように「災害時に想定される対策や状況」と「災害時に活用できそうな共用設備・施設」を整理してみることで、活用方法がより具体化してきました。
さらに使いやすくするために、「必要な場面」に応じた「活用できる設備・施設」を組み合わせて整理する「災害時に活用したい共用施設・設備リスト」をつくってみたいと思います。

災害時に活用したい共用施設・設備リストをつくる

さっそく災害時の活用シーン/必要な理由/利用できる共用部分・共用施設を記載してみました。

【災害時に活用したい共用施設・設備リスト】災害時に必要なシーンに、ご自分のマンションの共用部分で使える場所を検討して書き出すためのリスト(テンプレート)です。

【記入例】150戸のマンションの記入事例。24階の最上階にラウンジがありますが、エレベータが停止した場合には使えません。地震災害の場合には使用しないことにしました。

【災害時に活用したい共用施設・設備リストの活用メリット】

・被災時、すぐ行動できる
あらかじめ共用部分・共用施設の災害時活用方法を定めておくことで、すぐに救助活動へ移れます。

・防災訓練に活用できる
災害時に共用部分・共用施設をどのように活用するのか、このリストを記入するためにみんなで考えること自体も防災訓練にもなります。これを活用し、ぜひ共用部分の活用方法を考えてください。

共用部分・共用施設にファースト・ミッション・ボックスの導入を!

危機管理教育研究所 国崎信江と長野県飯田市が考案した『ファーストミッションボックス』は、テレビなどでも取り上げられて、普及しつつあります。

国崎先生
「災害時に活用したい共用施設・設備リストで災害時に各共用部分をどのように活用するのかをあらかじめ決めたら、次にはそこに集まった誰でもが必要な防災行動をとれる『ファーストミッションボックス(※)』を設置しておけばいかがでしょう?
たとえば、ゲストルームを要支援者の一時避難場所に活用するなら、そこに必要なモノがどこにあって、どう行動すればいいのかという簡単な指示書を書いた紙を『ファーストミッションボックス』の箱に入れておきます。マニュアルや指示いらずで、災害時に共用部分が活用できます」

※『ファーストミッションボックス』とは?

最初(First)に集まった人達が、迅速かつ適確な初動対応が行えるように、やるべき任務(Mission)を記載した指示書(カード)と、最低限必要となる事務用品を一つの箱(Box)にまとめたもの。
発災時、誰もが合理的に防災行動ができる!ファーストミッションボックスⓇとは?
FIRST MISSION BOX ※外部サイト

マンション共用部分での『ファーストミッションボックス』活用例

<マンションのエントランスホールに災害対策本部を設置する場合>
・エントランスホールの片隅に『ファーストミッションボックス』を設置する。
・『ファーストミッションボックス』の作り方

・発災直後から時系列に、概ね15分〜30分以内に行うべき3〜4つの行動を絞り込んで、そのミッションを指示書にまとめる。
例)ミッション①非常用の灯りを点ける 
  ミッション②ホワイトボードと長机を設置する 
  ミッション③被害状況の書き出し 
  ミッション④その場にいる人で役割を決める

・A4コピー紙1枚に1つのミッションを記載。ミッション番号、タイトル(10文字程度以内)、方法(簡潔に)、活動内容が分かるイラストを記入し、ラミネートフィルムでカバーする。
・できあがったミッションシートは、A4版書類が入る大きさの書類箱(これがファーストミッションボックスとなります)に入れて、エントランスホールの目立つ場所に置く。ミッションボックスの中には、他にコピー用紙、ふせん、マジックペン、活動拠点の間取り図、輪ゴム(書類箱をとめる太さのもの)など、すぐ必要になりそうな物を入れておく。

『ファーストミッションボックス』は、訓練をしていなくてもその場に居合わせた住民がすぐに行動できるものですが、できれば事前に住民同士で訓練を行い、ミッションに何が必要で何が不足しているのかを考えるワークショップを設けてみても良さそうですね。

共用部分・共用施設は、マンション住民みんなのもの。被災時にも効果的に活用できれば、みんなで協力してマンション内被災生活を乗り切れそうです。


マンションの規模によって、活用できる共用部分の数や状況は変わってきます。たとえば、共用部分がほとんどないという都会の小規模マンションの場合には、同じ地域の他のマンション、町内会、企業などと連携することも必要になってくるはずです。
ぜひご自分たちのマンションの状況に合わせた、共用部分・共用施設の活用を検討してみてください。

2019/02/01