居住者に聞いた高層マンションのメリット・デメリット ~防災・防犯・コミュニティ~

●高層マンション_フリー

都心で人気の絶えない高層マンション。ラグジュアリー感が溢れるプレゼンテーションがされるモデルルームやマンションキャラリーでは、1億円以上の物件も瞬く間に完売していくとか。とは言っても、高層マンションもメリットやデメリットはありそう!?
そこを探りに、実際に高層マンションに住んでいる方に、災害発生時のことやマンションコミュニティの様子などを含め、気になる実情をうかがってみました。

取材者・住環境紹介

▼H.Tさん(第二子出産後で育休中)
家族構成:本人(37歳)・夫(45歳)・長男(2歳)・長女(6か月)
居住年数:3年(夫8年)
マンション情報
所在地:神奈川県 港を望める高層マンション
築年月:2008年2月
構造:地上30階・地下1階建。免震構造。
全体戸数:300戸
居室面積:57.2平米
間取り:2LDK
居住階数:19階

高層だからこその不便さは?

「これって、居住用なの!?」――戸建て住まいのHさんは、夫の暮らす今のマンションに、初めて訪れた時、近代的なエントランスのセキュリティに驚きを隠せなかったそうです。結婚後住み始めるとその設備にも徐々に慣れ、「高層」であることも気にならなくなりました。

まるで自動改札のようなエントランスセキュリティー。訪問者にはセキュリティカードが発行され、エレベーターではカードをかざしてからでないとボタンが押せません。

まるで自動改札のようなエントランスセキュリティー。訪問者にはセキュリティカードが発行され、エレベーターではカードをかざしてからでないとボタンが押せません。

港を見渡せる19階の居住は、2人の子育ての日々で不便さはないのでしょうか?Hさん家族がエレベーターを利用するのは、日に4回ほど。夫が出勤と合わせ長男を保育園へ送る8時過ぎ。近隣の高層マンションで行われる自主英語サークルへ長女と向かう10時と、長男の保育園にお迎えの16時半。そして、夫の帰宅の17時半ごろ。他の人と重なりやすい時間ですが、エレベーターは3基あるので特にラッシュもなく不便さはありません。

洗濯は毎日21時頃にしますが、騒音問題はないようです。ただ、不便なのが洗濯物を外に干せないこと。危機回避と景観重視の点から、ベランダへの物干しはご法度! 夫婦2人のころはしなかった「日干し」ですが、子どもが生まれると気になり、手すりより低い位置に洗濯物干したところ、管理人室から忠告が来たほどです。

管理人室からのお知らせや訪問者とのやりとりなど、このインターホンですべて管理しています。

管理人室からのお知らせや訪問者とのやりとりなど、このインターホンですべて管理しています。

これぞ高層マンションの良さ! 管理人室とコンシェルジュ

高層マンションに特徴的なのが、「管理人室」や「コンシェルジュ」の存在。
Hさんのマンション管理人室では、小さな苦情の対応をはじめ、マンション全体の運営管理を対応しています。以前、居住フロアで「壁伝いでの騒音に対する苦情」が出た際は、管理人室からインターホンにメールが届きました。マンションの構造上、上下の物音や横の騒音については比較的防止ができます。「壁側の物音については防止しきれない部分なのでご注意ください」と、詳しい説明もインターホン越しに聞けました。

管理人室では、他にマンション主催のイベント管理もしています。マンション居住者が主催、または参加するものであれば使用ができるので、外部講師を招いたヨガやファイナンシャルプラン・健康診断などの講座が開催されています。

Hさんは、近隣マンションに住む友達同士でマンションイベントを共有し、興味のある講座によく参加しています。長男を妊娠したころは、高層マンションでのママ友関係に、メディアで取り上げられるような「ヒエラルキー」があるのではと緊張していました。しかし、子どもを連れて行ってみると気の合うママ友も見つかり、気負いなく子育てができているようです。

マンション敷地内にあるコミュニティスペースには、ホールやサロンがあり、定期講座やイベントで居住者同士のコミュニティづくりに役立っています。

マンション敷地内にあるコミュニティスペースには、ホールやサロンがあり、定期講座やイベントで居住者同士のコミュニティづくりに役立っています。

コンシェルジュサービスでは、電球の販売・取り替えサービス、粗大ごみ廃棄のサポートサービスやゲストルーム・ラウンジの予約管理などを対応。ゲストルームは一泊3,000円で、ツインベッド・お風呂・トイレを備えています。リネンの用意はありませんが、1,000円のオプション料金でシーツ・布団セットが借りられます。

気になる防災面は?

魅力的な部分が多い高層マンションですが、やはり気になるのが防災面。東日本大震災時の部屋の状況は、Hさんの夫の話によると、ショットグラスなどの小さい壊れ物をたくさん飾っていましたが、一つも落ちてこなかったそうです。

Hさんのマンションは、このエリアでは唯一の「免震構造」。この構造は下にプレートが入っていているため、遠心力で揺れが吸収・分散され、物が落ちにくいのです。ただ、大きな揺れはないものの、地震が収まってもしばらくはゆったりと動く感覚が残ります。また、サブ電源が確保されているので地震直後からエレベーターも動き、オール電化の生活でも支障はありませんでした。

防災体制としては、年度ごとに「フロア長」が立候補または輪番で決定。フロア長を筆頭に避難訓練があります。訓練は全員参加ではなく、Hさんも1回参加したのみです。万が一のために点呼できるよう、フロアごとに住民の個人情報を密封した封筒に入れ、ゴミステーションに保管しています(個人情報の掲載については任意)。これらのルールは管理組合からアンケートで決まっていきます。
備蓄品については各世帯での自己管理が基本ですが、Hさんは収納スペースが少ないので、家族全員分の一週間分の食糧などは用意できないでいます。

ゴミステーションにはセキュリティカードがないと入れません、また、監視カメラもついているので、防犯対策にもなっています。

ゴミステーションにはセキュリティカードがないと入れません、また、監視カメラもついているので、防犯対策にもなっています。

いくつかの便利なサポートのある「マンション管理費」は、2016年7月現在32,000円。入居当初は28,000円だったので、約8年で4,000円の上昇。今後の大規模修繕など考えると、マンションとしても削れない部分のようです。また、埋め立て地にできたマンションなので、震災時の液状化などは気になるところ。Hさんは「今更なんともできないから」と、心配はしつつも対応できず潜在課題のようです。


高層マンション暮らしは、思ったより毎日の生活に不便さはなく環境も良さそうです。
「眼下に見えるきれいな夜景」が得られるマンションライフが、どんなものか少し見えてきたものの、やはり金銭的なハードルは高そうです。
地上に近いマンションに、納得してしまうのが現実……だったりもします。

(文・写真:Loco共感編集部 衣笠可奈子)

2016/09/05