震災によるマンション被害を知る【宮城県マンション管理士会調査レポート】

2.東日本大震災による仙台市のマンション被災、地震保険と修繕費用について

大震災で被害を受けた仙台市の分譲マンションにて、宮城県マンション管理士会では復旧工事の費用、地震保険の適用状況についても調査。マンションよって、大きく状況が異なることがわかりました。

受水槽の破損/仙台市太白区Nマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

受水槽の破損/ 仙台市太白区Nマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

設備関係の復旧工事の事例

給水設備の復旧工事
  • 受水槽の損壊、給排水管からの水漏れ。
  • 受水槽の取り替え、加圧給水システムの変更、給排水管工事の実施を決定。
    地震保険未加入、「一部損壊」認定のため住宅応急修理制度が使えず、修繕積立金だけでは4000万円の資金不足となったが、住宅金融支援機構からの借入および修繕積立金の値上げで対応。
エレベータ設備の対応
  • エレベータ設置場所の内壁コンクリートが剥離し、利用できなくなる。
  • エレベータが仮復旧までに約1ヶ月を要した。
タワー式立体駐車場の復旧工事
  • タワー式立体駐車場のパレットと車輌数台が落下。
  • 立体駐車場の損害保険では、災害による被害は免責特約で適用外。
  • 修繕積立金から修理費を捻出。(1戸あたり約100万円の支出)車の修理費も含め200万円近くの出費となる居住者もあった。

震災後1年で、復旧工事を完了した被災マンションは約3割

壁のせん断亀裂/仙台市太白区 Cマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

壁のせん断亀裂/仙台市太白区 Cマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

仙台市の被災マンションの復旧は、被災から1年経ってもなかなか進まない現状でした。これは、資材や作業員不足といった状況のほか、資金調整が困難、住民の合意がとれない、次期大規模修繕工事と調整するなど、さまざまな事情が背景にあります。

地震保険に加入していた管理組合は3/4、約9割が保険金を受領

復旧工事の遅れの大きな原因のひとつに、工事費の資金調達問題があります。
地震保険はおよそ3/4の管理組合が加入しており、そのうち約9割が保険金を受領することはできました。ただし損害判定によって、受領できる保険金額には約10倍もの大きな差がありました(※1)。

復旧工事費用の資金調達方法(※1)
1 修繕積立金 (126)
2 地震保険金 (116)
3 応急修理制度の利用 (21)
4 融資制度の利用 (12)
5 一時金の徴収 (11)

※1仙台市「仙台圏での復旧状況に関するアンケート調査(平成23年6月21日~8月31日実施)」マンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎ(外部リンク)

多くのマンションは、保険金の他に修繕積立金を復旧工事費に充てました。しかしすでに大規模修繕工事を終えたばかりのマンションでは、修繕積立金の残金も乏しく、逆に新築数年後のマンションでは修繕積立金がまだそう貯まっておらず、新たな資金調達が必要となります。

また住宅応急修理制度(※2)では、当初は共用部分の修繕に対して認められなかったため、給水設備の破損など早急な応急修理が必要だったものの制度が活用できなかったケースもありました。(その後平成23年8月に共用部分の修繕への住宅応急修理制度の活用が認められました)

※2住宅の応急修理制度について
災害救助法に基づいた、住宅の修理への支援制度。東日本大震災の際「災害救助法の住宅の応急修理について(平成 23 年6月 30 日)」の通知により、住宅の応急修理制度の対象の拡大方針が示され、区分所有マンションの共用部分へも適用が可能となった。

仙台市では、平成23年8月8月に「住宅の応急修理制度 における区分所有マンション共用部分への適用」について、具体的な対象範囲や申込み方法などを公表。対象は、半壊・大規模半壊・全壊とし、最大52万円までの補修費を現物支給(修理業者への支払い)。

宮城県マンション管理士会が行った聞き取り調査でも、地震保険と修繕積立金の併用という回答が多数でした。なお、被害状況や積立金残高によっては、融資や区分所有者が負担する一時金で調達したマンションも見受けられました。

地震保険は、共有財産であるマンションを守るために必要

実例からも、地震保険の加入が重要であることがわかります。また、マンションの防災では災害時に被害を最小限に抑えるとともに、被災後の修繕費用についてもある程度の見通しを立てて置く必要があります。

さらに宮城県マンション管理士会では「復旧工事後は、その後の長期修繕計画の見直しも必要となってくるはず」と示唆します。復旧のみならず、次に災害が起こったときにも耐えうる補修を行っておく必要があります。

仙台市の被災マンションの復旧状況は、都市部のマンションが被災した場合に当てはまります。仙台市の被災マンションの教訓に学び、復旧という観点からの対策が必要といえます。

2015/11/06