震災によるマンション被害を知る【宮城県マンション管理士会調査レポート】

1.東日本大震災による、仙台市分譲マンションの被害とは

ベランダ部のせん断亀裂/仙台市泉区・Rマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

ベランダ部のせん断亀裂/仙台市泉区・Rマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

東日本大震災による仙台市内の分譲マンションの被害状況は、取り壊しを進めざるを得ないマンションが5棟、仙台市のり災証明における「全壊」判定が推定100棟以上というものでした。

構造の他にも、貯水槽の破損やエレベータの損壊といった生活に影響を及ぼす被害が発生しました。

宮城県マンション管理士会では、発災直後から仙台市内のマンションの被害状況の調査を開始。マンション管理士を無料派遣するなどの支援を行うとともに、その後の被災マンションの復旧にいたるまで、支援を継続しているそうです。

冊子「震災とマンション」と「震災とマンションⅡ」

冊子「震災とマンション」と「震災とマンションⅡ」

その後、被災マンションに関わる詳細な記録を収めた冊子「震災とマンション」(平成23年11月10日)、「震災とマンションⅡ」(平成25年1月11日)を発行。

マンションの被災状況、行政の対応、復旧の状況、問題点などを詳細にまとめ上げ、マンションが被災するとどんな課題が起こりうるのかということを教訓として教えてくれる貴重な資料です。

今回はその冊子で紹介されているマンションの被災状況と、復旧の問題点などについて、宮城県マンション管理士会の皆様にお伺いしました。

写真左から宮城県マンション管理士会の理事 浅野豊明さん、会長 高橋悦子さん、理事 濱田賁弘さん

写真左から宮城県マンション管理士会の理事 浅野豊明さん、会長 高橋悦子さん、理事 濱田賁弘さん

宮城県マンション管理士会HP一般社団法人 宮城県マンション管理士会マンション管理・運営の相談に対して専門家の立場からアドバイス・支援。

URL:
http://www.miyagimk.com(外部リンク)

防災支援活動:
冊子「分譲マンション防災マニュアル作成ガイドライン」をPDFで公開中。

東日本大震災 仙台市のマンションの災害状況はさまざま

冊子「震災とマンション」より、いくつかの被災状況をご紹介します。

せん断亀裂
入口部のせん断亀裂/仙台市泉区・Rマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

入口部のせん断亀裂/仙台市泉区・Rマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

仙台市内でも、地区によってマンションの被害程度に差がありました。これには、地盤などさまざまな要因が考えられます。

ほとんどのマンションでは、柱や梁などの構造部に多少のひび割れや欠けが発生した程度でしたが、ベランダや開放型廊下の壁などの非耐力壁のせん断亀裂が見られました。

ドアの破損・変形
ドア破損・変形/仙台市若林区・SAマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

ドア破損・変形/仙台市若林区・SAマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

各戸の玄関ドアの破損や変形は、生活に大きな支障をきたします。以前のレポート事例「仙台市 シャンボール第2荒町」様でも、玄関ドアの開閉が出来なくなった住戸をバールでこじあけて、居住者を避難誘導した経験が紹介されていました。

受水槽の破損
受水槽の破損/仙台市宮城野区Sマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

受水槽の破損/仙台市宮城野区Sマンション SRC構造(写真提供:宮城県マンション管理士会)

マンションにおける受水槽の破損は、その後のライフラインの復旧に大きく影響を及ぼしました。中には、受水槽が使えないため1ヶ月も居住者が水汲みをしたマンションもあったそうです。

ほかに、エレベータシャフトの破損、機械式駐車場設備の破損、消火水槽の破損による漏水など、設備関係の被害によって生活に支障をきたしたマンションがありました。

マンションが倒壊するなどの構造自体の被害は少なかった一方、設備などが破損し生活に大きな影響が出ていました。

被害状況を調査した宮城県マンション管理士会では、今後は、建物の倒壊や大破以外の観点から、日常生活面での被災認定の統一ルールが必要なのではないかと指摘しています。

浅野さん「被災判定も、今回の多くの被災マンションのように、外壁、設備、建具の損傷状況にいたるまでを被災要素とするよう、り災証明の認定基準を統一することが必要なのではないでしょうか。マンション居住者にとって、生活に密接に関係する設備の被害について、よりきめ細かく被災認定してもらえることが、被災者の実情に立った支援になるにちがいありません」

被災マンションの修繕依頼

被害の大きな部分に関しては、売り主や施工会社に依頼して緊急対応を施しました。また、中小規模の被害に関しては、大規模修繕工事を行った施工会社に直接依頼するケースもありました。

高橋さん「マンションの防災マニュアルの整備をお手伝いしていますが、マニュアルの最後に必ず、管理会社、エレベータ会社、施工会社などの関連会社の連絡先をまとめて記載するようにアドバイスしています」

被災後、建物や設備の修繕工事が至急必要になったときに、防災マニュアルの連絡先一覧を確認すればいいというのは、スピーディーな復旧につながります。

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2015/11/06