第2話:「電話がつながらない?!」家族の安否不明にふくらむ不安

ある日、仕事で訪れていた展示会場で突然の大地震に遭遇!揺れが収まり、家族の無事を確かめようと電話するも全くつながらない。不安と焦燥にかられながら、ふと視線をあげると、その先に黒煙が立ちのぼっていた。

マンション地震防災奮闘記この物語は、とあるマンションの新米防災担当者・伊東が、「最高の防災力を備えるマンションをつくる」という目的に向かって邁進していく姿を描いたフィクションストーリーである。

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つながらない電話

携帯電話イメージphoto © Paylessimages – Fotolia.com

どれくらい経っただろうか。数十分にも感じられた揺れは、徐々に収まりつつあった。

「なんとか収まってきたね」と伊東は栗山に同意を求めた。

「でもなんだか体がフラフラしてるよ。思いっきり揺れてたからなぁ。」栗山も半ば脱力しながら応じる。

2人は互いの無事を確認すると、張り詰めていた気持ちが解き放たれたのか、フーーーッと大きなため息を吐いた。周囲も冷静さを取り戻しつつあり、みな携帯電話で家族や会社に連絡を取り始めていた。伊東も栗山も、急ぎ家族に連絡を試みた。伊東は都内のマンションで、妻、娘とともに暮らしている。幸い妻はたまたま休暇で自宅にいると思い出し、そっと胸をなで下ろしたものの、保育園に預けている娘がひどく気がかりだった。祈る気持ちで電話口の向こうの反応を待つ。しかし電話は一向につながらない。

「!? なんでだよっっ!」

何度かけ直しても電話がつながらない。焦れば焦るほどいらつき、携帯の番号を押す指にも必要以上に力が入る。隣の栗山もつながらないらしい。

「まじかよ~」栗山の力ない声は、何度も電話に裏切られた証だった。

「全然ダメだね。。」

「たぶん一斉に電話してるからつながらないんだよ。大丈夫かなぁ、うちの娘の小学校ボロいから、すげぇ心配だよ…」栗山も都内のマンションに住み、妻と娘2人の4人家族で暮らしている。

「そっか。。うちも全然連絡つかないし、保育園がどうなってるのか、まじで心配だよ。いつつながるんだろう…」揺れのショックに加え、家族の安否がわからない状況は2人により一層の疲労と焦燥を感じさせた。それでも繰り返し電話をかけ直し、何とか連絡をとろうと試みるさなか、ふと伊東が視線を空に向けると、もうもうと黒煙が上がっていた。

「か、火事!?」

「まじ?」

「あれ、あそこ!」

「ゲッ、あれ展示会場じゃ?」

辺りの来場者も立ち上る黒煙に気づいたのか、ざわめきたっている。

「こんな大事になってるなんて..まさかこれが首都直下地震?」伊東の脳裏に、15年前にテレビで見た、あの阪神淡路大震災の悲惨な光景が浮かんだ。

とにかくここにいても仕方がない。大きな余震で再びパニックになることも考えられる。伊東と栗山は、とりあえず広いロータリーのある、展示会場にほど近いK駅まで歩くことにした。歩きながらみる黒煙は、次第にその量を増しているように見えた。パニック映画で観た災いが、今現実として自分たちの身に降りかかっている。現実なのか夢なのか、まだ区別のつかないまま歩く2人の口数も少なくなっていた。

第3話へ続く>

※写真はイメージです

2011/08/12