小笠原西方沖巨大地震でのエレベーター停止問題を冷静に検証!

2015年5月30日夜に起こった地震により、都心のビルやマンションのエレベーターが停止しました。しかし問題は、ニュースなどで騒がれているように停止した台数の多さではなく、閉じ込め件数やその後の対応です。

エレベーターの閉じ込め件数は、14件

2015年5月30日夜、小笠原諸島西方沖で発生したマグニチュード8.1・最大震度5強の深発地震は、日本全土を揺るがしました。特に首都圏では、ビルやマンションのエレベーター1万9千台が停止。国土交通省のその後のまとめによると、そのうち利用者がエレベーターに閉じ込められた件数は約1万9千台。そのうち閉じ込めが起こったのは14件とのことでした。

約1万9千台が停止したうち、閉じ込め件数は14件のみというのは、エレベーターの安全装置がしっかり機能したということです。最寄り階に停止すれば閉じ込め防止として役立ったといえます。

閉じ込めが起きた14件では、通報から救出までに30分超を要したエレベーターが5台、うち1台は約70分掛かったということでした。しかし問題は、エレベーターが停止した場合の対応にあります。

今回の地震では他に大きな被害がなかったために、1時間ほどで復旧しましたが、もし道路の陥没や建物の破損が起こっていたら、エレベーターの復旧にはもっと時間がかかっていたにちがいありません。

また、非常用エレベーターを使って高層階から人を降ろしたビルもありましたが、大きな余震が起こるかもしれない場合、非常用エレベーターを使うことには、疑問が残ります。

マンションのエレベーターの防災対策を今一度考えましょう

今回の地震を受けて、お住まいのマンションのエレベーターについて以下の点を確認してください。

・緊急停止機能や自動運転復旧機能の確認

最近のエレベーターには揺れを感知したら最寄り階に停止する機能が義務づけられています。また、閉じ込め防止のために自動運転復旧機能が備わっているエレベーターもあります。

お住まいのマンションのエレベーターに、自動停止機能があるのかどうか、自動復旧機能があるのかどうか、エレベーターの保守会社に問い合わせて知っておくことも必要です。

・今回の地震による被害全般の確認のためにアンケート実施を!

以前マンションで防災のお話をさせていただいた際に、ある女性が「実は東日本大震災の際にエレベーターに閉じ込められて自力で脱出した」という話をされて、まったくそのことを知らなかったマンション住民が驚いたというケースがありました。幸いご自分でエレベーターの扉を開けて避難されましたが、災害時の事故は、マンション全体で共有しなければ、次の災害の教訓や改善につながりません。

地震の後の状況を居住者全員で共有するために、マンションでアンケートを取ることが重要です。

今回の小笠原西方沖巨大地震では、

・お住まいのマンションのエレベーターは緊急停止したのか?
・何分くらい停まっていたのか?
・発生時にエレベーターに乗っていた人はいたのか?
・室内ではどのような被害があったのか?
・階数毎に被害の違いはどのようなものだったのか?

事後であってもこれらの状況をしっかり把握しましょう。
エレベーターだけに関わらず、室内でどんな被害が遭ったのか、住民の防災行動はどうだったのか、アンケートで確認すれば、今後の問題点があぶり出されてくるはずです。

・閉じ込めにあった場合の対応方法を学ぶ

首都直下地震などの場合、エレベーターに閉じ込められた人を助けるための救助隊はいつ来るかわかりません。住民で救助が出来る体制を整えておく必要があります。

エレベーターの保守会社で緊急時の「エレベーター救出訓練」を行っているところもあるので、こうした訓練について問い合わせて実施してみてはいかがでしょうか。

株式会社i-tech 24

今回の地震は、長周期地震動だったために、高層マンションや高層ビルに影響を及ぼしやすいものでした。我が国は、阪神淡路大震災以降、短周期地震動の地震対策ばかりを考えてきていました。長周期地震動への対応はまだまだ追いついていない部分も多くあります。
特に高層マンションは、長周期地震動の揺れに対しての初動対応や避難行動、心理的問題などについて考えるべき項目が数多くあります。

今後もこの問題については、一緒に考えていきたいと思います。


あなたのお住まいのマンションでは、地震発生時のエレベーターの運用について、防災ルールは定められていますか? この機会にしっかりと管理組合で話し合ってみてはいかがでしょうか?

2015/06/26

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


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