3.11被災マンションの防災対策に学ぶ、事前準備の大切さとコミュニティ力

仙台初の免震タワーマンションであるライオンズタワー仙台広瀬は、大規模災害に対応する防災マニュアル作成を進めている最中に、3.11の東日本大震災に遭遇した。

作成途中ではあったが、それまでの準備が被災時の対応に生かされたという。

その体験談を、管理組合法人の杉山丞理事長と高橋理事にお伺いした。

「ライオンズタワー仙台広瀬」のコミュニティ力

仙台市青葉区にあるライオンズタワー仙台広瀬は、高さ約99メートル・32階建て・404戸の超高層マンションで、仙台で初の免震マンションでもある。約1,000人の住民が暮らすこのマンションでは、防災マニュアルへの取り組み以前から、共用施設の温水プールから多目的スタジオへの変更計画や、居住者交流イベントの開催など、マンションをよくしていこうという積極的な試みが行われていた。このようにコミュニティの結束力を持ったマンションだったからこそ、災害時にうまく連携することができたのだといえる。ライオンズタワー仙台広瀬のコミュニティ力については、別記事で詳しくご説明したい。

3.11以前から独自に取り組んでいた防災マニュアルの存在

最近の耐震性に優れた高層マンションでは、管理組合や自治会による災害マニュアルづくりの動きが進んでいる。建物がダメージを受けなくても、ライフラインの停止により高層階の住民の孤立支援などの共助作業が必要となってくるからだ。

当時の状況を語る杉山理事長と高橋理事

杉山理事長は、「私たちのマンションでは、2010年の管理組合法人理事会定期総会で、防災マニュアルの作成を決定していました。高層マンションに防災マニュアルの作成を推奨している東京都中央区の防災マニュアルの視察、他の超高層マンションの事例視察、災害時に支援を必要とする高齢者の調査、住民アンケートの実施の他、自家発電や給水設備についても確認作業を進めていました」とマニュアル作成の経緯を語る。この時想定していたのは、宮城県沖地震における青葉区の想定震度5強〜6弱だったという。

そして、3.11はまさにその準備最中の出来事だった。

3.11地震発生! その時住民はどう動いた!?

震災を経た後に完成した「災害時対応マニュアル」には、3.11被災時の記録も記載されている。マンションのある青葉区では震度6弱だったそうだ。

2011年3月11日 ライオンズタワー仙台広瀬 東日本大震災の記録。ライオンズタワー仙台広瀬管理組合法人LT仙台広瀬自治会発行の「災害時対応マニュアル」には、3.11震災の際の状況記録が詳細に紹介されている。

震災翌日には自家発電で非常用エレベーター稼働に成功!

「免震構造のマンションでしたので、建物や室内の被害は少ないものでした。しかし24時間ほど停電は続き、エレベーターが止まったために高層階の自宅へ戻れなくなった方、足の不自由な高齢者の方や不安を覚えた方など20名ほどが、1階の共用施設で一夜過ごしていただくことになりました」と、杉山理事長・高橋理事は語る。

地震発生直後には、6機あるエレベーターがすべてストップした。

しかし防災マニュアルづくりの準備中に長時間稼働可能な自家発電設備があることを知っていたため、エレベーター会社と交渉して点検依頼し、自家発電で非常用エレベーターを間欠運転させることに成功した。超高層マンションにとってエレベーターは生活の命綱。震災翌日の17時までにはエレベーターを稼働させていたというから驚きだ。

地下の貯水槽には約200トンの水が備蓄

「ただ、自家発電で動くはずだった揚水ポンプがトラブルで動かなかったのは想定外でした。そのため水は、地下の受水槽まで取りに来て頂き、予め用意していた水タンクで配布しました。また、簡易トイレも各戸に配布することができましたが、使いやすいと大変好評でした。」

地下の貯水槽から水を汲み出し、水タンクで配布した。

翌日には1階で炊きだしを実施、今後の課題も浮き彫りに

1階の共用部に設置された災害対策本部で、水の配布や炊きだしなどの情報提供が行われた。

気になる共助活動はどのように機能したのだろうか?
「1階に災害対策本部を置いて、ホワイトボードを活用して情報提供や居住者による相互連絡などを行いました。翌日には、自治会で野菜を購入するとともに、各家庭に呼びかけて食材を持ち寄ってもらって、1階で豚汁とおにぎりの炊き出しもしました。ただ、エレベーターが動く前でしたので、階段を降りてこられる元気な方にしか提供できなかったのが反省点です。それもあって、翌日には自治会長と二人で高齢者のみの世帯を中心に戸別訪問して、必要とされる方には食材を配布したり、困っていることが無いか聞いて廻りました。震災後にはアンケートを充実させて、合鍵でドアを開けてでも安否確認して欲しい方のリストも作成しました。」

理事会で購入してきた野菜や、家庭から提供された食材で炊き出しを行った。

同じフロア・隣近所の身近なブロックが、防災の基本

杉山理事長・高橋理事は、災害弱者を出さないためには、隣近所の互助活動が大切だと強調する。
「震災時は、役員が安否確認や、高齢者宅への水・食材の提供などを行いましたが、同じフロアに住む人同士で安否確認や手助けを行うべきだと痛感しました。防災の基本は、隣近所の身近なブロックです。そこで震災後は、2フロアごとの懇親会を始め、隣近所同士の顔を覚えてもらって交流を促していますが、これが結構好評なので、恒例行事化していくつもりです」

「ライオンズタワー仙台広瀬」に学ぶ防災力とコミュニティ力

こうして東日本大震災体験を経てできあがった「災害時対応マニュアル」は、カラー8ページの全戸配布版と、役員や班長向けの詳細版の2種類。詳細版は、各階の非常コンセントボックスに設置されている他、防災センターや共用施設にも設置しているそうだ。

マニュアルは、地震発生直後〜1日目/2日目〜3日目/4日〜7日目/8日目以降の段階に応じた状況や行動指針を説明。災害時対応フローなどもその期間ごとにまとめている。この防災マニュアルで最も素晴らしいのは、まず自らの身を守る自助を第一に据え、その上で互助・共助を行うことを呼びかけている点だろう。自助と互助・共助は、防災の根底になくてはならないものだ。

杉山理事長は、防災マニュアルを作成しただけで満足していてはいけないと警告する。
「当たり前ですが、マニュアルは作成することよりも、それを運用することが大切です。いざという時に、それがうまく機能するためにも、住民同士の日頃の交流が欠かせません。防災のベースには、コミュニティの結束力が必要不可欠ですから」


ライオンズタワー仙台広瀬のような積極的な防災への取り組みが、すべてのマンションで確実に実施されていけば、日本は地震に強い防災都市へと進化していくことだろう。ライオンズタワー仙台広瀬の防災マニュアルの表紙に書かれた「地震に強い自立型高層住宅のために」という言葉が非常に重みを持って心に響く。

ライオンズタワー仙台広瀬のコミュニティへの取り組みの記事はこちら
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2012/10/22