マンションの防災力強化を行政が支援 ~大阪市役所・防災力強化マンション認定制度~

東日本大震災以降、首都直下地震の可能性も相まって、マンションの防災力を高める必要性が日に日に高まってきている一方、どのような対策を行えば総合的に防災力が高まるのか、わからない人も多いだろう。
そのような中、平成21年より、マンションの防災力を高める取り組みとして、防災力に関する項目を設定し、一定基準を満たすと「防災力強化マンション」として認定する制度を設けた大阪市役所の都市整備局浅野様をはじめとする方々に、制度の詳細について話をうかがった。

阪神淡路大震災の復興を教訓にした、マンションに特化した制度

認定されたマンションに配られるプレート

「大阪市防災力強化マンション認定制度」は、阪神淡路大震災の際、地域の連携にまとまりのある地域ほど復興が早かったという実績をもとに、大阪エリアで被害が想定されている南海地震、東南海地震、直下型地震(上町台地活断層)に備えて、災害に強いマンションを増やしていくため、平成21年に制定された制度だ。

大阪市マンション防災力認定制認定制度HP

制度の主な特長は、
・建物の安全性
一定の耐震性や耐火性を備えているか
・建物内部の安全性
家具転倒防止対策がなされているか
・避難時の安全性
住民や地域の人の避難時の安全が配慮されているか
・災害に対する備え
災害後3日間の生活維持に役立つ施設や物資が備えられているか
・防災アクションプラン
被害想定はどうなっているか、避難所はどこか、何を備蓄しているか、地域に貢献できることは何か、災害時の備えについてマンション、管理組合、各家庭においてどのように備えているか

というように、ハードとソフト両面の項目について、防災力が強化されたマンションを「防
災力強化マンション」として認定している点だ。2012年6月の時点で、新築マンション26物件が認定されている。

「ハード・ソフト両面からの備えが大切なんです」と語る浅野氏

制度化にあたっては、もともとあった「大阪市子育て安心マンション認定制度」と同様、認定制度の枠組みを活かし、同制度の制定にも関わった有識者の人たちにも協力を仰ぎつつ、災害後の3日間、どういった対策が必要なのか等について検討を行い、制度の枠組みが決定された。浅野氏が、認定制度の特長について補足してくれた。

この制度は、規制や指導ではなく、災害に強いマンションを増やす『誘導』をしていくことが目的です。おおまかにいうと、

・認定することでマンションの防災性に関する信頼性が高まる

・安全性の高いマンションを求め、購入者が増える(他のマンションとの差別化)

・購入者が増えれば、同様の認定マンションが増えてくる

・認定マンションが増えると、結果的に大阪市全体の防災のレベルを上げることができる。

チェックシートの見本

といったサイクルを生み出したいということです。

認定にあたっては、制度の項目のなかでも開発するマンションデベロッパーごとにできることや販売上の都合も異なるため、複数の基準から選択できるようにしています。また、マンション開発の段階からデベロッパーと、認定に向けての打合せも行うようにしています。柔軟に対応することで、開発者の認定への理解も深まりますし、災害に強いマンションも増やすことができるからです。

防災アクションプランの見本

さらに新築物件では比較的対応しやすいハード面での誘導とあわせて「アクションプラン」という、ソフトの部分を認定項目のひとつに定めたことも大きな特長です。これにより、ハード・ソフト両面から防災力が強化できると考えています。

認定制度のハードの部分については、既存マンションでは対応が難しい面もある。しかし、ソフトの部分である「防災アクションプラン」については、既存マンションでも参考になる部分があるだろう。どのような運用がなされているかを、浅野氏にうかがった。

-アクションプランはどのようにして守るべきものか?
「防災アクションプラン」は、管理規約に定めてもらうものです。そのため、原則すべての住戸に配付してもらいます。認定にあたっては、例えば「飲料水の確保」について、
・管理組合で全戸分の3日分の飲料水を保存する
・各家庭に3日間分の飲料水の備蓄を推奨する
のどちらか1つを遵守してもらうことにしています。

-認定されたあとの、防災力強化の継続についてはどのような対応を?
認定してから1年後の管理組合が機能しはじめるころに、維持管理状況の報告をしてもらうようにしています。それまでは、デベロッパーと管理会社で防災意識を高めるための取り組みを行ってもらっています。こちらから報告を求めた際に応じる維持管理責任者は、ほとんど管理組合から委託を受けた管理会社となっています。

-認定から数年後に、アクションプランが守られていない場合の対応は?
認定の取り消しも考えられます。今後は、継続して防災意識を高め自主的に防災対策に取り組めるように支援する必要もあると思いますが、現在は模索している状況です。

会議室でのひとコマ。ひとつひとつ疑問についてお答えいただいた。

既存マンションでの認定制度の可能性とは?

これまで紹介してきたように、この認定制度はこれまでのところ新築マンションのみとなっている。もちろん、これから認定基準を満たした新築マンションが増えるほど、地域の安全性が高まることは間違いない。しかし、すでに建っているマンションでできることはないのだろうか。

「既存マンションの方からもお問合せはあります。ただ、今の認定制度では、既存マンションはハード面での対応が難しいため、ソフト面(防災アクションプラン)を中心にアドバイスをなっています。認定制度のうち、「これとこれはできる」というように、できるところだけでも参考にして取り組んでいただければ幸いです。
また、今後は何らかの形で支援していかなければならない課題だと考えています。」

浅野氏からうかがったように、すべて合致はせずとも、ソフトの部分で参考になることは多いはずだ。これから防災対策を検討するマンションだけでなく、すでに対策を終えたマンションでも、敬遠せずにできるところだけでも参考にして防災力を強化してもらいたい。


「大阪市防災力強化マンション認定制度」に関する御問い合わせはこちら
大阪市都市整備局企画部住宅政策課
TEL:06-6208-9649

2012/06/18