マンションの帰り道でひったくりに遭ったら? 事例に学ぶ防犯対策

今回は、マンションの帰り道でひったくりに遭った事件を紹介します。起こってほしくない事件ですが、ひったくりに遭遇した場合の対処方法や未然に防ぐ方法についてアドバイスいたします。

実際に起こった事件に学ぶ、ひったくり対策

今回は、昨年12月に知人の20代の女性が遭遇したひったくり事件を例にして、その対処方法について考えてみます。

ひったくり現場の見取り図

20代女性Aさんが被害に遭ったひったくり事件の詳細

2014年12月中旬の金曜日夜9時半頃、最寄り駅から徒歩12〜13分の自宅マンションまでの帰り道でひったくりに遭い、持っていたバッグを盗まれました。ガードレールのない車道で、角のコンビニからマンションまでは、防犯カメラも設置されていない暗い住宅街です。

後ろからやってきたバイクを運転していた男に、右手で提げていたバッグを掴まれたとき、私は思わず大きな声で「持っていかないで!」と叫びましたが、そのまま持ち去られてしまいました。少し前を歩いていた男性が気付いて、こちらへ助けに来てくれましたが、バイクは逃げ去っていきました。

ちょうど駅から親に電話をしていたので、犬の散歩がてら迎えに出てきてくれていた親と出会う、ほんの30秒ほど前の出来事でした。ひったくりが多いという噂は聞いていましたが、まさか自分の身に起こることだとは夢にも思わず、ショックを受けました。

携帯はコートのポケットに入っていましたが、お財布や会社の携帯、家の鍵や身分証明書はすべてバッグの中。すぐさま銀行やクレジットカード会社を差し止めたり、家の鍵を変えたりしました。

その後、日曜日に警察から犯人が自首してきたという知らせがありました。犯人は、30代の男性で家族に付き添われて自首してきたそうです。けれど、いまでもバイクの音が迫ってくるとあのときの恐怖がよみがえってきます。

万一ひったくりに遭ってしまったら〜対処方法

大変な目に遭われましたが、不幸中の幸いは怪我がなかったことです。抵抗して、バッグごとバイクに引きずられたり転倒したりすることがなくて本当によかったです。

皆さんに覚えていてほしいのは、以下のことです。もし路上でひったくりに遭ったら

・大声を出す(または防犯ベルを鳴らす)
・無理に犯人を追いかけない
・近隣の家や人に助けを求める
・警察に連絡する
・犯人の車やバイクの特長(ヘルメットの有無、ナンバー、車体の種類・形・色)を覚える
・犯人の衣服の特長(上着、手袋など)
・犯人の同乗者の有無
・逃走方向
・犯行時間

ただ、事件に遭った瞬間にとっさにこうした行動をとれる人は少ないはずです。ふだんから「ひったくりに遭う可能性がある」と考えて、上記のような対応を頭に入れておいていただきたいと思います。
この方はとっさに「人生で一番大きい声を出した」とおっしゃっていましたが、驚いてしまって声も出せない女性もいらっしゃいます。そんな場合に備えて防犯ブザーなどを持ち歩きたいものです。

警察に通報したあとの行動

・銀行、クレジットカード会社、携帯電話会社などにすぐ連絡して停止する
・免許証の再発行手続き
・家の鍵の取り替え

こうした連絡がすぐにできるように、防災でも役立つ貴重品リストを2通作成して、携帯と自宅に置いておくことをおすすめします。

万が一の時に役立つ「サバイバル・カード」と「貴重品リスト」

※家財リストや貴重品リストを作成する際には、氏名(漢字・アルファベット表記)、住所、電話番号、生年月日など、個人を特定する情報は記載しないように注意してください。

自分のお財布の中に、キャッシュカードやクレジットカードが何枚入っているのかを把握し、日頃使わないものは持ち歩かないようにするのもひとつの自己防衛策です。

ひったくり被害の約9割は女性、後ろから追い越しざまにひったくる

警視庁の平成25年中のひったくりの実体報告によると、被害の約9割は女性、後ろから追い越しざまにひったくる手口が約9割近く、そして徒歩で被害に遭った方の約6割が車道側にバッグを持っていました。

警視庁:ひったくり被害に遭わないために

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/bouhan/bouhan1.htm

車道側に鞄を持って歩くことがどんなに危険なのかということを、頭に叩き込んでほしいものです。また、警視庁のページにもありますが、被害者のほとんどが「まさか自分が被害に遭うとは考えたことがなかった」と答えています。今回の事件に遭った方もそうでしたが、「まさか自分が」という考えは捨て去り、「自分もひったくり被害に遭うのだ」という意識で行動しましょう。私も、常に「必ずひったくり被害に遭う」という前提で行動しています。意識を変えるだけで、自ずと自分の行動も変わってくるはずです。

マンションまでの帰り道での注意点

ひったくり犯は、犯行前に相手の目星をつけています。駅やコンビニなどの明るい場所からすでに狙いを定めているかもしれません。明るい道から暗い道へ入る時にも、一度振り返って不審者がいないか目を配るようにしましょう。なんとなく怖いなと感じたら、そのまま進まず引き返すのもひとつの方法です。

実際にひったくり被害に遭わないために、マンションまでの帰り道で以下の点に注意して歩くようにしてください。

・後方からの音に注意
後方から近づいてくるバイクの音や足音に注意してください。車やバイクが近づく音がしたら、振り返って相手の顔を見つめるのも効果的です。
電車沿いの道では、電車音に紛れて襲ってくる場合もあります。電車が通った瞬間にも要注意です。

・ながら歩きは禁止
また、歩きながらの通話やヘッドフォンで音楽を聞く「ながら歩き」は、バイク音に気づくことができないので止めましょう。

・道をチェック
帰り道の選択肢がある場合には、遠回りでも明るく賑やかな道を選んでください。またガードレールがある道も、ひったくり防止には効果的です。ふだん歩く道に、防犯カメラが設置されているかチェックしておくことも大切です。

・歩き方
仕事帰りで疲れていても、夜道では意識的にシャキッとした姿勢で足早に歩きましょう。ひったくり犯に隙を見せない、狙わせないぞという意識も、自然と後ろ姿に現れてきます。

・バッグ
持ち手の長いバッグを手でぶら下げていると狙われやすくなります。持ち手の長いショルダーバッグはたすき掛けにする、手提げバッグは身体にしっかり引き寄せてかかえるなど、バッグの種類や持ち方にも注意しましょう。
また、車道と反対側にバッグを持つのは鉄則です。

・コンビニのATM帰りには要注意
コンビニのATMを利用したあとは、日中でも夜間でも要注意です。店内や店外で犯人が、お金を下ろすところを見ているかもしれません。できればなるべくATMは使わないようにするなどしましょう。

・自治体の防犯メールを受信する
お住まいの自治体で、安全・安心メールを配信しているようでしたらぜひ登録しましょう。近隣の不審者情報、ひったくりなどの犯罪情報を事前に知ることも防犯に役立ちます。

・盗難保険に加入しておく
損害保険会社では、月額数百円程度で携帯品の保障をしてくれる各種保険商品を用意しています。こうした保険に加入していれば、ひったくられたバッグや財布などの買い替えにも役立ちます。


自宅マンションまでの帰り道は、通い慣れている道だから安心してしまいがちです。「いつでもどこでも、ひったくり犯罪は起こりうる」と考えて、できる限り自己防衛策を講じてください。一人でも多くの方々が、ひったくり犯罪の被害に遭わないことを切に願っています。

2015/02/12

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


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