防犯アンケートに見る、防犯心理の盲点とその対策法

マンション居住者ご自身も気付いていない防犯の問題点に、「自分のマンションだけは大丈夫」という思い込みがあります。それが、身近に起こっている危険サインを見逃して大きな事件を生み出す場合も。今回は、居住者の防犯心理と小さなサインを見逃さない解決策をアドバイスします。

防犯アンケートから見えてきた居住者の間違った防犯意識

マンション・ラボで実施した「マンションの防犯に関するアンケート(掲載終了)」は、居住者ご自身が身近に起こっている危険サインに気付いていない状況を浮かび上がらせる、興味深い結果となりました。どうしてこのようなことが起こっているのでしょう? まず結果を見ていきましょう。

Q お住まいのマンションの防犯対策に満足していますか?

Q お住まいのマンションのどの場所に防犯上の不安を感じていますか?(複数回答)
Q お住まいのマンションのどの場所に防犯上の不安を感じていますか?

「マンションの防犯に関するアンケート」調査結果の詳細はこちら(掲載終了)

80%近くもの人がマンションの防犯対策に満足していると回答し、共用部各所への不安も、どれも30%以下と低めです。では、実際にマンションで危険や不安を感じたことはないのかというと、実に50%もの方が不安体験について答えていたのです。

小さなヒヤリ・ハッとした出来事は、大きな事件の初期サイン

駐輪場
Qマンション生活の中で、防犯面で実際に不安を感じたこと・危険を感じたことをお聞かせください。

・車に傷をつけられた。・自転車の盗難やいたずらが激しい。・宅配業者を装って不審者が入ってきた。

・酔っぱらいが侵入してきた。

車や自転車を傷つけられることは、傷の大小に関わらず犯罪です。すぐに警察を呼ぶ習慣をつけましょう。どんな犯罪も許さない断固とした姿勢で、小さな事件を処理して二度と発生させないことが、その後の重大な被害を防ぎます。

直接危険な目に遭っていないけれども、ヒヤッとしたことやハッとした出来事が積み重なって、大きな事件につながることを、「ハインリッヒの法則」と呼びます。このような初期サインに気付きながら、マンションの防犯に不安を感じていない人の多さが、アンケートから見えてきます。

ハインリッヒの法則

ハインリッヒの法則

1件の大きな事故・災害の背後には、29件の軽微な事故・災害、さらに300件のヒヤリ・ハット(事故には至らなかったがヒヤリとした・ハッとした事例)が存在するという、労働災害の法則。重大な災害の防止には、発生が予測されるヒヤリ・ハッとの段階で対処していくことが必要であるとされています。防犯面でも同じことがいえます。

参考:ウィキペディア「ハインリッヒの法則」

自分の家(マンション)だけは大丈夫、という思い込み

「自分(我が家)だけは大丈夫」と考える心理は、「正常化の偏見」といわれています。小さな出来事が起こったときに、深く考えるのをやめて、あえて「大きな問題はない」と納得するように働くのが人の心理です。しかしこのまま放置していては、重大な事件を引き起こすことにもつながりかねません。

解決方法は、居住者のモラルとコミュニケーション

居住者の不安を消し、マンション全体の防犯力を上げるためには、居住者のモラルを上げることです。アンケートで回答いただいた不安を感じた体験の中にも、互いにモラルを持った行動をとっていれば、不安を感じる必要のないケースも多く見られました。

・エントランスにあるソファーに、明らかに住人でない輩が寝ていた。

→居住者の友人・知人だった可能性もあります。もしそうなら、安易に第三者を共用部に入れて勝手な行動をしないように配慮しましょう。

・駐車場に、明らかに住民の車でない車が駐車していた。

→訪問者の車だったかもしれません。もしそうなら、駐車した車に、駐車許可証などを提示するべきでした。

居住者同士が、他の居住者への気遣いを心がけるだけでも、不安を感じずに済みます。居住者が声をかけあってコミュニケーションを密にし、その上で不安を感じる小さな事件を皆でひとつひとつ解決していくことが、マンションの防犯力につながります。

まず、ご自身が遭遇したヒヤッとした小さな体験や、ハッとした出来事をマンション内で話し合ってみませんか?

「マンションの防犯に関するアンケート」の詳しい結果発表は、こちらでご覧いただけます。(掲載終了)

2011/09/20

プロフィール

国崎 信江

危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。文部科学省地震調査研究推進本部政策委員、防災科学技術委員などを務める。講演活動を中心にテレビや新聞など各メディアでも情報提供を行っているほか、被災地域で継続的な支援活動も行っている。

おもな著書に『大地震対策 あなたと家族を守る安全ガイド : ビジュアル版』(法研)、『震度7から家族を守る家: 防災・減災ハンドブック』(潮出版社)、『マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)』(つなぐネットコミュニケーションズ)などがある。


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