ミサイル基地がマンションに変身!地中に埋まったミサイルマンションとは?

広大な平原のなかにひっそりと存在するサバイバル・コンド

次に、「サバイバル・コンド」のあるエリアをみていこう。
ご存じの通り、アメリカはとても広大な国だ。ニューヨークやロサンゼルスのように世界中の誰もが知っている大都市もあれば、見渡す限り草原や砂原が広がる地域もある。冷戦時、ミサイル基地は人里離れた土地につくられることがほとんどだった。サバイバル・コンドに一番近い都市であるカンザスシティも、周りを自然に囲まれた地方都市である。

サバイバル・コンドのあるカンザスシティはアメリカ中西部に位置する。アメリカの地理的重心地と人口重心地の双方から400km以内に位置するため“Heart of America(アメリカの中心)”ともいわれる。

直線距離で東海岸のニューヨークから約2,000km、西海岸のロサンゼルスからは約2,600kmも離れたアメリカ中西部に位置する街がカンザスシティだ。日本人にはあまり馴染みのない都市かもしれないが、メジャーリーグ「カンザスシティ・ロイヤルズ」の本拠地であるといえばわかりやすいのかもしれない。また、ミッキーマウスの生みの親であるウォルト・ディズニーの出身地でもある。

ミズーリ川とカンザス川が合流している地点。この川を境に自然に囲まれたカンザス州とビルが並び建つミズーリ州に分かれる。

この街は、カンザス川とミズーリ川の合流地点を中心に広がっていて、カンザス州とミズーリ州にまたがっている。合流地点以東はすべてミズーリ州、以西については北部がミズーリで南部がカンザスとなっている。街の名前とは裏腹に、もともと大半がミズーリ州に所属していたのだ。

そのため、超高層ビルが建ったり、ロイヤルズのホームグラウンドである「カウフマン・スタジアム」が位置して賑わっているのはミズーリ側。一方のカンザス側は、“郊外都市”とよばれ、豊かな自然が広がっている。また2本の大河が交わる土地であるだけに水源はとても豊富。街中には200もの噴水があり、別名“噴水の街”ともよばれるのだ。

ミズーリ州側のカンザスシティに建ち並ぶビル群。ただしニューヨークなどに比べるとまだまだ発展途上といえそうだ。

近代的な街並みを見下ろすことのできる丘の上にはアメリカン・インディアンの像が立つ。もともとこの土地は彼らがかっ歩する“大西部”の一部だった。

一方で、カンザスシティは、さまざまな自然の脅威にさらされることの多い地域として知られている。
たとえば有名な『オズの魔法使い』の主人公のドロシーはカンザスシティ出身。彼女は、家ごと竜巻に巻き込まれオズの国へと飛ばされてしまうのだが、これは街の周辺が実際に竜巻多発地域であることをうけたもの。街なかにトルネードシェルターがつくられるほど、竜巻はカンザスシティにとって身近な存在なのだ。また、街の中央を流れるミズーリ川はよく氾濫し、洪水の被害もたびたび発生している。そんな自然災害を何度となく乗り越え、この街は発展してきたのである。

カンザスシティの観光スポットのひとつである「カウフマン・スタジアム」。道をはさんだ向かいには、アメリカンフットボールのスタジアムである「アローヘッド・スタジアム」が建っている。

危機が迫ったときの“ノアの方舟”それがサバイバル・コンド

このような特徴をもつ街、カンザスシティ。その近郊にある、ミサイル基地をリノベーションしようという「サバイバル・コンド建設計画」は2008年から始動した。そのプロジェクト・マネージャーを務めるのが、不動産会社を経営するラリー・ホール氏。どうして、このようなマンションを建てようと考えたのか、同氏に話を聞いた。

サバイバル・コンドの設計図に見入る、プロジェクト・マネージャーのラリー・ホール氏。

ホールさん:「ここ数十年の世界情勢や気候変動、過去に起きた災害を振り返ったときに、この先、大規模な自然災害や戦争が起きる可能性が高いのではないかと感じたのです。そういった事態が発生した際に逃げ込めるシェルターがあってもいいのではないかと思いました。

さらにそこを、今までの生活水準を保てる場所にしようと方法を探しましたが、これがなかなか見つからない。そんなときに、ゼロからつくることは難しくても、防衛することに適した施設を再利用すればよいと気づいたのです。そこで、政府の「Formerly Used Defense Site(FUDS)」の制度を使用して、核攻撃からでも身を守れる頑強なアトラスミサイル格納庫を手に入れ、居住施設にリノベーションすることを決めました。

ただしマンションは、映画のように災害から命からがら逃げ延び、ぼろぼろになりながらもひとりさみしく生き残るだけでは不十分です。今までの生活スタイルを維持して家族全員で快適に生き残れる環境にしていきたい。そういう意図のもとに建てたのがこのサバイバル・コンドなのです」

核戦争などによる人類滅亡までをカウントダウンする「世界終末時計」という概念がある。これは1947年に創設されたもので、この時計は、滅亡までの危険度が高まれば分針を午前0時に近づけ、逆に危機が去れば遠ざけるというものだ。

一般的には、時計の9(45分)から12(正時)までを切り出して表示される。これまでもっとも滅亡に近づいたのは1953年にアメリカとソ連が核実験を頻繁に行っていた時期の2分前。1991年に、ソ連が崩壊し冷戦が完全に終結した際には、危険が去ったとされ分針が17分前まで戻された。

そして、最新の状態が発表されたのは、2015年。なんと、針は3分前を指しており再び世界が滅亡の危機に限りなく近い状態にあることが明らかになったのだ。いつ世界の終わりがきても、家族全員で安全に生きのびることのできるノアの方舟のような場所が必要だと感じたホール氏。サバイバルはまさにそんな時代に適したプロジェクトだった。

キューバのソ連基地にミサイルを運ぶ輸送船(奥)に対し、徹底阻止を試みるアメリカ軍の船舶(手前)と航空機。(C) Shutterstock

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2015/06/18