愛する家族を我が家から見送るために〜自宅マンション葬を考える

最近、家族だけで故人を見送る「家族葬」や、近親者を招いて家で葬儀を行う「自宅葬」などの葬儀スタイルが増えつつあります。今回は、自宅マンションで葬儀を執り行う「自宅マンション葬」について調べてみました。

「自宅マンション葬」は可能なのか?

愛する家族が亡くなったとき、あなたならどんな葬儀のかたちを選びますか?「家族葬」や「自宅葬」は、近親者だけで温もりのあるお別れをしたいという気持ちから増えてきているようです。家族だけでお別れの時間を持ちたい、慣れ親しんだ自宅から故人を見送ってあげたいというご家族の気持ちもよくわかります。

ただ、葬儀というと、広いスペースのある戸建てでなくては無理なのではないのでしょうか?
実際、自宅マンションで葬儀を執り行う「自宅マンション葬」は可能なのか? サービスを提供している冠婚葬祭の専門家にお話を伺ってみました。

冠婚葬祭サービスを提供する(株)サンセルモの葬祭部 次長 木村正章さんに「自宅マンション葬」について伺いました。

(株)サンセルモ
http://suncelmo.co.jp/pc/index.html

自宅マンション葬
http://gyokusenin.jp/suncelmo/pc/service/style/style06.html

「自宅から送り出してあげたかった」遺族の気持ちを叶えるために

――(株)サンセルモは、冠婚葬祭サービスを提供する会社です。一般的なお葬式は会館などを借りて行うことが多いものですが、「自宅マンション葬」というサービスが生まれたきっかけは何でしょうか?

木村さん「通常の葬儀は、弊社施設をご利用いただくことが多いのですが、お客様の中には“本当は自宅から送り出してあげたかった”という声を伺うこともあります。葬儀は、お亡くなりになった方に最後にしてあげられることです。葬儀での後悔は、ご家族にとっては一生続いてしまいます。少しでもご遺族のご希望に沿うことができればと考えて『自宅マンション葬』というサービスを企画いたしました」

マンションの8畳程度のリビングに設えられた「自宅マンション葬」のイメージ。マンションの室内にも飾れるコンパクトな祭壇を企画開発しました。※写真提供/(株)サンセルモ

――老人ホームや病院に長く入っていて亡くなられた方の場合、一度慣れ親しんだ自宅へご遺体を迎えてから見送ってあげたいというご家族の意向も多いそうです。

木村さん「昔から日本では、自宅で結婚式やお葬式を執り行っていたという文化的背景もあります。故人の最後のお別れを自宅から行ってあげたいというのは日本人の意識の根底にあるのでしょう」

「自宅マンション葬」を行う場合の注意点

しかしマンションという限られたスペースで葬儀を行う場合、どういった点に注意すればいいのでしょうか? 木村さんに伺った注意点をまとめてみました。

・エレベーターの大きさ
マンションに棺が入るエレベーターがあるかどうかを確認します。搬送用のストレッチャーが入る、2メートル程度の奥行きが必要になります。エレベーターの形状によっては緊急用スペースが設けてあるものもあるので、事前に管理会社や管理組合に問い合わせます。

・お部屋の広さ
棺を安置して祭壇を設えるために6畳ほどの一間が必要になります。お坊さんや出席者が座るための場所も含めて、2間続きの部屋があるとよいです。

・管理組合の許可と近隣の部屋への配慮
近親者だけで執り行うとはいえ、人の出入りが多くなります。管理組合に葬儀日程を知らせて。事前に許可をとっておく必要があります。
またお寺様を呼んでお経を唱えていただく場合には、両隣の部屋の方にも配慮してその旨をお知らせしておきましょう。

・駐車場
参列者の方々が多くなる場合には、駐車スペースなども必要となります。ゲスト用の駐車スペースや近隣の駐車場を確認します。

木村さん「マンションの場合、事前に自宅葬ができる環境かどうか、そして近隣への配慮が重要なポイントになります。お部屋の広さは、間取りに合わせた対応ができますので、その点は葬儀社にお任せになればよいと思います」

2間続きの和室とリビングに祭壇を設営した例。※写真提供/(株)サンセルモ

木村さん「また、これは特に大切なことなのですが、ご遺体を自宅に安置して皆さんが対面される際に違和感をもたれないよう、細心の注意を払う必要があります。
私共では、高度な技術とライセンスを取得した専門スタッフが、ご遺体にエンバーミング(遺体衛生保全)処置を施してからお連れ致します。生前のお元気だった頃の顔付きや姿に近づくようエンゼルメイク(死化粧)を施し、消毒・防腐・修復・二次感染予防など、すべての面を整えてからお部屋に安置いたします。生前の穏やかな面影を保ったままで、皆様とのお別れの時間を過ごすことができるため、ご遺族の方から多くの感謝の言葉をいただいていおります」

サンセルモ玉泉院:エンバーミング
http://gyokusenin.jp/suncelmo/fureaisou/service/embalming.html

「自宅マンション葬」のメリットとデメリット

「自宅マンション葬」のメリットとデメリットについて考えてみましょう。

<メリット>
・慣れ親しんだ自宅でお別れができる。
・家族と近親者だけの少人数でゆっくりお見送りができる。

<デメリット>
・大人数の参列者の葬儀には不向き。
・マンションの管理組合や近隣の方への事前確認が必要。

木村さん「高齢の方のお葬式では、友人・知人も既にお亡くなりになっていて葬儀を行っても、参列者が少ないという場合もあります。その場合には、『自宅マンション葬』や『家族葬』がよいかもしれません。
ただ、注意しないといけないのは、あとでお亡くなりなったことを知った方々への対応ですね。『家族葬』後に知人や友人の方が頻繁に弔問されたり、“顔を見てお別れしたかった”と言われたりすることもあります。」

これらメリットとデメリットを把握した上で、故人や家族の遺志に沿った葬儀のかたちを選びたいものです。

葬儀のスタイルは多様化している

無宗派の祭壇例。※写真提供/(株)サンセルモ

木村さん「よくテレビドラマに出てくるような、昔ながらの壮大なお葬式のイメージをお持ちになっているかもしれません。
しかし最近はさまざまな宗派や無宗派の葬儀のスタイルや規模が自由に選べます。私達も、可能な限りご遺族の遺志に沿ったお葬式のお手伝いをさせていただきたいと思っています。専門の葬儀社によく相談して、満足できる葬儀でお見送りなさってください」

――「自宅マンション葬」は、その選択肢のひとつ。故人が生前「お葬式にはお金をかけなくていい」「葬式なんてしなくていい」と言っていたからといって、その通りに済ませられる訳でもありません。また、「まるで社葬のように弔問客が多くて忙しくて悲しんでいる暇もなかった」というのも、近親者には辛いものです。大切な人としっかりお別れをするためにも、遺族がよく考えて選びたいものですね。

木村さん「人の死は、簡単ではありません。葬儀は、亡くなられた方と、残された人達との、思いをつなぐ儀式です。大切な人を最後に見送るためにどうしたいか、その思いを大事にしてお考えいただければよいのではないでしょうか」

――確かにそうですね。マンションは、我が家であり終の棲家。そこからいつか旅立つときのことを考えておくのは、大切なことかもしれません。あなたはどう考えますか?


葬儀の話なんて縁起でもない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
先のことまで考えて、“終活”を始める人や、エンディングノートに葬儀のスタイルや方法を書き残す人も目立ってきました。自分自身の最後の人生の閉じ方や、大切な人のお見送りについて、一度家族で話し合っておくとよさそうです。

2015/06/05