東京23区で唯一「消滅可能性都市」豊島区の「リノベーションまちづくり」への挑戦!

昨年話題になった「消滅可能都市」という言葉をご存じですか?少子化と人口流出に伴い、若年女性が半減し、将来的に消滅の可能性がある自治体を指します。人口が集中する東京23区内でさえ、唯一豊島区にはその可能性があると発表されました(※2014年日本創世会議試算による)。

マンション住民にとっても、その可能性は人ごとではありません。

この問題に、本腰を入れて取り組み始めたのが豊島区です。しかも「リノベーション」をキーワードにして、魅力的なまちづくりを再建しようとしています。今回は、「豊島区リノベーションまちづくり」についてご担当者にお話を伺いました。

2040年には「消滅可能都市」になると予測された豊島区の反撃

平成26年5月に有識者による「日本創世会議」が発表した全国自治体の将来推計で、豊島区は23区内で唯一、2040年に20〜39歳の若年女性の人口が減少し、将来的に都市・地域経済機能が持続できなくなる「消滅可能性都市」として位置付けられました。このニュースを聞いて驚いた方も多かったことでしょう。

この発表を受けて、豊島区では、マンションの空き家や区内の遊休不動産を活用して地域活性化につなげる取り組み「豊島区リノベーションまちづくり」を推進していくと発表しました。

その取り組みについて、豊島区 建築整備部 建築課 マンショングループ 係長 高木隆之さんにお伺いしました。

豊島区 建築整備部 建築課 マンショングループ 係長 高木隆之さん。豊島区のマンショングループは、市区町村では初めて、分譲マンションに関する業務全般を扱う課として平成22年度に新設されました。

─「消滅可能性都市」として位置付けられた発表は、どのように受け止められたのでしょうか?

高木さん「“消滅可能生都市”と予測されたのはショッキングでしたね。その一方で、同じ年に民間団体が発表した“住みたい街ランキング”では、池袋が第3位でした。

つまり住みたい人気の街ではあるけれど、たとえば結婚しても住みやすい街かというと、そうでもない。我々の課題は、若年女性が結婚して子育てするようになっても、住み続けたくなる魅力的な街にすることなのだと考えています」

─実際、あらゆる路線が乗り入れていて交通利便性の高い豊島区への居住希望者は増加傾向にあるのに、家賃の高さや望む広さの住宅がないために子育て世帯が住み続けられないといった居住ニーズに応えられないという現状もあります。

その反面、総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」においては、豊島区は東京都内の空き家率でワースト1位。平成20年時点では、豊島区約21,680戸の空き家のうち、92%を長屋建て・共同住宅が占めていました。

高木さん「居住者のニーズと、集合住宅等の遊休不動産ストックにミスマッチが生じているということだと思います。このミスマッチを解消するために、増大する空き家や遊休不動産の活用を促進し、住んで働いて暮らせるまちづくりを実現するべく、民間と連携した“豊島区リノベーションまちづくり”を推進することが昨年7月に決定しました。リノベーションまちづくりに関しては、先行事例として、北九州市が建物のリノベーションにより地域の価値を高める事業手法を実践して成果をあげています。これは、北九州家守舎などの民間団体が主導している公民連携まちづくりです」

豊島区リノベーションまちづくり
http://www.city.toshima.lg.jp/322/machizukuri/sumai/kekaku/renovation/index.html

─リノベーションが、空き家や遊休不動産の活性化の鍵を握ると考えた豊島区の動きは、その後ますます面白い展開を見せていきます。

住みたくなる!まちの魅力を再発見する試み「まちのトレジャーハンティング@豊島区」

キックオフイベントとして昨年11月に開催された「まちのトレジャーハンティング@豊島区」

高木さん「リノベーションという言葉・手法は、まだ世間では良く知られていません。そこで、豊島区の掲げるリノベーションまちづくり事業のキックオフイベントとして、空間資源、人的資源、歴史資源を、外からやってきた7名のトレジャーハンターとまちの人達とで再発見し、どうすれば魅力を高めることができるのか発信しようという“まちのトレジャーハンティング@豊島区”というワークショップを2日間かけて開催しました」

まちのトレジャーハンティング@豊島区
http://www.city.toshima.lg.jp/322/machizukuri/sumai/kekaku/renovation/033928.html

─区内居住の子育て中のお母さんも参加した2日間におよぶワークショップは大盛況。豊島区の潜在的な魅力をもっと伝えようというプレゼンテーションが会場で行われました。

自分の住んでいるまちの魅力を、外部の人の視点と住民の視点の両面から考えるというのは、マンションコミュニティづくりにも取り入れられそうです。自分たちの住んでいるエリアの魅力を見つけることが、エリアへの愛着や故郷づくりにもつながります。

住みたい人・まちを変えたい人を対象にした「豊島区リノベーションまちづくり塾」

昨年開催された「リノベーションまちづくり塾」。ブルースタジオ大島芳彦、吉原住宅の吉原克美さん、メゾン青樹の青木純さん、建築・都市・地域再生プロデューサーの清水善次さんという、そうそうたる講師陣を迎え、豊島区の不動産オーナー、住民を対象にした講演が3回にわたって開催されました。

高木さん「さらに、区内の遊休不動産の持ち主、不動産オーナーの協力も欠かせません。12月、1月、2月にかけて、区内の空き家や空き店舗をどのようにリノベーションすれば、地域の魅力を高めるようになるのか。すでに実践している専門家を講師に迎えて、講演を行っていただきました」

先駆的なリノベーション事業者を講師に招いて実践講座

今年3月に行われた「リノベーションスクール@豊島区」。事業計画コース30名・セルフリノベーションコース10名の受講生が、具体的なリノベーションプランを3日間にかけて作成し事業化プランまで考えます。

高木さん「また、今年3月に実施したリノベーションスクールでは、定員の3倍を超える方に申込みをいただきました。受講生は、不動産オーナーから課題として提供いただいた物件をどうリノベーションするか、資金をどの位投入し、どの位の期間で回収するか、夢を語りつつも、事業の実現性を高めるためにシビアな判断をしなければなりません。二日目の夜は、どのグループもほとんど徹夜で作業をしていました。受講生の皆さんの創意・熱意には、只々感嘆するばかりです」

─受講生はシェアハウスの運営者、地元の一般会社員などさまざま。最終日には300名を超える聴衆の前でオーナーへ向けて熱意あふれるプレゼンテーションを行いました。

リノベーションスクール
https://www.city.toshima.lg.jp/322/machizukuri/sumai/kekaku/renovation/index.html

高木さん「豊島区のリノベーションまちづくりの進展は、戸建住宅・マンション・アパートの空き家等の遊休不動産オーナーの意識をいかに変えていくことが出来るかにかかっています。リノベーションスクールでの提案が事業化し、物件が地域の魅力を高めている様子を目の当たりにすれば、周囲のオーナーも『自分の空き物件もリノベーションしてみよう』と考えを変え、これが更に周囲のオーナーの意識を変えていく。こうした志ある不動産オーナーを生み出す流れを作り出すには具体的なリノベーションの事業例が必要不可欠なのです。

また、リノベーションスクールを通じて、まちづくりを担うパブリックマインドを持った起業者を育成していくことも、大きな目的となっています。」


マンションでも空き室問題が取りざたされつつある昨今、リノベーションによる付加価値づくりや子育て世代が暮らしやすいコミュニティづくりを行うことは、高齢化に悩むマンションや団地でも見習えるポイントが数多くありそうです。

豊島区のように空き家・空き店舗を活用して、魅力的なリノベーション物件が増えていけば、入居希望者も増えていくはず。リノベーション物件を媒介にしてエリアを魅力的に活性化していこうという豊島区の試みは、都市部での先駆け的な事例となりそうです。

豊島区としても、リノベーションまちづくり構想の策定、構想を具現化するための仕組み(リノベーション物件への融資制度など)の検討をしていくそうです。今後の展開に期待したいですね。

2015/06/02