50代からのリセット、地域に開かれたネットワーク型集合住宅の提案

2014年秋にリビングデザインセンター OZONEで開催された展覧会「Good Over 50’s 都市型コンパクトライフのススメ展〜二人暮らしの50㎡」から、大人世代のコンパクトな住まい方と、地域に開かれたネットワーク型集合住宅の提案をご紹介します。

都市型コンパクトライフのススメ展

以前「50歳から考える、90歳までの住まい方『シニアリノベーション』」記事で、50代から自分のシニアライフを考えようという「Good Over 50’s」をテーマにした活動を行う一般社団法人ケアリングデザインをご紹介しました。今回は、そのケアリングデザインが特別協力した展覧会「Good Over 50’s 都市型コンパクトライフのススメ展~二人暮らしの50㎡」(主催:リビングデザインセンターOZONE、公益社団法人インテリア産業協会)で展示された、「リアルサイズ二人暮らしの50㎡」プランをご紹介します。

Good Over 50’s 都市型コンパクトライフのススメ展〜二人暮らしの50㎡

「リアルサイズ 二人暮らしの50㎡」展示

設計提案:末光弘和+末光陽子(建築家)
インテリア提案:荒井詩万(インテリアコーディネーター)
会場に設営された、大人世代のコンパクトライフの住宅実寸モデル。50代からの夫婦二人暮らしのためのコンパクトな50㎡の住戸、そして地域や社会とのつながり、空間やエネルギーのシェアを可能にする「地域に開かれたネットワーク型集合住宅」プランまでを提案したものです。

なぜ50㎡? 持たない暮らしへ、生活をリセットする

マンション・ラボが着目したのが、50㎡の住戸提案と、「地域に開かれたネットワーク型集合住宅」という画期的なマンション提案の2点です。設計を担当した建築家の末光弘和さんと、主催であるリビングデザインセンター OZONEのスタッフの方々にお話を伺いました。

50代からの夫婦二人暮らしの提案で、50㎡の住戸というのはどうして生まれてきたのでしょうか?

末光さん「それまでの家族4人暮らしは、70㎡くらいの住まいを想定しました。そこから子どもが独立して子ども部屋部分が必要なくなったと考えて、自然と50㎡という広さが生まれてきました。コンパクトなサイズの住戸に住み替えて、厳選した気に入りのものだけで暮らす、“持たない暮らし”を実現するには最適なサイズだと考えました」

OZONE「気力も体力も財力もある50代は、これまでの生活をリセットするいいタイミングです。リタイアを視野に入れて、断捨離をしたり、音楽や写真の趣味もデータ化されたりして、住まい方自体変わりつつありますよね」

末光さん「リタイア後のライフスタイルでは、仕事と社会の関わりも考える必要があると思います。いままでは、余生の暮らしというと社会と断絶したところにありました。これからの次世代シニアは、リタイア後も好きなことを仕事にして働きたい、もっと社会と関わりたいという活動的な意思があるはずです。

実際にクライアントからのオーダーも変容しつつあります。たとえば、これは30代の方々なのですが、3階建ての家の1階部分を奥様がやっているNPOの拠点にしたい、歯医者さんが図書室も兼ねた待合室を地域に開きたい、というように、地域との関わりを持つ自宅をオーダーされる方が目に付きます」

自宅を地域に開いてシェアする“住み開き”という概念が、徐々に社会で広がりつつあるのでしょうか。戸建て住宅では可能な“住み開き”ですが、集合住宅ではなかなか難しいような気がしますが、その点はどうでしょうか?

OZONE「2010年にリビングデザインセンターOZONEで開催された、成瀬・猪熊建築設計事務所による展覧会『集まって住む、を考えなおす。』でも、集まって住むことを根本的に考え直して、2つのシェアハウスを提案しました。これは40戸の規模のシェアハウスの提案を、事業収支にいたるまで算出して実現可能かどうか計画したものです。若い世代を想定した住まいの提案でしたが、60代の大家さんと見られる方々が興味深くご覧になっていたのが印象的でした。皆さん、老後の暮らしを考える上で、“開く”という概念も視野にいれているのかなと感じました」

2010年OZONEサポート展「集まって住む、を考えなおす。」
http://www.ozone.co.jp/event_seminar/event/detail/1005.html

末光さん「これからのライフスタイルには、プライベートとパブリックの2面が必要になってくるのかもしれません。プライベートが必要な一方で、パブリックとも関わりたいと願う気持ちが一方にある。その2面性を担保したのが今回の“ネットワーク型集合住宅”の提案です。各住戸も集合住宅の建物自体も、このコンセプトによって出来上がっています」

パブリックに開かれたダイニングキッチンとプライベートスペース

末光さん「今回展示した50㎡プランは、カフェ兼ダイニングというものです。外部のテラスデッキから、大きく開いたエントランスに面したダイニングキッチンは、小さなカフェとしても住民が集まるコミュニティの場としても機能します。たとえば、昼はカフェとして地域に開き、夜は家族の空間とするという2面性を持たせることもできます」

コンロがセットされた大きなダイニングテーブルを中央に配置。リタイア後の奥さんが、自宅のダイニングキッチンを街に開いて、小さなカフェを経営しているというイメージです。

末光さん「パブリックにも開くダイニングキッチンから、プライベートゾーンであるリビングルームへつながる部分に小さな階段をつけて、内と外を仕切るゲーティングラインを部屋の中に持ち込みました。土間から靴を脱いで上がることで心理的な区切りになります。カフェ営業中には、リビングルームに直接出入りできるプライベート用のエントランスも用意しました」

ダイニングキッチンとリビングを仕切る階段。

リビングからワンルームでつながる寝室は、来客時には間仕切りを使ってフレキシブルに使えます。バリアフリーでサニタリールームと直結しています。

サニタリールーム。放射暖房システムを、タオルウォーマーと室内暖房に利用して、身体に優しい暖かさへ配慮しています。洗面所のミラーはガラスモニターとなっており、健康管理データなどを表示します。

今回は、「カフェ兼ダイニング」の住戸のモデル展示のみでしたが、「ライブラリー付きメゾネット型住戸」「店舗付きメゾネット型住戸」「ギャラリー付き住戸」といったバリエーションもあります。地下に大きなシェアストレージを用意し、日常使わないものをそこに集約することで、コンパクトに暮らすことができます。

“断捨離”や“お片づけ”がブームの現代、ものを持ちすぎることによって汚部屋化していく暮らしの弊害から、コンパクトな部屋に住むという選択によって、持たない暮らしにシフトしていくことができるのかもしれません。人生をリセットするための大きな決断ですが、自分のシニアライフをより心豊かにしていくためには必要なことのような気がします。

編集部スタッフの知人にも、80㎡の郊外マンションから50㎡の都心マンションへと引っ越して、40代からすでに夫婦二人暮らしのコンパクトライフにシフトしたご夫婦がいます。コンパクトライフは、個の暮らしが増えていく高齢化社会に求められている姿なのかもしれません。

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2014/12/25