同潤会アパートや晴海団地 ~昭和の集合住宅はココが古くて新しい~

いまでは当たり前の住まいである「マンション」。日本では、「集住」する建物として古くは「長屋」がありましたけれど、上方に積層して住む「集合住宅」ができたのは、今から100年くらい前のことだそうです。「初期の頃の集合住宅って、いったいどんな建物で、どんな暮らしだったんだろう?」という素朴な疑問や興味、みなさんもお持ちではないでしょうか。

そんな疑問に応えるべく、今回は、東京・八王子市の「UR都市機構 都市住宅技術開発研究所」にある、歴史的に貴重な建物を移築し公開している「集合住宅歴史館」を訪問し、その特長や暮らしぶりを見学してきました。設備や造りはもとより、昔の生活から今の生活に活かせること、学ぶべき点がたくさんありましたので、ご紹介したいと思います。

戦前の集合住宅 「同潤会代官山アパート」

  • 竣 工  昭和2(1927)年
  • 所在地  東京都渋谷区
  • 構 造  RC造3階建
  • 住 戸  単身者用:約13㎡ / 世帯用:約28㎡
  • 間取り  単身者用:6畳+寝台 / 世帯用:6畳+4.5畳+台所+水洗トイレ

最初に見学させていただいたのは、「同潤会代官山アパート」。うん?どこかで聞いたことがあるような。。それもそのはず、以前まで表参道の顔にもなっていた「同潤会青山アパート」同系のアパートです。財団法人同潤会は、関東大震災(1923年)の復興義捐金をもとに設立された財団法人で、日本ではじめて本格的なRC造の集合住宅を建設しました。

同潤会代官山アパートは、昭和2年に入居が開始された総戸数337戸もある大きな集合住宅でした。まずは単身向けの部屋を拝見。大きな家具がないことや、備えつけのベッドの下が収納になっていて、デッドスペースを活用する工夫がなされていることもあり、とてもすっきり広々と感じます。狭いスペースを工夫すれば快適に過ごせるのは今も同じです。昔の人の工夫・知恵に関心させられます。

すっきりとした部屋。床は「ござ」が敷かれていました。

すっきりとした部屋。床は「ござ」が敷かれていました。

また、部屋の隅にはガス栓が出ていて、ストーブを置いて暖をとったり、コンロでお湯をわかしたりしたようです。

これが当時のガスヒーター。床から出たガス栓につないで使っていました。

これが当時のガスヒーター。床から出たガス栓につないで使っていました。

一方、世帯向けのお部屋は、寝室を兼ねた6畳の居間と4畳半の客間があり、単身に比べるとゆとりを感じます。さらに奥へ進むと「土間」のキッチンがあり、ここにはガスコンロ以外に「炭びつ」が!温かく、おいしい食事をたくさんつくっていたのでしょうね。また建物には「避難梯子」が用意されていて、この時代から防災設備があったとは、少々驚きでした。

世帯向けの居間。今では珍しいちゃぶ台が。当時はこのちゃぶ台を囲んで家族が食事をしていました。小さいこともあって距離感が近く、それが「団欒」につながっていたかもしれませんね。

世帯向けの居間。今では珍しいちゃぶ台が。当時はこのちゃぶ台を囲んで家族が食事をしていました。小さいこともあって距離感が近く、それが「団欒」につながっていたかもしれませんね。

土間にあるキッチン。ガスコンロのほかに炭火用のコンロもあったそう。今ではちょっと贅沢かもしれません。

土間にあるキッチン。ガスコンロのほかに炭火用のコンロもあったそう。今ではちょっと贅沢かもしれません。

避難はしご。関東大震災のこともあり、万が一の場合に備えた地震対策はこの頃から行われていました。

避難はしご。関東大震災のこともあり、万が一の場合に備えた地震対策はこの頃から行われていました。

昭和30年代の集合住宅 「蓮根団地」

  • 竣 工  昭和32(1957)年
  • 所在地  東京都板橋区
  • 構 造  RC造3、4階建
  • 住 戸  約33㎡
  • 間取り  ダイニングキッチン+6畳+板敷付き4.5畳+浴室+水洗トイレ

つづいては、昭和30年代に建てられた「蓮根団地」。「食寝分離」を「ダイニングキッチン(DK)」というスタイルで実現させた、公団住宅最初期の集合住宅です。特筆すべきはキッチンに「テーブル」が備え付けになっていること。同潤会アパートとは異なり、食事する場所と居間がきっちり分離されています。現代のマンションの間取りの原型ともいえますね。またキッチンは、ステンレス製ではなく、人造石研ぎ出しの流し台が採用されています。なんでもステンレス製が間に合わなかったのだとか。それでも非常に重厚なつくりは、かえって新鮮で味わいのあるように感じました。キッチンにはカウンターやつくり付け収納も設けられていて、使い勝手のよい工夫がなされています。

キッチン。テーブルはつくり付けになっています。またカウンターや収納も充実。

キッチン。テーブルはつくり付けになっています。またカウンターや収納も充実。

キッチンと分離された居間。ゆったりとしたスペースになっています。ちなみにテレビや家具は当時使われていた貴重なもの。時代を感じます。

キッチンと分離された居間。ゆったりとしたスペースになっています。ちなみにテレビや家具は当時使われていた貴重なもの。時代を感じます。

次のページ:昭和30年代の高層集合住宅 「晴海高層アパート」

2011/05/12