第四回:マンションの暮らしから考える「子育て問題」

今回は、マンションの暮らし全体を踏まえながら、前回の「子育て世代の働く女性に聞く」というテーマのインタビューをベースに、「子育て問題」に切り込んでみたいと思います。

最終的にはマンションの暮らしがより楽しく、より良くなる事について考えて行きたいと思います。

改めて考える「待機児童」問題

様々なメディアで発信されていますが、現在日本には「待機児童」と呼ばれる保育園に入ることのできない子供が、24,825人(平成24年度 厚生労働省調べ)いると言われています。

待機児童は、2007年(H19)の17,926人から右肩上がりに増え、ここ数年の間でピークだった2010年(H22)の26,275人から2年連続で減少していますが、0~2歳の割合は未だ上昇傾向にあり、課題はまだまだ多い状態と言えます。

また、首都圏などの大都市圏と地方とでは格差も非常に激しく、特に働く女性の多い大都市圏で待機児童が多いというのが、特徴でもあります。

前回の記事でインタビューをさせて頂いたBさんは、お子さんを保育園に入れることが出来ているので働く事が出来ていますが、「待機児童数=働きたいけど働けないお母さん数」と考えると、その問題の大きさを身近に感じる事が出来ると思います。

では、この待機児童問題が、なぜ問題なのでしょうか?
それはやはり、これの問題により女性の働く機会が失われ、キャリアがストップしてしまったり、その結果として家庭内所得が減少したりする事にあると、私は考えます。

悲観すべき状況ではないとはいうものの、暮らしを取り巻く環境は大きく変化し、家庭の右肩上がりの成長や、給料アップが見込めなくなっています。子どもに対する教育費は年々上昇の一歩を辿っていたり、新築偏重の流れから、子育て世代の方が多くの住宅ローンを抱えるなど、将来に対する不安心理が働く状況がここにあります。

もちろんネガティブな理由からだけでなく、自己実現のためというポジティブな動機のお母さんもいるとは思いますが、いずれにしても働けるうちにしっかりと働いて、旦那に頼るだけでなく、家庭内所得を上げようと考えているお母さんは多いと思います。それが出来ない状況になり、人生設計を大きく見直さなくてはならなくなるのが、この待機児童の問題であると、私は捉えています。

つまり、働くお母さんだけでなく、小さなお子さんを持つ家庭、そしてこれから子どもを産もうと思っている家庭にも、心理面で大きく影響を与える問題なのです。

保育所付きマンションにも課題あり

一方、そのような子育て層のニーズを捉えて、この数年新築されるマンションでは「保育所付きマンション」が売りに出されています。

住んでいる場所に子どもを預けられるのはとても安心できる、という事で、それを目当てに入居されるご家族もいらっしゃり、よく考えられた取り組みだと思いますが、実はそこにもまだまだ課題がある事が見えてきました。

そこで、新築~5年位までと、築10年以降の2つのケースに分けて、実例をご紹介したいと思います。

【新築~5年のケース】入りたくても入れない

先日、あるマンションへ平日のお昼前にお伺いした際に、1歳半のお子さんを抱えられているお母さんとお会いする機会がありました。

お子さんの話を聞いてみると、待機児童である事が分かりました。詳しく聞いてみると、そのマンションにも認可がおりた保育施設があるらしいのですが、入居したご家族のお子さんを預かれるだけのキャパシティは無く、現在もマンション内だけで100人近く待機している子どもがいるとの事でした。

また近隣の保育施設に預けようと思って探してみたらしいのですが、他のマンションの施設も既に一杯だったり、新しく開発されているところでもあるため、外部の保育施設も不足している状況で、結局預ける事が出来ず自宅で子育てしているとの事でした。

保育所付きマンションでそのような状況になっている事を知らなかった私は、改めてそのマンションを調べてみると、継続して販売中だったのですが、今現在も「保育所付き」とうたっていました。

施設があるのは事実なのですが、やはり入居しても預けられない実態があるとなると、少なくとも予め情報開示をする等、すぐに解消できないまでも取るべき対応があるのではと思った瞬間がありました。

【築10年以降】赤字補填を管理組合が行なう

これは保育所に限らず、マンション内共用部に設置された運営費用が必要な施設全般に言える話でもあるのですが、そこの収益に対して第一義的に責任が必要なのは管理規約上「管理組合」となっているケースが多くあります。

今回私が知ったマンションでも、築10年以上経ち、小さい子どもの数が減ったために、運営が継続できなくなってしまった保育施設を、存続させるかどうかの判断を管理組合が行なっていました。

文書だけを読むとやめてしまえば良いと判断できるのですが、10年以上経つと居住者さんの入れ替わりなどがあります。その施設を目当てに小さいお子さんを持つご家族が入居されたりすると話が複雑になってきますし、実際にそのマンションでもそのような事態になっていました。

そのマンションでは結局、1年間は様々な人の利害関係も踏まえ、トライアルで援助したものの、経営が大きく改善されないとの事から、翌年辞めるとの判断が下されました。

しかし、仮にそこに待機児童問題が関係してきたら、もしくはもっと多くの人が関係するような話になったらと考えると、その運営を管理組合が判断する事の難しさを実感した次第です。

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2013/04/04