合意形成~バックキャスティングという考え方~

合意形成の最終章では「バックキャスティング」という考え方をご紹介します。

アイスブレイクワークショップを用い、時にはWebサービスを利用しながら理事会や自治会を運営するイメージは既に持っていただけましたね。

では、このコラムをご覧になっている皆さんは、理事会や自治会の運営自体にワクワクされていますでしょうか。

「数年に1回、役割が与えられるだけだし…」
「引き受けたからには役目をしっかり果たさないと…」

こんな意見が聞こえてくることもしばしば。普段お忙しい中でマンションのために活動されているのですから、主体的に関わることは難しいですよね、お気持ち、お察します。

でも、そもそも理事会や自治会は問題解決のためだけにあるものではありません。原点に立ち返れば、「私たちの生活が、より楽しく快適であるためにはどうすべきか」を考えられる素晴らしい機会でもあります。

参加される方が胸の高まるような理事会にする。一見難しそうですが、考え方のポイントをお伝えしますので一緒にイメージしてみましょう。

バックキャスティングとは

「自分が理事の時は問題など起きず、何事もなく終わって欲しいなぁ」
どこからともなく、新米理事さんの嘆きが聞こえてきます。

マンション内で起きた問題は理事会で解決、毎回のようにマイナスな議題では心も重くなってしまいますね。

どうでしょう。ここは一つ、予めこれからマンションで問題となりそうな議題を挙げておきませんか。その議題は現在のものではなく、将来の素晴らしいマンションを想像した際に必要となる条件です。

バックキャスティングという考え方は、国際NGOのナチュラル・ステップという団体が定義したものです。

環境を守り持続可能な社会をつくるという大きな目標に対し、どう戦略的にアプローチするのか、「将来のあるべき姿」から逆算し「現在すべき事がら」を導き出す画期的な方法と言えます。多くの企業が長期ビジョンを作成する際に使用しており、実用例も増えています。

マンション理事会に話を戻しますと、まず大切なことは「将来のあるべき姿」を掲げること。そのために私たちはどのような動きをすれば良いのか、具体的に計画を立ててしまうのです。

ビジョンを定めるのは難しいと思われがちですが、第3回コラム 合意形成~理事会にワークショップを取り入れよう~でご紹介しました、田の字法などを取り入れてみてください。

ワークショップを用いた合意形成はイメージできていますよね、手を動かしてもらい小さな意見も拾うことがポイントでした。

さて、ここでは以下のようなビジョンが出来上がったと仮定します。

ビジョン例

私たちのマンションは、子どもからお年寄りまで多世代の交流を大切にし、その機会と場所を優先させます。また震災への備えを十分にし、住民には安心できるマンションライフを約束します。

ビジョンが出来上がりましたら、次にこのようなマンションを目指すためには何が必要か、簡単に計画を立ててみるのです。

「子どもたちの遊び場や憩いの場となる緑が少ないかな」
「段差が多いので次の修繕時にはバリアフリーも検討しよう」
「マンションの備蓄や日頃のコミュニケーションは十分だろうか」
具体的には、いつ・誰が・どのタイミングで実行するか、などを話し合えればベストですね。

バックキャスティングの活かし方

私たちは日常、バックキャスティングではなくフォアキャスティングで動くことが多いように感じます。

過去のデータに縛られたり成功事例にとらわれたりと、持ち合わせの材料で判断しがちですね。そちらが正しい場合もありますので一概には言えませんが、バックキャスティング最大の特徴は最短ルートでビジョンにたどり着けることです。

例えば、カレーを作ろうとしてスーパーへ向かうのと、ジャガイモの安売りにつられてレシピを考えるのでは料理にかける時間が違いますね。うっかり気を取られるとカレーのルーを買い忘れて肉ジャガへ変更、これでは将来のあるべき姿が変わってしまいます。

ですから、例えば駐輪所の整備を行うにしても「子どもたちの安全のためにご協力ください」、昨年より修繕費用が上がってしまっても「防災の備蓄準備にご理解ください」など話の道筋が立てられるのです。

問題の終着点が分からずにもめる際も、ビジョンから逸脱したものは自ずと避けることができますね。

「お洒落な外装が人気ですが、ビジョンにある防災の面ではどうでしょう」など議論を安易に原点へ戻すことが可能です。

バックキャスティング、実は女性の方が得意だったりしますよ。

例えば人生の一大イベント「結婚」。
いつまでに子どもを何人ぐらい産んで、そのためには何年後にどんな人と結婚して、今必要なのは自分磨きと出会いのチャンスだから、月に1度は交流会へ積極的に参加しよう。という発想に女性は自然となるそうです。なるほど、完璧なバックキャスティングですね。

ビジョンを常に張り出しておこう

理事会の参加者全員が、常に高い意識で物事を進めるのは非常に難しいことです。意識をそこに求めるのではなく、簡単に魅力ある理事会へ変えることができる方法の一つとして「ビジョンを常に張り出しておく」という手法が挙げられます。

長時間にわたる会議、暗くなりがちな議題、そんなときは今一度ビジョンを確認しましょう。「辛い仕事ではない、多世代のため自分の家族のため、こうして理事として活躍しているのだな。」
理事会や自治会では、その雰囲気づくりが重要なのです。

ビジョンを張り出す手法は、とてもお手軽ですが非常に効果がありますので、ぜひお試しください。バックキャスティングを用いれば、理事会が迷子にならずにゴールまでたどり着くことができますよ。

「私たちのマンションは、私たちの手で住みよいものにしていく」というお気持ちで、理事会や自治会へ参加してみてくださいね。

2013/07/26