スウェーデンの住まい方が教えてくれる、これからのマンションのエコライフ

世界初の首都内のエコヴィレッジ、スウェーデンの「Understenshojden」PHOTO:Robert af Wetterstedt, Peo Ekberg

環境先進国スウェーデンでは、持続可能な社会を目指して着々と環境目標を達成しています。一方、日本はどうでしょう? 残念ながら環境目標を達成しているとは言えません。それでも、マンションで暮らす私達が、少しでも地球のために貢献する暮らし方はないのでしょうか?

スウェーデンの住まいの状況や、マンションでいますぐできるエコな行動や暮らし方について、環境コンサルタントのペオ・エクベリさんに伺いました。

ペオ エクベリ(Peo Ekberg)氏

(株)One Planet Café取締役/むくむくはうす外部環境コンサルタント。グリーンエネルギー100%を目指すスウェーデン・マルメ市生まれ。著書にエコライフのガイドブック『うちエコ入門』(宝島/2007年)がある。

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スウェーデンだけじゃない!日本が変われば、世界も変わる

地球がこのまま資源を使い続ければ、2030年頃には、地球2個分の資源が必要になるといわれています(※)。つまり私達がいまの暮らしをこのまま続けると、地球の資源は足りなくなってしまうのです。マンションライフを営んでいる私達にとっても、決して他人ごとではありません。私達にでも出来ることは何なのでしょうか?
※WWFのLiving Planet Reportによる

そこで今回は、スウェーデン人の環境コンサルタントのペオ・エクベリさんに、マンションに住む私達ができることについて伺いました。スウェーデンと日本を行き来しながら、スウェーデン流の環境活動の啓蒙を行うペオさんは、「Walk The Talk(有言実行)」として、東京のマンションで環境に負荷を与えないエコリフォームを実践。

エコリフォームが完成したペオさん夫妻のマンションの部屋。完成して半年後に環境負担を計ったところ、一般家庭に比べ、なんと全体の環境負担を76%も削減できたことがわかりました。

ペオさん「日本ではなぜか、“エコハウスは高い”という固定概念がありますよね。しかし、私達のマンションのエコリフォームは、結局一般的なリフォームよりも安く仕上がりました。私の妻は、“普通のリフォームより安くできるのに、どうしてみんなエコリフォームをやらないの?”とちょっと怒っていました(笑)」

ペオさんたちが取り組んだ、風力やソーラーなど、100種類近くのエコな取り組みを導入したエコリフォームは、スウェーデンでなくても、東京のマンションで十分取り組めるのだということを証明してくれました。

また、建材のトレーサビリティ調査まで行うことができることや、和室の畳の農薬の影響など、ふだん生活の中で注意を払うことがなかった点についても考える必要があるのだということを教えられました。私達がいかに環境に関して、深く考えておらず、無頓着であったかということに気付かされます。

ペオさん「スウェーデンでは、小さい頃から環境に関する教育を受けます。環境教育が生涯教育となって根付いているのです。その教えは、環境循環に基づいた環境に正しいルールを学び、丸ごとライフスタイルを考え、実行し、自分のエコライフスタイルを計ることにあります。エコライフスタイルを計らないことは、体重計のないダイエットと同じことなのです」

こうした環境教育は、日本ではまだまだ一般に根付いているとはいえません。私達は、過剰包装を断ってエコバッグを使うことくらいで、環境にやさしい行動をしていると思い込んでいたのかもしれません。

ペオさん「スウェーデンは、約百年前は人口の少ない貧しい国でしたが、福祉と環境先進国を目指して目標数値を達成し、福祉大国となりました。スウェーデンにできたことは、日本にもできます。そして、日本が変われば、世界も変わります。世界中のいたるところに日本の文化・製品が巡っている。世界に対する影響力も大きい。日本がスウェーデンのような環境先進国になれば世界も積極的に変わる、と私は信じています」

日本の技術や開発力はひとつひとつのパーツは素晴らしいけれども、包括的につながらないことが問題なのだと、ペオさんは指摘します。そして、それらをつなげるのは、日本人自身なのだと。

ペオさん「スウェーデンでは、バイオガスなどのグリーンエネルギーで動くバスやハイブリッドカーが街で当たり前に走っています。そしてその技術のいくつかを提供しているのは日本です。ただし、スウェーデンは、こうした環境への取り組みの素晴らしさを世界にプレゼンテーションできているとは、まだまだいえません。スウェーデンの取り組みと日本の技術が結びついたら、すばらしいビジネスチャンスを生みだすと思います。私はそのための架け橋として、2つの国をつなげたいと考えています」

スウェーデンと日本が環境問題に取り組む、そんなマッチングができれば素晴らしいことですね。しかしまだまだ日本の暮らしは、環境に関しては発展途上国のような気がしてきました。

スウェーデンが取り組んでいる、環境に正しいこと

ここで、スウェーデンが取り組んできた住まいの環境への配慮を、ペオさんに紹介していただきましょう。

ペオさん「スウェーデンの暮らしはとにかく我慢しないで快適性を追求します。たとえば外は寒くても室内では半袖Tシャツで過ごせる暖かさ。これを実現しているのは、バイオマスエネルギーに切り替えた地域暖房システムです。日本の暖房は人を暖めますが、スウェーデンの暖房は家全体を暖めます」

写真は、ストックホルムの毎日約20万人が利用する中央駅で、人が出す熱(体温)をリユースして、近くのオフィスビル暖房にする人間エネルギーシステム。

マンション・ラボの視点「グリーンエネルギーへの意識」

地域暖房システムや外断熱といった大がかりなシステムはすぐには取り入れられないとしても、環境負荷の少ないグリーンエネルギーを部分的に取り入れることや、グリーンエネルギー証書の購入といったことで実現できそうです。森林資源から得られるペレットや薪、木炭などの固体燃料を用いたバイオマスエネルギーの暖房器具などは、防災やマンションのイベントで取り入れられるのではないでしょうか?

ペオさん「首都内のエコヴィレッジは、環境とアートをコンセプトにした44世帯の集合住宅です。住居のトイレでは大と小を分別し(写真左)、オーガニック野菜をつくる農家が肥料としてリサイクルするシステムが整っています。また洋服やモノのシェアやリサイクルをするためのリユースルーム(写真右)もあり、住民や訪問者が自由にもらっていくことができます。他にも住民みんなの食事をつくるフード・チームがあり、住民同士のコミュニケーションに役立っています」

(写真左)エコヴィレッジのトイレ/(写真右)リユースルームの様子

マンション・ラボの視点「リユースルームとフードチーム」

ちょうど小規模マンションくらいの戸数のエコヴィレッジの取り組みには、マンションでも学べる部分が多いですね。分別トイレは無理としても、モノや服をシェアするリユースルームや、住民同士で食事をつくるフード・チームは、資源を大切にすることにつながると共に、コミュニケーションにも役立っています。マンションでもぜひ真似したい暮らし方です。

「ゴットランド島はバルト海に浮かぶ世界遺産の島ですが、100%グリーンエネルギー島を目指して自治体全体が環境活動に取り組んでいます。島の電力エネルギーの30%は風力によるものです。また、農家の16%が有機野菜を育てています。ゴミのリサイクルも年々進んでおり、ゴットランドの病院で使っているコンポストは日本製ですが、残念ながら日本では使われていません」

ゴットランドの風力発電 (電気)と 菜の花畑 (バイオ燃料)

マンション・ラボの視点「ゴミのリサイクル」

コンポストで生ごみをリサイクルするなど、マンション全体でゴミのリサイクル活動に取り組むことはできますよね。多くのマンションで実施している事例もあります。いかにゴミを排出しないか、ペオさんがいうように数値データに換算していくと、取り組みの“見える化”にもつながりそうです。「地球に優しい」ではなく「地球に正しい」という考え方は、明確で実行に移しやすいですね。

エコ活動が見えることの大切さと、ホリスティックなシステム構築へ

最近の日本のマンションでも、MEMS(マンション向けエネルギー管理システム※1)が導入されるなど、新たな省エネ対策のシステムにより、エネルギー消費の「見える化」を図っています。こうした現在の日本のマンションの取り組みについて、ペオさんはどう感じているのでしょうか?

※1:MEMS(Mansion Energy Management System):マンションの建物内で使用する電力消費量等を計測蓄積し、導入拠点や遠隔での「見える化」を図り、空調・照明設備等の接続機器の制御やデマンドピークを抑制・制御する機能を有するエネルギー管理システムのことです。

ペオさん「MEMSは、エネルギー消費が理解できる一部分としてはいい事例だと思います。次の段階として、マンション内でエネルギーを使いすぎているかどうかをチェックするという、そこだけに終わってはいけないでしょうね。スウェーデンでは、社会の至るところで、環境活動に対してインセンティブ(褒賞)が用意されていて、そのための環境税や法律も整備されています。

たとえば、自転車で通勤すると補助が受けられる、ゴミをリサイクルすればお金が戻る、エコカーに買い替えると街の駐車場が無料になるなど。インセンティブを与えることで、環境活動を継続する基盤となっているのです。その結果は素晴らしい数値となって現れています。家庭ゴミのリサイクル率は99%、ゴミは最終的に約100種類に分別されます。電力のほぼ50%はグリーンエネルギー(再生可能エネルギー)で、温暖化に影響するCO2は1990年からマイナス17%減。同時にスウェーデンのGDP(経済)が成長しています。日本でも同様に、環境活動への貢献に対しては何らかのインセンティブを与えることが大切だと思います」

ペオさんは、環境活動には社会全体で取り組むホリスティック(包括的)なシステムが欠かせないといいます。日本でもエコポイント制度はありますが、活性化しているとはいえない状況です。これらは社会全体で取り組む必要がある問題でしょう。

ペオさんのマンションのリフォームを行ったむくむくハウスをはじめとした日本のハウジング業界でも、環境ラベル認証システム(※2)を導入してエコリフォームの推進を図っていきたいという動きがあるそうです。大いに期待したいですね。

※ 2: 環境保全や環境負荷の低減を実施しているかどうかのチェック項目をクリアした建物・資材などに付与して認証する環境ラベル。スウェーデンの環境ラベル認証システムの詳細については以下の記事も合わせてご覧ください。
「環境先進国スウェーデンの『人と環境に“正しい”住まい』づくり」

マンションライフでいますぐできる、地球に正しいこと

社会全体が変わらなければ、私達だけでは環境問題はどうしようもないと考えがちですが、一人ひとりの毎日の生活の中で、いますぐできる、「地球に正しい」ことがあります。ペオさんに教わった以下の3つのことをマンションライフで実行してみませんか?

ペオさん「温暖化にできるだけ影響しないようにできることがたくさんあります。以下に3つの簡単な例を示します。あなたがこの3つのことを心がけるだけで、地球に正しい方向へ進むことができます。ぜひこの記事を読んだらすぐに実行してみてください」

1.できるだけ自転車、電車、バスを使う。

ストックホルムの電車の扉には、環境ラベル認定のマーク(写真の扉の鳥のマーク)が印刷されていて、グリーンエネルギーの風力・水力・バイオマスで走っていることを示しています。すべての市内バスは、環境配慮型燃料。生ごみのバイオガスなどで走っているタクシーもたくさんあります。

自転車:温暖化に影響する二酸化炭素(CO2)の多くは、車から出るCO2です。 自転車を使うと温暖化に影響しません(街に住む人々の車の走行距離は、その約5割が2km以内という統計があります)。

電車・バス:日本の交通機関は大変発達していて便利です。電車やバスを使うと温暖化の影響を減らすことができます。スウェーデンの環境教育の本には次のように書かれています。

ペオさん「同じエネルギーを使って、飛行機では15人、車では100人、バスでは222人、電車では1,364人を運ぶことができます」

マンション・ラボからのアドバイス「歩こう」!

一番いいことは、歩くことですね。マンションのエレベーターではなく階段を使う。最寄り駅から一駅分歩く。健康にいいことは、地球にもいいことにつながります。

2.できるだけ「地下」のもの (資源) を使わない。

資源には、地上のものと、地下のものがあります。地上のものは、地上でとれるもの。地下のものは、石油からつくられたプラスティックなど。

包装の例:プラスティックは地下の化石燃料で作られており、温暖化に影響します。食品などを買うときにはできるだけ地上の資源 (自然素材) の包装や、包装されていないものを選ぶと環境に正しい選択となります。プラスティック包装でないものを選べば温暖化への影響を減らします。包装されていないものを選ぶと、温暖化に影響しません。地上の資源は環境循環の一部になるため、自然にすぐ返すことができますが、地下の資源 (例:石油プラスティック) は数百万年かけて作られたため、土へ戻るのにもとても長い時間がかかります。

例:プラスティックのレジ袋は、土に戻るには1000年ほどかかる場合がありますが、紙袋は1年以内に土に戻ります。自然に返すことができる以上に取らなければ「地上」の資源から出るCO2は温暖化に影響しません。逆に、「地下」の資源から出る同じCO2は元々地上にはなかったために増えすぎます。それが温暖化の問題になっています。

マンション・ラボからのアドバイス「自然素材の包装または包装されていないものを選ぼう」

エコバッグを使う習慣は根付いてきていますが、プラスティックのものを選ばないという習慣はまだまだ根付いていません。使っているものを、地上のもの=自然素材に切り替えていく、安いからといってつい選びがちな地下資源からできているもの=プラスティック製品を意識的に選ばない、そんな行動が環境に正しい結果につながります。

3.近くでできたものを選ぶ。

温暖化に影響するCO2の一部は、運搬の排気ガスから発生します。食品・商品の長距離運搬は温暖化に影響します。日本人一人当たりの朝食の食材は、平均5,000km以上を移動して食卓に届くと言われています。同じように、家を作るときやリフォームをする時に、近くでできた建材を選ぶことは温暖化を減らすための簡単な行動の一つです。

マンション・ラボからのアドバイス「フードマイレージを意識する」

いま食べるものはどのくらいの距離を移動してきたのか? フードマイレージを考えると、食べものを買うことへの考え方が変わります。地元でとれる食材を、ローカルショップで購入する「地産地消」が、環境に正しいことにつながります。

いかがですか? いままで気付かなかったことも多いはずです。

今回お話を伺った喫茶ルームで、ペオさんはアイスコーヒーを注文するときに「ストローは要りません」と、最初に断っていました。考えてみれば、コップでそのまま飲めば、ストローは無用なもの。そしてそのストローは、プラスティックで作られて紙で包装されています。でもペオさんの行動を見るまでは、そんな小さなことにも気付きませんでした。伺ってみると、ペオさんのバッグは間伐材の木でできたもの、服や靴はオーガニック、移動は自転車だそうです。身近なことからできることはいっぱいあるのです。私達がいかに日頃から環境について考えていないか、改めて気付かされました。

環境先進国スウェーデンのライフスタイルを日本に!

ペオさんが紹介してくれるスウェーデンの環境への取り組みはどれも素晴らしいものばかりで、つい「スウェーデンだから特別なことなのだ」と、いう偏見を持ちがちになります。でも、先に紹介してもらった「いますぐできる3つのこと」や、環境に関する勉強を実践していけば、決して特別なことではないということがわかります。

この機会に、マンション内で環境に関する活動を話し合ったり、「いますぐできる3つのこと」の実践をお友達に話したりすることで、一人ひとりの環境への意識が変わっていくはずです。
ペオさんが紹介してくださった書籍(共同執筆)、エコツアーのインフォメーションを以下に紹介します。参考にしてください。

おすすめの書籍

石田秀輝+新しい暮らしとテクノロジーを考える委員会著『地球が教える奇跡の技術』(祥伝社)102のQ&A方式で環境問題について解説しています。ペオさんの奥様のエクベリ聡子さんも執筆しています。

石田秀輝+新しい暮らしとテクノロジーを考える委員会著『地球が教える奇跡の技術』(祥伝社)

ペオさん達がエコガイドとなって、スウェーデンの環境活動の現場を案内するツアーが2014年12月に実施されます。興味のある方はいかがでしょうか?

北欧のエコハウスとライフスタイル視察ツアー

日程:2014年12月15日~21日
費用:345,000円 (6泊/税込/現地料金/国際航空チケット別)
エコガイド:ペオ・エクベリ 環境コンサルタント、ローベルト・アブ・ヴェッテルステット氏 と現地スウェーデンの各施設の専門家

お問い合わせとお申し込みは、One Planet Caféのサイトから。

環境について考えることは、未来の自分たちのためでもあります。マンション・ラボ編集部も、ペオさんのパワフルな説明や、環境活動を楽しそうに実行する様子に、圧倒されました。私達でもいますぐできることを、ぜひとも実践していきたいと思います。

PHOTO:Robert af Wetterstedt, Peo Ekberg

2014/11/10