環境先進国スウェーデンの「人と環境に“正しい”住まい」づくり

今回は、以前スウェーデン大使館で開催された「サステナブル住宅フォーラム」の内容をご紹介します。

サステナブル住宅フォーラム VOL.2

日本×スウェーデンでつくる環境循環型住宅 リノベーション新戦略
「人間と環境に正しい北欧のエコ建築」
2014年5月27日開催
会場:スウェーデン大使館
講演:エコロジー建築エンジニア Robert af Wetterstedt氏、(株)One Planet Café取締役/むくむくはうす外部環境コンサルタント Peo Ekberg氏、むくむくはうす/(有)リフォームプロ代表 阿部悌二氏

フォーラムに登壇された方々は、むくむくはうす代表の阿部悌二さん、以前「スウェーデン流エコリフォームな暮らし」でご自宅のエコリフォーム実現をご紹介いただいた環境コンサルタントのPeo Ekbergさん、そしてスウェーデン初のエコヴィレッジづくりにも関わったサステナブル建築の第一人者である建築エンジニアのRobert af Wetterstedtさんです。

国の政策として持続可能な社会を目指す環境先進国スウェーデンでは、CO2削減に向け、持続可能を目標としたさまざまな取り組みが行われています。

なかでも住宅やまちづくりに関しては、数多くの種類の環境ラベル認証システムを導入。環境保全や環境負荷の低減を実施しているかどうかのチェック項目をクリアした建物には、環境ラベルを付与します。

日本でも国土交通省主導による建築物の環境総合性能評価システムCASBEE(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency)などがありますが、スウェーデンの建築環境ラベルは、10数種類以上。中には、建築資材のトレーサビリティに関する評価システムもあります。

スウェーデンで、すでに環境ラベル認定された建築物は1,500以上にのぼります。環境ラベル認定されていることで、たとえば銀行のローン審査が通りやすくなるなどの優遇措置により、国を上げた支援が行われています。

地球規模で環境問題を考えていかなければならない現在、日本でもスウェーデン並みの環境性能評価が行われていく必要があるのではないでしょうか。では具体的に講演内容をご紹介していきます。

大使館入口にて。

スウェーデン大使館内で行われた講演会場の様子。

スウェーデンでのサステナブル(環境循環型)建築の取り組み

エコロジー建築エンジニア Robert af Wetterstedt氏

スウェーデンから来日されたエコロジー建築エンジニア Robert af Wetterstedt氏は、サステナブル建築の第一人者です。

ヴェッテルステット氏たちは、1995年にスウェーデンの首都ストックホルムに世界初の首都内エコヴィレッジ「Understenshojden」を実現。これは、ストックホルム初の環境配慮型集合住宅として、注目を集めるプロジェクトとなりました。

※エコヴィレッジ:持続可能性を目標としたまちづくりやコミュニティづくり。持続可能な建築や自然界に害を与えず、調和した生活システムに取り組むもの。

自然素材100%の資材で建築された44世帯の集合住宅には、地熱暖房システムやソーラー温水パネル、コンポストやカーシェアリングが備えられています。

共有部分として「リサイクル&リユースルーム」が設けられており、不要になった自転車や衣類をこの部屋に置くと、誰でも自由に持っていくことができます。

この日は寒かったため見学者が早速ジャケットを譲ってもらいました。

ユニーク分別トイレです。空き缶と空き瓶の分別のように、「大」と「小」の分別を行い、半年に一度回収に来た農家がオーガニック農業に役立ててリサイクルします。

ひとつの集合住宅のすべてが、サステナビリティのコンセプトで設計されているのがよくわかります。この事例を見ると、サステナビリティは、建築物だけでなく、そこに住む人々のライフスタイルまでを通して実現するものなのだということを実感させられます。

エコヴィレッジ「Understenshojden」は、Robert af Wetterstedt氏をはじめ5人のメンバーからスタートしたそうです。

Robert af Wetterstedt氏の講演では、他にも興味深いスウェーデンのサステナブルな建築やまちづくりプロジェクトの紹介が行われました。そのいくつかを紹介しましょう。

イエテボリ市にあるスウェーデン初の集合住宅のパッシブハウス(2007年)

パッシブハウスとは、高性能な省エネルギー住宅のことで、日本では無暖房住宅とも呼ばれています。1次エネルギーの消費を抑え、断熱性能の高い壁面や窓、 ソーラーシステムにより省エネルギーを実現します。このパッシブハウスのイニシャルコストは、約1年で相殺できたそうです。

スウェーデン初のプラスハウス(2009年)

プラスハウスとは、ソーラーパネルの屋根や温水パネルで冷暖房をまかない、使用するエネルギー量よりも多くエネルギーを発電する家のことです。余剰エネルギーは、販売することも可能です。まさに家が発電所のようなものです。まだ一戸建てでの実現段階ですが、今後は集合住宅にも発展していくはずです。スウェーデンでは、プラスハウスの建築コストも一般の住宅と同程度の価格でできるそうです。

ノーベル賞授賞式の場として有名なストックホルム市庁舎のエコリフォームプロジェクト(2013年)

市庁舎は100年前の建築物ですが、省エネシステムや省エネ電球の導入、電気製品の切り替えなどを行い、イギリスの環境評価ラベルBREEAM認定のエコリフォームを実現しました。スウェーデンでは、こうした歴史的建造物だけでなく、古い幼稚園や学校、古い集合住宅などのパッシブリフォームも推進されています。

この他にも、電力会社の送電網(グリッド)に頼らないオフグリッドのファミリーハウス、グリーンエネルギーやバイオマスなど環境循環型の若者向けサステナブル住宅プロジェクトなどが紹介され、スウェーデンのサステナブル建築の取り組み事例を数多く知ることができました。

なぜエコが必要なのか?—地球環境から考えるサステナビリティ

(株)One Planet Café取締役/むくむくはうす外部環境コンサルタント Peo Ekberg氏による講演風景

環境コンサルタントでありジャーナリストでもあるPeo Ekberg氏による講演は、いまなぜスウェーデンのようなサステナブル住宅が必要なのか?なぜエコが必要なのか?という根源的な問題についてわかりやすく説明されたものでした。

私達がこのまま地球の資源を猛スピードで消費していくと、2030年には地球が2個必要になるというショッキングな現状から、環境への負担を地球1個分に減らす努力を行うためにいま私達にできるのは、持続可能な社会づくりです。

1992年の国連の地球サミット以降、自然と人間と経済の3つの柱でバランスをとる「サステナビリティ」は人類のための目標として掲げられてきました。

スウェーデンでは、国連決議を受けて、2021年までに実現する国策として16の環境目標を掲げました。その国策の中のひとつが、環境配慮型のまちづくりです。実際にスェーデンでは、家庭ゴミのリサイクル率は97%、エネルギー使用量の約50%がグリーンエネルギーによるものなど、環境目標の実現を果たしています。

スウェーデンの国政策 16の環境目標

Cycle of a building建設の循環

たとえば、いままでのまちづくりにおける建設は、「資源→生産→建設→利用→取り壊し」という消費するだけの一方通行でした。そこにリデュース、リユース、リサイクル、リターンの「4つのR」を推進することで循環していくことができます。

日本でもこうした建設を循環させる考えで、スウェーデンのエコヴィレッジやパッシブハウス、プラスハウスづくりがどんどん広がっていけば、環境に正しいまちづくりが実現していくはずです。

エクベリ氏自身も、日本で住んでいる中古マンションのエコリフォームを行いました。グリーンエネルギーを導入し、環境ラベル認定の建材を使用しても、普通のリフォームと変わらない予算で実現できることを自ら証明し、「エコリフォームは高い」という固定概念を取り除いてほしいと説きます。

スウェーデンの環境循環型住宅の成功事例は、日本が環境先進国となるためにきっと役立つにちがいありません。

一緒に考えながら、一緒に環境循環型住宅をつくる・リフォームする

むくむくはうす/(有)リフォームプロ代表 阿部悌二氏による講演風景。

数々のエコリフォーム事例をご紹介いただいている阿部悌二氏による講演は、環境循環型住宅ブランド「むくむくはうす」についてです。

「むくむくはうす」は、「100%グリーンエネルギーを目指す家づくり」を目標に掲げ、①コミュニケーション&コミュニティ型の一緒につくる楽しい家、②健康・環境・経済に賢い家、③暮らし方をデザインする家、の3つのポイントを大切にする家づくりを実践しています。

建材の有害物質アレルギーの問題が取りざたされる昨今、自分たちの住まいを安全で安心な建材によってつくりたいと願う人々は多くなってきています。「むくむくはうす」では、使用する建材についてEUの化学品規制REACHに準拠し、そのトレーサビリティや環境に配慮したものかどうかといった点までをチェックします。

嬉しいことに、日本でも、こうしたスウェーデンタイプの「環境に正しい」住まいづくりの姿勢に共感する人々は確実に増えているようです。

来場者の声

質疑応答コーナーでは、ヴェッテルステット氏が紹介したスウェーデンでの取り組みに関する質問が数多くありました。

Q.自分はシックハウス症候群から電磁波過敏症も発症していますが、スウェーデンには電磁波過敏症の人はいないのか?またその基準はありますか?

A.北欧5カ国に共通する環境ラベル「ノルディックスワン(SWAN)」では、化学物質の禁止基準や電磁波基準を厳しく課しており、最近では建築物の室内空気汚染による発症は少なくなってきました。

Q.すべての幼稚園がパッシブ基準で建築されているのでしょうか?

A.まだすべての幼稚園で実施されている訳ではありません。しかしアレルギーやアトピーの増加から、子どもが長く過ごす場所である幼稚園や学校は、パッシブ建築に変わりつつあります。

フォーラムの参加者は、一般の方から建築業界の方々までさまざまでしたが、日本でも環境循環型住宅で暮らしたい・つくりたいという熱い思いが感じられました。


環境先進国スウェーデンが国ぐるみで取り組んでいるサステナブル建築は、単に人のためだけではなく地球規模の資源問題を解決するための大きなアプローチです。

厳しい基準を課したさまざまな環境ラベルは、もっと日本でも積極的に取り入れてほしいものでした。阿部氏が「省エネにしても何にしても、環境に正しい家づくりのためには、きちんとした数値目標を持って行うべきです。そうでなければ、体重計のないダイエットと同じです」と言われたように、世界の要求基準に達することが大切です。

今後日本でも、スウェーデンのようなサステナブルな集合住宅が増えていくにはどうしたらいいのか。

それは、毎日の暮らしの中で無駄な消費を減らしていく、自分自身のライフスタイルの見直しから始まっていくのかもしれません。
皆さんはどのようにお考えになりますか?

PHOTO:Robert af Wetterstedt, Peo Ekberg

2014/09/09