築38年のマンション西京極大門ハイツが最新の外断熱工法を導入!その理由を管理組合理事長に聞いてみた

外断熱工法という言葉をご存じですか? 省エネ効果があり、室内の結露を防ぎ、建物を長持ちさせるという、マンションにとってはいいこと尽くめの工法ですが、問題はその導入コストの高さです。

最近の新築マンションで採用している事例も目立ち始めましたが、日本ではまだまだ主流とはいえません。その外断熱工事の導入を決断した、築38年のマンションの事例をご紹介します。

省エネ・居住者の健康・マンションを長持ちさせる外断熱工法

外断熱工法は、分厚い断熱材によって建物のコンクリートの外側を覆い、室内を一定の温度で保つものです。

■マンションの内断熱と外断熱の違い

冬の結露や真夏の日差しによるコンクリートの蓄熱などの影響を受けにくく、室内環境を省エネで快適にするだけでなく、外気温の変動による悪影響からコンクリートを保護し、構造体の劣化をも防いでくれます。このため、約10年ごとに行うマンションの大規模修繕も、20〜30年周期に延ばせる可能性があるともいわれています。

一番の問題は導入コストの高さですが、今回ご紹介する西京極大門ハイツは、国土交通省が実施した住宅・建築物省エネ改修等推進事業のモデル事業に採択されたことにより、工事費の1/3の補助を受けることができました。

とはいえ、その導入決定までの道のりは、大変だったのではないでしょうか。マンションの外断熱工事を推進した、西京極大門ハイツ管理組合法人の理事長 佐藤芳雄さんにお話を伺いました。

理事長の佐藤さんは、西京極大門ハイツのアイデアマン。そしてマンションの利益になることは積極的にどんどん採用していく実践派でもあります。

段階的に取り組んできた省エネマンションの地盤づくり

西京極大門ハイツは、管理組合法人で自治管理を行い、さまざまな取り組みを推進してきました。その活動は、マンション・ラボの記事でもご紹介しています。

▼西京極大門ハイツのスゴイ取り組み マンションは、まちづくりだ!
・省エネ編
・経営学編
・コミュニティ編
・高齢者対策編

特に省エネに関しては、居住者が「近所でも自慢のエコマンション」と口にするほどに尽力してきており、こうしたいままで積み重ねてきた取り組みが、今回の外断熱工事着手への合意形成にもスムーズにつながったようです。

一冊の本との出会いから、マンションの外断熱を考え始める

赤池学、金谷年展、江本央著『日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク』(阪急コミュニケーションズ、1999年発行)

「そもそも外断熱について知ったのは13年前です。『日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク』という本がきっかけでした。欧米では常識となっている外断熱が日本ではなぜ浸透していないのか、コンクリートを保護して100年住宅を目指すこともできるということが、複数の専門家によって語られており、まさに目から鱗でした」と佐藤理事。

役員同士でこの本を回し読みし、マンションの断熱改修工事には外断熱という方法もあるということが選択肢のひとつとして議題に上がりましたが、すぐ導入という流れにはなりませんでした。

「当時は、日本で外断熱を実施している事例が少なく、工事費、施工実績、施工会社など、まだまだわからない情報の方が多かったからです。建築士に質問しても、北海道のような寒冷地ならともかく、温暖な関西では必要ないのでは?という意見が返ってくるような状況でした」。

断熱性や居住性能を高めるための改修工事の数々で省エネ効果を実感

その後、西京極大門ハイツは建物の断熱性や居住性能を高めるために、省エネや電気代削減につながるさまざまな改修工事を段階的に実施しています。

・屋上防水改修時に断熱材の敷設
・全戸を真空ガラスに交換して省エネを実現
・太陽光発電設備の導入
・高圧電力一括受電方式への切り替え
といった断熱性能を高める工事に次々着手。

これら取り組みが評価され、マンションでは初めて「京都環境賞」を受賞。また、改修による建物の断熱効果や省エネ効果は、数字的な変化としても実感してきました。

「建物を断熱化すると、建物が長持ちするだけでなく、冷暖房効率もぐんとよくなります。たとえば窓ガラスを真空ガラスに交換したことで、全戸の電気使用量は年間平均8.7%減少しました。これは劇的な変化です。もちろん結露も減少しましたし、温度変化の幅が小さくなったため、健康面でも居住者にいい影響がでているのではないでしょうか」。

そんな状況の中、京都大学職員住宅や市営住宅といった既存の公共施設に外断熱工事が施されている事例が多くなり、すでに公共施設には浸透しつつあることがわかってきました。

そこで、2012年度の管理組合の総会で外断熱工事の調査を正式に議決。調査検討に入り始め、続く2013年にも継続して事業方針として議決されました。

2013年には、国土交通省が実施する住宅・建築物省エネ改修等推進事業のモデル事業提案に応募して、事業採択決定を受けることになりました。これは、国から工事費の1/3の助成金が受けられるというものです。

「住宅・建築物省エネ改修等推進事業」は、独立行政法人建築研究所の省エネ改修推進事業のホームページで公募しています。

なにもかもが未知、「だめもとやなぁ」と自分で仕様書づくり

住宅・建築物省エネ改修等推進事業の採択決定を受けて、工事の仕様書や書類づくりを行う必要がありましたが、なにもかもが初めてのことばかりで、その作業は大変なものだったようです。

「まず“メガジュール(※MJ)”ってなんや?って、ところからですから。聞いたこともない言葉から始まって、何もかもが未知の用語ばかり。外断熱メーカーの人に訊いてもわからないこともありました(笑)」と佐藤さん。

※メガジュール(MJ ):キロカロリーに代わって発熱量をあらわす国際単位。1メガジュールは、238.889キロカロリー。

このような省エネ改修事業の制度によって補助を受けるのは、通常大手ゼネコンやメーカー主導で行われることがほとんど。西京極大門ハイツのように、設計監理から国土交通省との交渉、審査部門である独立行政法人建築研究所に提出する計算書類まで、管理組合がすべて自前で行っているのはかなり希有な例です。

「最初から全部自前でやろうと決めていた訳ではありません。この補助制度を受けようとしたとき、紹介された専門機関からは、省エネ率の計算や申請の代行手数料として、成功報酬で補助額の10分の1が条件といわれました。それで、“だめもとやなぁ”と自分で仕様書づくりを始めたんです」。

最終的に、総工事費は1億5千万円。その3分の1の5千万円が補助額となりますから、10分の1の代行手数料は大きな金額です。

「でも、自前でやってみてわかりました。これは、常々きちんとマンションの改修に向き合っていれば、どのマンションでも取り組める補助制度なのです」。

事業補助には、改修工事によって、10%以上の省エネ化実現が立証できる熱貫流量計算書とエネルギー変換計算書などを提出する必要があります。

その前提として必要なマンション全住戸のガスや電力使用量の数値は、西京極大門ハイツの場合、それ以前の改修工事でデータとして蓄積もありましたし、工事後3年間計測する条件についても全戸の賛同を得られていました。

日頃の省エネへの取り組みとそのデータ、そしてマンション全体の省エネ意識の高さが役立ったのです。

毎日メジャーを持ってマンションのあちこちを計測

工事の仕様書をつくるために、これまでの改修工事で計測してきたマンションの工事仕様書をもとにしながら、毎日マンション内のさまざま部分をメジャーで計測して回ったという佐藤さん。これまでの改修工事を自分の目で確かめて経験してきた知識がここでも役立っています。

マンションの外壁には、インターホン、火災報知機ベルや電話・テレビ端子盤BOXなどのさまざまなものがあります。これらをひとつひとつチェックしてサイズを測り、どのように改修するかについて、仕様書に落とし込んでいきました。

40mm厚さの断熱材が共用廊下面の外壁に敷設されたマンション玄関。建築基準法の問題から共用廊下の壁面は40mm、外壁は75mm厚さとなっています。

西京極大門ハイツの外断熱工事

着工:2013年12月20日
竣工:2014年6月20日
総工事費:1億4,330万円(税別)
※ 総工事費の内、3分の1の4,758万円が補助される見込み
施工会社:大兼工務店(滋賀県東近江市)
工法:ウッドブリースRC外断熱工法(ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS))
高本コーポレーション(東京都千代田区)
断熱材(EPS)厚さ:外壁面75mm/共用廊下壁40mm

次のページでは、これら大規模な外断熱工事についての住民の合意形成のポイントについて、佐藤理事にお話を伺います。

次のページ:築38年のマンションが最新の外断熱工法を導入!合意形成の鍵

2014/08/12