845戸のマンションで自治会加入率100%を実現した、運営方法の秘訣とは!?

皆さん、こんにちは!東邦レオ株式会社Green×Town事業の吉田啓助です。

前回からスタートした「意外と知らない「自治会」の本当の姿とは」ですが、第一回目はいかがでしたでしょうか?

取材先のハイタウン塩浜第二住宅では、加入率UPのための様々な取り組みや、意外と知られていない様々な活動が印象的でした。築31年の団地ならではの様々なお話もとても興味深く、また私たち30~40代の自治への取り組みといった課題も見えて来たと思っています。

もしまだご覧になっていない方がいらっしゃれば、ぜひ第二回の前にご覧になってくださいね。
マンション住民も知らず知らずのうちに恩恵を受けている!?自治会の本当の話

今回は、築13年を迎える東京都稲城市にある845戸のマンション「若葉台ワルツの杜」の自治会の取り組みをご紹介します。自治会加入率100%を実現した方法や課題、これからの取組みなど今回も自治会の活動について深くお話頂きました。

10年以上も自治会長を努める秘訣についてもお話を伺っていますので、皆さんお楽しみに!ではインタビュースタートです。

加入率100%の自治会の秘密と課題

吉田:宜しくお願いします!

佐久間さん:宜しくお願いします。

吉田:まず若葉台ワルツの杜自治会の自治会加入状況を教えて下さい。

佐久間さん:はい、実は私たちの自治会は加入率100%なのです。

吉田:100%ですか!?それは初めて伺いました。どのような過程でそうなったのですか?

佐久間さん:良い面も悪い面もありますが、私たちの自治会は、自治会規約の中で、会費無料で居住者全員が自治会の会員になると定めています。という意味での「自治会加入率100%」です。このマンションができあがった時、はじめは先にできた理事会の中に自治会機能も有していました。

その中で、今後自治会運営をどうするか?という話し合いを行い、会員募集を行うのも大変ですし、資源ゴミ回収の費用で、ある程度運営費用を賄っていけるという算段が立ったため、このような判断をしました。今は、理事会から分離独立して、自主運営しています。

吉田:それは画期的ですね。確かに自治会運営に必要な費用をまかなえてしまえば、会費ゼロでも住民すべてが会員という方が良さそうです。

佐久間さん:私も、以前から自治会主催の祭りで、「会員・非会員で待遇をどうするか?」といったことで揉めたりしている他自治会の話を聞いていて、実際には区別は付けられない事はわかっていました。そのため、すべての住民が自治会に加入することで、そういった事を考えなくて良いのは大きなメリットだったと思っています。

ただ、デメリットもあり、会費無料で住民すべてが自治会員ということで、自分が自治会の会員だという自覚が薄くなってしまうのですね。この点を今後どうすれば良いかが、もっぱらの課題だと感じています。多分、「今から会費を取ります」って言ったら、会員が2割程度になってしまうんじゃないかなって思いますよ(笑)

吉田:確かに会費ゼロで自動的に会員になると、自覚を持つという面では難しいですね。何か自治会としてのアピールは行っているのですか?

佐久間さん:自治会主催のイベントで言うと、年に2回、「春のワルツ祭」と「冬のクリスマスイベント」を実施しています。そういった中で自治会活動のPRはしていますよ。

東邦レオさんにも手伝ってもらっていますが、その他に花壇作りイベントなど、これまでとは違う取り組みも積極的に開催して、更にPRしていこうとは考えています。

ワルツ祭りの様子

整備された花壇

フラワーアレンジメントの様子

吉田:他の理事会や自治会では、住民の皆さんにも興味・関心が高い防災をテーマに取り組もうというところがあります。佐久間さんのところではいかがですか?

佐久間さん:私たちも力を入れていこうと思っています。ある一定規模のマンションになると、独立した自主防災組織を作ることが義務付けられているため、自治会としてはその自主防災組織とダイレクトに連絡をとってやりとりしています。そのため、ここでは自治会メインというよりは、自主防災組織と連携を取りながら進めるという形になりますね。

吉田:そこも違うのですね。私が住んでいるところでは、自治会がその地域の防災も担っている形でした。本当に様々な形があるのですね。では、やはり自治会活動としては、住民同士のコミュニティづくりがメインの活動になるのですか?

佐久間さん:そうですね。私たちのところも例外ではないのですが、マンションは10年位経つと住民間トラブルが増えてくる傾向にあると思います。皆ある程度住んで、慣れてくるという面があるのでしょうね。

特に、音や匂いといった、個人で感じ方が異なる問題が難しいのです。実際にそういった問題があれば、管理会社や理事会と連携を取り対応をどうするか?といった話し合いをしているのですが、根底にあるのはコミュニケーション不足だと思っています。顔を合わさない、交流が少ないということが、そのような問題を生み出していると考えています。

まぁ、マンション自体が他人との関わりがないというから、という事で選んで住む人もいるので、難しい部分もありますけど。

吉田:まさにコミュニティが暮らしやすさに繋がる部分ですね。先程も新たなイベントを開催するといったお話がありましたが、それ以外にもコミュニティが広がる工夫はされているのですか?

佐久間さん:そうですね。今、この若葉台ワルツの杜は全部で8棟あるのですが、やりながら思っている事は、全棟を対象にすると「大きすぎる」ということでしょうか。すべてをまとめて考えては、なかなか難しいものです。そこで、今後は棟ごとに取り組んでいくのも手かと考えています。小規模にして考えれば、何をしてもらいたいかといったニーズもわかるし、同じ屋根の下同士のほうが、やりやすくもなりますからね。

吉田:棟別は面白いアイデアですね。私が住んでいる団地でも低層棟同士で集まる交流会などがあったりして、そのほうが交流しやすいというイメージがあります。

佐久間さん:あまり棟別に行うことだけを優先してもいけないとは思うので、全体と棟別のバランスを取らなくてはいけないと思っています。懇親会などを開催し、運営しやすい環境をつくりながら、たとえばコミュニティや助けあいという面では棟別、管理については全体といった形になると良いと思っています。

また、こういったテーマに取り組めるようになったのも、自治会と理事会の役員が相互に兼任することで連携が取れるようになってきたのも大きいと思いますね。いまでは、棟毎のアンケート実施といったマンパワーがかかる事も、自治会、理事会、自主防災本部の代表を棟別で決めて運営していこうという話になっています。

吉田:ちなみに、この自治会運営に佐久間さんは長く携わられているのですか?

佐久間さん:私は2代目の自治会長で、もうかれこれ10年やっています(笑)。私が理事会の理事長を務める前年の理事会で自治会が発足したのですが、私が理事会を退くときに、自治会は独立させた方がよいと思って分離しました。

ちなみに、そのときの理事で私の家の隣に住んでいる方と、「杜の会」というシニアの方たちの集まり(シルバークラブ)を立ち上げ、そことも長年連携を図っています。

吉田:もう10年もやられているのですね!?やり始めたきっかけはどういったことですか?

佐久間さん:自治会を立ち上げる前まで、理事会の中に3年位いたのですが、これだけ世帯数が多いと理事会の仕事は大変だという事が分かってきたのです(笑)

そういった中で、コミュニティに関わる業務を理事会から切り離し、自治会でその業務を請け負うことにしたのです。まあ、コミュニティに携わる自治会が逆に面白いという事もありましたけどね。イベントの企画も苦でなかったですし、地区のお祭りを手伝うことも楽しかったので。

自治会は、当時の仲の良い同期の理事何人かと一緒に始めました。それも継続している要因ですかね。今は、いろいろなところで依頼を頂いたらまずはお受けするようにしています。たとえば、稲城市自治会連合会の副会長もやらせてもらっています。(稲城市全体で40弱の自治会があり、その内27自治会が加盟する団体)

吉田:自治会の運営組織について改めて教えて下さい。

佐久間さん:自治会役員は11名です。あわせて、自治会サポーターが10名位いて、総勢20名ほどで運営しています。
役員の世代は、40代4人、50代3人、残りは60代以上という状況ですね。皆、結構長く携わってもらっていて、半分は設立当初からいる人達ですよ。

吉田:40代の方もいらっしゃるのですね。先程の話から気にはなっていたのですが、こちらのマンションは小さいお子さんも沢山いらっしゃると思います。子ども会は無いのですか?

佐久間さん:うーん、そうですね。正直、子ども会は難しいと思っています。なにせ原動力となる子育て世代が仕事や子育てで忙しい時期ですから。それよりは、婦人会やお母さんの会を先につくっていった方が良いと思っています。

ただPTAなど、ある程度義務感を持って参加する人は多いですけど、地域活動のような完全ボランティアでは難しい状況がありますね。また傾向として、仲の良い友達同士で集まるサークルのようなものだと積極的になる人もいますが、多くの人を巻き込んでの運営となると手を挙げる人はなかなかいないのが実情です。

実際に、ある企画で30人位お母さんたちが集まるサークルのような取り組みがあったのですが、今後この活動を広げたいので、自治会で企画・運営をやってもらえないかという依頼を受けたことがあります。

自治会としては、主体がお母さんたちで自治会がサポートという形であればできるのですが、結局はすべてをお任せしたいという話になるので、どちらも手が回らないと言った感じになってしまうのですよね。

吉田:確かに若い人たちの自治会参加は、多くのところで大きなテーマというか課題になっていますよね。

佐久間さん:結局子ども会で何やる?となると、結局はイベントという形になると思いますが、今では学校や他の地域団体(青少年育成地区委員会や体育振興会等)で結構企画して色んな事をやっているので、新たに自治会がやるまでもないという事もあります。また、PTA等に働きかけて動いてくださいといった方が早いという事もありますので、無理に作ってもというのが正直な感覚です。

吉田:良く分かりました。ありがとうございます。となると、今後のテーマはやはり防災になるということですね。

防災訓練の様子

佐久間さん:そうですね。みんなが集まりやすいテーマが、私も防災だと思っていますよ。最近では、防災イベントに100名を超える人が集まるようになっていますしね

実際に東日本大震災の時は、エレベーターが止まっただけで大変な事になってしまいました。そういった教訓を活かして、今は防災訓練の一環としてとして各戸の安全を確認するため、ベランダに「うちは無事ですよ!」という目印(市指定の黄色いゴミ袋)を掲示する「黄色いゴミ袋大作戦」いうのをやっています。

最初は試験的に3棟だけで実施したのですが、3年目の今年は8棟全棟で実施し、845世帯中93%の人が掲示に協力してくれるところまで来ました。これは嬉しかったというか奇跡だなって思いましたね(笑)。

吉田:全体の80%ですか!?凄いですね。何か仕掛けをされたのですか?

佐久間さん:フェイス・トゥ・フェイスですよ。自主防災の隊員や自治会役員が全戸を回って、ゴミ袋を配り説明に回ったのが一番大きかったと思います。このフェイス・トゥ・フェイスは色んなところに効果があって、先日の大雪の際には、雪かきに大勢の人が出てきてくれました。ご近所で顔見知りになるって大切なことなんですね。

「黄色いゴミ袋大作戦」の説明で各戸にお伺いするときに、当初は色んな事を言われるのかなと思っていたのですが、会いに行くと「いつもご苦労さまです。協力します」と言ってくれる人がほとんどでした。またあわせて、どこにどんな人が住んでいるという事が分かってくるので、やはり労を惜しまず、一軒一軒訪問するのが良いなと実感しました。たとえば14Fに老夫婦がお二人だけで住んでいて、何かあったらどうするのか?ということも分かり、準備もできますから。

吉田:フェイス・トゥ・フェイスですか。地道な努力が実を結ぶのですね。

佐久間さん:本当はそこまでしなくても、ある程度状況がわかれば良いのかもしれませんが、いまは個人情報保護の件もあって、名簿に必要な情報を収集するのが難しい環境にあります。「情報の管理は本当に大丈夫か?」と言われると、そこから話が前に進まなくなってしまいますよね。そういった場面でも、フェイス・トゥ・フェイスであれば、本人に説明できますし、同意も得られやすいですからね。

防災を考えると、名簿作りは早急に動き出さないと行けないと思っています。住民の皆さんには、基本的には「協力してもいいよ」という雰囲気はありますので、今後は住民の皆さんに積極的に関わってもらえるように働きかけることが、自治会や自主防災組織の仕事だと思っています。「住民の方が動かない!」って言っているだけでは何も変わらないですからね。

吉田:素晴らしいですね。佐久間さんのこの情熱はどこから来るのですか?

佐久間さん:端的に言えば、自分が楽しいからやっているのですよね。そうでなければできません(笑)。いま、植栽担当の理事もやっていますが、正直植栽が好きというわけではないです。ただ、生活する場所でいえば景観や環境って大事なテーマだし、花壇を一つでも自治会のメンバーで作るとかできたら楽しいじゃないですか。そういった感覚ですね。

吉田:大変だと思う事は無いのですか?

佐久間さん:それもひっくるめて楽しい、といった感覚ですね。結構自分的にはいい加減な人間なので、やりたいと思う事をやっているし(笑)。進め方も、私が良いと思う企画を最初に出して叩いてもらうというスタイルを取っています。現役時代の仕事の進め方がそうだったからというのもありますけど。

でも、会社とは違って、より人との連携を密にしなければならないと思っています。そこが一番難しいとは思いますが。また自分のパワーにも限界がありますから、この点からも住民同士の協力体制・連携づくりをしっかり築いていきたいとも思っています。

吉田:色々とお話を伺わせて頂きありがとうございました。防災やフェイス・トゥ・フェイスといった重要なキーワードを頂き、自治会の新たな可能性も見えた気がします。

佐久間さん:こちらこそありがとうございました!


インタビューはここまでです。皆さんいかがでしたでしょうか?

デジタル化がどんなに進んでも、最後はフェイス・トゥ・フェイスという超アナログが効果的というのがとても印象的でした。
多くの人が一緒に暮らすマンションでは、こういった地道な活動がやはり重要なのだという事が分かりました。

逆に言えば数が限られているわけですから頑張れば全員と顔を合わせることも出来るということで、6月以降自治会役員デビュー予定の私としても早速取り入れてチャレンジしてみたいと思っています。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました!

2014/05/22

プロフィール

吉田 啓助

千葉大学園芸学部卒業後、東邦レオ株式会社に入社。


30年以上続く伝統ある事業「緑化関連事業部」の責任者として、東京ドーム10個分と言う日本で最も多くの屋上緑化造成や、5年で300件以上の植栽管理物件創出に携わる傍ら、国内最大規模の経営大学院「グロービス」で経営学修士(MBA)を取得した。

自身が社宅育ちであった経験から、これからの集合住宅はコミュニティの力でより魅力的になる!をモットーに、分譲マンションの暮らしに特化した事業「Green×Town事業」を立上げる。200件以上のマンション管理組合への提案と、コミュニティを生み出す植栽管理サービス「クリエイティブグリーン」の実践など、マンションの暮らしの最前線で活動中。