NPO×地域住民で団地再生に取り組む!~千葉・海浜ニュータウン10年の歴史~

住まいのリペア・リフォーム、コミュニティ・アートなどの6つの柱を掲げて活動

陶守さん「理事長である服部先生の考えも大変先進的だったのですが、魅力あるまちづくりにはアートは絶対に必要だと当初から言われていまして、それも含めて、CR3には6つの活動の柱があります」

陶守さん「6つの活動の柱は、①住まいのリペア・リフォーム、②コミュニティ・暮らしサポート、③団地学校、④コミュニティ・アート、⑤エリア経済の活性化、⑥住まい・街再生サポートとなります。コミュニティ・アートと団地学校は、2009年頃から始まりました」

東さん「2009年に老朽化したショッピングセンターを再利用した、地域のアート拠点として“アート・コミュニティ美浜”を開設しました。施設には、アトリエ、作品を展示・販売するギャラリー、フリースペースを設けて、千葉で活動するアーティストを優先的に受け入れて、地域のアーティストが創作と販売・展示活動を行っています」

衰退していた高浜ショッピングセンターを取り壊して開設されました。地元のアーティストが入居しており、「美浜の団地発、団地標準のオリジナル・アート」を目指します。

アート・コミュニティ美浜
http://www.ckkk.jp/publics/index/11/

創作活動を行う住民から、団地内の自室ではアトリエとして不十分、発表の場がないなどの声を吸い上げた結果できあがった「アート・コミュニティ美浜」のアトリエはほぼ満室状態。年1回のアート・フェスタを開催するなど、地域に根付いたアート活動が展開されています。

アート、DIY、地域活動などのテーマ毎に住民が先生になる!「団地学校」

住民が先生となる「団地学校」の様子

住民が先生になる「団地学校」という取り組みも、長年続いている人気の活動です。これは、多彩な趣味や技能を持つ住民が先生となり、お料理、ものづくり、語学教室などさまざまなテーマの講座を開催するものです。地域の場所を活用して、陶芸教室や日本語教室などの学びの場を提供。すでに10年以上にわたって教室を続けている住民もいるそうです。

陶守さん「“団地学校”は、住民先生の皆さんの自主性に委ねている部分が大きいです。先生を募集する際にも、“お手伝いしてください”ではなく、“先生を募集しています”という言い方にして、ご自分で教えたいことを考えて実施していただくようにしています」

地域密着型の生活&文化スクール「団地学校」のリーフレット。教室の内容は、絵画、ヨーガ、フラダンス、手芸、DIY、お料理、中にはオークションの利用方法までありました。

集合住宅はさまざまな技能や特技を持った人材の宝庫ですが、「団地学校」の取り組みは、教えたい人・教わりたい人の理想的なマッチング事例といえます。

子育て支援やシニアの居場所づくり、多世代交流拠点「にこりこ」

多世代交流ステーション「にこりこ」。中では小さい子ども達が楽しげに遊んでいました。

実践的で多彩な取り組みを行っているCR3ですが、2013年からは多世代の住民の居場所づくりとして、髙州第一ショッピングセンター内の空き商店を活用して多世代交流ステーション「にこりこ」を開設しました。

陶守さん「買い物帰りにぶらっと立ち寄れるような憩いの場としての役割のほか、ワンコインで受講できるリンパドレナージュやウクレレギターのワークショップなどのイベントも開催しています。こちらの教室も団地学校の先生によるものです」

ウクレレギターの先生は40代の男性住民。自分から率先して教えたいと言ってきたそうです。受け入れる場ができると、自ら名乗りを上げてくる住民が増えてきたのも、ポジティブな連鎖効果でした。

陶守さんご自身も、髙州団地に住んで子育てをしている真っ最中とのこと。子連れで近くへ出かけても、挨拶する顔見知りがいるという住環境に満足しているそうです。地域に顔見知りがいる暮らしは、子育てに理想的。最近では、リノベーションされた団地の部屋が若い世代に人気など、少しずつ地域の活気がとりもどされつつあるようです。

市民の力で運営していく「市民コミュニティ・ビジネス」

一級建築士でもあるマネージャーの東さんは、最近は団地の遊び場の改修事業を受け持っているそうです。

東さん「700戸の団地の共有部分である8ヶ所の遊び場を改修したいという案件でした。昔ながらの箱ブランコのあるような昭和の遊び場が老朽化してきており、住民アンケートやワークショップ、滑り台のデザイン案を公募しながら、住民みんなで遊び場を構築するマスタープランづくりを行い、改修を行っているところです」

団地内の遊び場の改修、商店の店主が先生になって果実酒の漬け方を教えたりする「商店街教室」、管理組合向けコンサルティングやセミナーを開催するなど、CR3の地域再生活動は、全国の自治体や団地の管理組合から注目を浴びています。

東さん「CR3と住民により市民コミュニティ・ビジネスとして10年以上にわたって推進してきましたが、今後は市民の力で独立して経営していけるのが理想です。美浜アート・コミュニティなどは、私達の手からも離れつつあり、独立した活動で運営できています。今後、これら市民主導型のさまざまな活動が独立した、骨太な地域再生事業のモデルとして、地域再生に悩む他の場所で役立てていってもらえればいいですね」

NPO法人ちば地域再生リサーチ

ちば地域再生リサーチ編『市民コミュニティ・ビジネスの現場 建て替えない団地再生のマネジメント』(2012年9月発刊、彰国社)

NPO法人ちば地域再生リサーチは、千葉大学教官・大学院生による専門家グループが設立。1970年代から開発された人口11万人の大規模団地である千葉・海浜ニュータウンの高洲・高浜地区において、10年以上にわたってまちづくり・地域再生の取り組みを行っている。

地域住民との密接な連携による、課題解決型のさまざまな活動は、全国の自治体や地域再生に関わる団体から注目されている。

http://cr3.jp


CR3の活動は、建て替えないという選択を行った団地が、いかに地域の人材を取り込みながら、魅力的なまちづくり再生に挑戦できるのかという好事例でした。そして、その取り組みの基本は、地域の住民一人ひとりとの関わりからスタートしたものばかり。地域再生という大きな課題も、草の根的な人的ネットワークから、解決につながっていくのだということがよくわかりました。

2015/04/15