大学生も学んでる!~東洋大学でマンションの長期修繕計画や理事会運営を考える授業を実施~

マンションの長期修繕計画や理事会の運営方法についてお悩みの方も多いはず。しかしそれらについて学ぶ機会はあまりありません。
東洋大学建築学科の学生向け演習の数コマで、マンションの長期修繕計画と改修設計について教える授業があるという話を伺い、早速その内容を取材しました。きっとマンション住民にも役立つことがあるのでは?

建築学科の大学生向けの演習に、円滑な管理組合運営のヒント

マンションについて学べる演習は、東洋大学で田村哲夫さんが受け持つ「マンションの長期修繕計画と改修設計」という2回の講義です。
これは、建築学科 秋山哲一教授による「建築プロジェクトマネジメント演習」という演習の中で、実務の理解をより深めるために専門家を招いた特別講義のひとつ。演習全体は、建築学科の3年生の学生向けに、建築・住宅の生産過程における設計・監理業務の実務やプロジェクトマネジメントの仕組みについて総合的に教えています。

マンション管理士・建築士の田村哲夫さんに、「マンションの長期修繕計画と改修設計」という2回の講義についてお話を伺いました。

授業を教える田村さんは、以前マンション・ラボでも、コミュニティラジオでマンション管理をテーマにした番組を放送している活動をご紹介しました。NPOマンションサポートネットの理事長として、マンション管理に関するさまざまな取り組みを行っていらっしゃいます。

マンション管理を楽しくスムーズにするために!ラジオのひととき

マンションサポートネット

田村さん「2日間の授業では、管理組合の話し合いのロールプレイングや、長期修繕計画のシミュレーション、住民へ呼びかけるためのポスターづくりなどについて、わかりやすく実務を学ばせます。
いままでのマンションづくりはハードのことだけを考えていればよかったけれど、実は住民同士のコミュニケーションの重要性や集住の目的を明確化するソフトが不足しています。ハードとソフトを含めてすべてが建築なのだということを、建築学科の学生に知ってもらいたいと考えています」

呼び名と「です・ます」調で話し合う、管理組合のロールプレイング

田村さんは、授業の最初に必ず「あなたの今日の名前(ペンネーム)を決めてください」と学生に指示します。名前は、オバマとかキャシー、なんでもOK。そして授業ではその名前で呼び合い、「です・ます」調で話すようにルールを決めます。

田村さん「管理組合の初会合の話し合いのイメージで設定しています。初対面の大人同士が初めて集まって話し合うシチュエーション。しかし、相手の背景や仕事・肩書きのことなどは知らない。だから匿名性のある呼び名を使うようにしてもらいます。学生なので、男性なら一人称を“わたし”にして話すようにすると、語尾が自然と変わってきて大人同士の話し合いになってくるんです」

授業を受ける学生は25名ほど。3〜5名で1グループをつくって「よいマンションとは何か」について意見交換。そして田村さんからは、管理組合の意義や現在のマンションの問題点、そしてその話し合いの手法をたくさんのたとえ話を用いながら説明していきます。

田村さん「学生達は、建築については学んでいますが、購入したマンションを共有財産としてマネージメントを行っている管理組合の役割や問題点はまだよくわかっていませんので、その点を説明します。マンションの大規模修繕工事をひとつのきっかけにして、よりよいマンションにしていくためのヒントを探してもらいます」

ピンチをチャンスに変える!話し合いのロールプレイング

管理組合のロールプレイングでは、「大規模修繕工事中の落下事故により住戸の窓を割ってしまった」という問題について、関係者の話し合いの場を演じます。

管理組合理事長、被害住戸の家族、設計監理者、工事施工会社の現場代理人、その上司という5名の役割を担った学生が、いかにこの問題の解決点を探っていくのかが命題です。

田村さん「ロールプレイングによってそれぞれの立場を知って貰うということもありますし、問題解決のための話し合いの場を体験する意義もあります。施工会社の上司役を担当した学生は、いきなり“申し訳ありませんでした!”と平謝りするところから始めていましたよ(笑)。」

【学生の感想】

やなかさん「あきらかにこちらが悪い状況でも、なんとか解決策を出さなければいけないのが大変だった」

ひろさん「マンションに関する問題についてよりリアルに考えさせられた」

役を交換して何回かロールプレイングすることで、それぞれの立場や本当に解決すべき課題を見つけていきます。こうしたロールプレイングを、管理組合の理事同士でワークショップ的に行ってみると役立ちそうです。私達は、大人になってからあまり話し合いの場の技術というものを学ぶ機会がありませんでした。田村さんは、多数決は問題解決の最終手段であり、内部の矛盾を当事者が解決していくことに意義があるのだと言います。

授業では意見交換の手法や工夫点をわかりやすくまとめてあります。このアドバイス、理事会の場で貼り出しておくと役立ちそうな気がします。

田村さん「話し合いの場では、いくつかのキーワードがあります。ひとつは、相手が弱い立場の場合には配慮する“合理的配慮”。これは車椅子をバスに乗せることを合法化したアメリカの法律からきています。そして、相手を受容するための “肯定的関心”と、相手に感心を持つ “共感的理解”。
その3つを持つためには、森で獲物を狩るために大きな耳を持つヒグマのように、自分も大きな耳を持って相手の話を聞かないといけないといつも学生たちに話しています」

大人の話し合いの場で、私達も大きな耳をもって相手の話を聞くことができているでしょうか?

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2015/03/16