本と図書館から始めるマンションのコミュニティづくり④~情報ステーション~

プラウド船橋コミュニティ図書館

シリーズ連載最後の第4回目は、船橋を中心に民間図書館の運営を行っているNPO情報ステーションにお話を伺いました。情報ステーションの民間図書館は、マンションや団地の共有施設にも入っています。集合住宅での民間図書館はどのような運営体制になっているのでしょうか?

情報ステーション

特定非営利活動法人 情報ステーションは、千葉県船橋市を中心に民間図書館やイベントサポート事業を通じて地域住民の交流の場を提供しています。現在、開設した民間図書館の数は35箇所(2014年12月現在)。駅前ビル、ショッピングモール、老人ホーム、商店、マンション、カフェなど、さまざまな場所で民間図書館が生まれています。2014年、環境大臣賞、マイクロ・ライブラリーアワード、ライブラリーオブザイヤー2014優秀賞受賞。

情報ステーション
http://www.infosta.org

夜間開館、お喋りや飲食もOK、自由なルールの民間図書館づくり

情報ステーション代表の岡直樹さんと、理事の成瀬麦彦さん。

情報ステーション代表の岡直樹さんと成瀬麦彦さんに、サービスを提供しているプラウド船橋コミュニティ図書館でお話を伺いました。

情報ステーションは、船橋を中心にブックスポットの拠点を増やしているNPOです。代表の岡さんは、船橋生まれ・船橋育ち。大学生の頃に船橋にもっと人が集まれる場をつくろうと考え、若い子からお年寄りまでが集える場として、駅前の商業ビルに民間図書館をつくりました。地域の皆さんの支援がつながってきあがっていきました。

岡さん「公立図書館と、情報ステーションの民間図書館の違うところは地域のボランティアさんが支えてくれている点です。その後、昼間の高齢者、帰宅時のサラリーマンや学生が利用してくれるようになりました。地元の公立図書館もあるのに、なぜこんな小さな民間図書館を利用してくれるのかというと、それはきっとふだんの生活導線にあった立地性と、運営しているボランティアの方と利用者が自然と顔見知りになって親交を深めていったからでしょうね」

公立図書館と違って夜遅くまで開いている。そして、なによりボランティアメンバーが、個々の個性で利用客に接したことにより、誰もが気軽に立ち寄れるスポットに育っていきました。ボランティアメンバーが、お菓子をみんなにお裾分けしたり、旅行のお土産を配る図書館って素敵ですよね。

岡さん「公立図書館と民間図書館は棲み分けしていくといいと思います。我々は、自由に地域の人が集える場づくり。公共は、もっと文化的価値を創造していけばいいのではないでしょうか」

交流の場としての図書館を考えると、公立図書館にはない蔵書や自由なルールづくりなどで、逆に個性を浮き出していけばいいのかもしれません。

岡さん「公共図書館ではお喋りは禁止ですが、民間図書館は、お喋りも飲食も自由です。そもそも地域交流の場としての図書館ですから。目的が違うのですから、ルールも違っていいと思います。それが個性になっていくのではないでしょうか」

成瀬さん「情報ステーションの拠点には、年配のボランティアさんがたくさん集まってお手伝いしてくださるのですが、皆さんお土産やお菓子などを持参してくださって、和気あいあいとした雰囲気です。女性ボランティアメンバーは女子会活動するグループもあって楽しそうですよ。岡も僕も、のけ者なんですが(笑)」

マンション住民が共有する「プラウド船橋コミュニティ図書館」

プラウド船橋コミュニティ図書館。ブックスタンドを使った書籍の展示もライブラリーグループによるもの。

今回お話を伺った場所は、「プラウド船橋コミュニティ図書館」です。約112,000㎡の敷地にある一〜五街区のプラウド船橋1,500戸のマンション住民が共有する、独立したクラブハウスの1階にあります。この図書館を利用できるのはプラウド船橋のマンション住民だけです。

岡さん「プラウド船橋のクラブハウスには、計画段階から情報ステーションが図書館運営をお手伝いするかたちで入っています。また、五街区あるマンションの各共有施設にも、各棟の住民専用の図書館があります。私達が提供する蔵書の管理システムを入れていただいているので、もちろん他の民間図書館で返却いただいてもOKです」

成瀬さん「クラブハウスでは、我々の蔵書と入居者からの寄贈本を登録した2,000冊を配架しています」

この日は中学生くらいの女の子が勉強をしていました。セキュリティがしっかりしている共用施設で放課後を過ごすことができるので、親御さんも安心なのではないでしょうか。

クラブハウスにあるプラウド船橋コミュニティ図書館では、ライブラリーグループに所属する10名ほどの住民メンバーが定期的に会合を設けて図書館の本の配置や入れ替えなどについて話し合いながら活動しています。読み聞かせや夏休みの自由研究などのイベントも、ライブラリーグループで企画して実施しているそうです。

岡さん「我々がお手伝いしすぎてもいけないし、主体となるボランティアさんや住民の方々が自分達でうまく運営できる、丁度いいラインを見定めてやらせていただいています」

但し図書館は、並んでいる本の鮮度が重要。プラウド船橋の蔵書もありますが、貸し出し履歴から好まれるニーズを推測して、こちらのマンションで好まれそうなラインナップの本の入れ替えを定期的に行っています。

小さいお子さん向けの絵本も充実。図書館の一部にはキッズスペースがあります。

図書館の立地・場の性格によって異なる本の嗜好

図書館の立地条件や場所柄によっても、本のニーズは異なるそうで、たとえば駅から徒歩5分の図書館は60歳代の読者が中心、習志野市にある「袖ケ浦団地まいぷれ図書館」は利用者が70歳代中心なので、文庫ではなく文字の大きいハードカバーを中心にしたラインナップにするなど、きめ細かな蔵書の入れ替え配慮がなされています。マンションや団地など拠点毎に異なるニーズをしっかり分析して、好まれるジャンルを揃えていくのが、欠かせない仕事のようです。

船橋北口図書館に集まったシニアが先生になって、シニア向けパソコン教室を開催。

バーコードで簡単に貸し出しができる、情報ステーションのオリジナルシステム。ボランティアメンバーもお手伝いがしやすくなっています。

駅ビルにある「ふなばし駅前図書館」は、便利な乗り換え拠点にあり、貸し出しも返却も楽です。このほかショッピングセンター内にある図書館だったら、親子で楽しめる人気のアニメ絵本なども好まれます。

マンションで図書館をつくる際に注意すること

情報ステーションの岡さんに、マンションで図書館を開設する際の注意点をアドバイスいただきました。

岡さん「私達も、他のマンションから図書館をつくりたいというお申し出をよく受けます。たとえば当初からライブラリーが共用施設としてあるけれど活用されていないマンションからのご相談なども。ただ、管理組合に上げて理事全員のコンセンサスをとるのがなかなか大変なようです。一人の理事の方だけの熱い想いではなかなか実現しないのが現状です」

図書館がコミュニティを育むことに大いに役立つ可能性を秘めていることは、今回の取材で見えてきたことですが、まだまだコミュニティスペースとしての民間図書館への理解が深まっていないようです。どちらにしてもマンション内に関わることなので、管理組合の理事同士の話し合いで認証を得ることが大切です。

岡さん「私達が提案する民間図書館は、あくまで人が交流することが大きな目的です。たとえば、船橋北口図書館ではボランティアは9歳から79歳までの男女がお手伝いしてくださっています。ボランティアも含めそこに集った人達の発案から好きな本について語り合う図書館バーや、地方をテーマにした音楽と食事のイベントなど、さまざまな展開に広がっています」

図書館を交流の場と捉えれば、本を媒介にしたさまざまな取り組みの可能性が広がります。

岡さん「民間図書館は、地域の交流の場として、家でも職場でもないサードプレイス的な居場所として、うまく機能していくと理想的だと思います。田舎から届いた野菜をお裾分けする。旅行土産が手書きメモで残されている。保育園が終わった子どもたちが集まってくる。お煎餅や飴を置いていくおじいちゃんやおばあちゃんがいる。民間図書館は、すでにそんな多世代交流の場として活用されています。オープンなコミュニティで顔見知りをつくることが防災にもつながりますよね。いろいろな制約はあると思いますが、将来的には、マンションの図書館も、地域に開いたまちぐるみのコミュニティ拠点になっていくといいでしょう」

情報ステーションの魅力のポイント

●街中に地域交流の場としての民間図書館を増やして地域を活性化
駅前や住宅街、老人ホームや集合住宅などに、地域交流の場としての民間図書館を増やして、歩いて行ける距離で知り合いイベントを体験できます。地域活性化に役立つはずです。
●地元住民が気軽に参加できるボランティアの活用
参加しているボランティは9歳から79歳まで、多世代が気軽に集まって参加できる場となっています。
●空き室活用で地域の情報発信の場づくり
団地や商業施設の空き室・空き店舗を活用して、地域の情報発信・交流の場にしていくことができます。
●サードプレイスとしての居場所づくり
家庭でも職場でもない、第三の居場所づくりとして、民間図書館を機能させています。

本と図書館を活用したコミュニティづくりの可能性

今回のシリーズで、さまざまなかたちのマイクロ・ライブラリー活動を行っている方々にお話をお伺いしました。これら活動を参考にして、皆さんのマンションでも本を活用したコミュニティづくりにチャレンジしてみませんか?

たとえば、まずはマンション内でサークル的に気軽にスタート。

・マンション内有志で本を貸し借りする。
・誰かの部屋で、おすすめの本の話をする。

そこから段階的に、以下のようにマンション内で参加者を呼びかけていくのはどうでしょう?

・共有施設に本棚を設けてマンション内ライブラリーをつくる。
・共有施設に本棚をつくることからイベント化する。
・管理組合に図書委員を設ける。
・マンション内で不要本のリサイクルを行う。
・月に1回一箱図書館を開設する。

などなど。
マンション全体での取り組みから始めることが難しければ、マンション内の知人・友人数名から始めてもいいかもしれませんね。

マンションで図書館を設けることは、コミュニティづくりにきっと役立つはず。これから図書館づくりに取り組んでみようと考えているマンションの方は、ぜひマンション・ラボにご連絡ください。一緒にマンション図書館づくりを考えていきたいと思います!

2015/01/29