ヴェレーナ港北ニュータウンの管理組合に、マンション・コミュニティづくりのヒントを探る!

防災、防犯、子育て、高齢者対策、マンション・コミュニティに求めるものは人それぞれ。コミュニティのあるマンションに、その秘訣を伺うシリーズです。今回は、懇親会から居住者のつながりを深めた横浜市港北ニュータウンのマンションの事例です。

あなたの住んでいるマンションにコミュニティはありますか?

あなたは、マンションで出会ったら挨拶をする人はいますか?ご近所づきあいはできていますか?

コミュニティ、ソーシャル、シェアなど、いま社会全体で、人と人とがつながるムーブメントが育まれつつあります。しかし、自分が住むマンションでの人づきあいはどうでしょうか。

マンション・ラボでは、コミュニティづくりを育んでいる、またはこれから育もうとしているマンションの方々に体験談を伺って、これからのマンション・コミュニティづくりのヒントを探してまいります。

管理組合の仕事にも、ビジネス視点の「見える化」が必要

神奈川県横浜市の開発エリア港北ニュータウンの中でも、緑に囲まれたヨーロッパ風の外観でひときわ目立つマンション、ヴェレーナ港北ニュータウン。その理事長を担当されている鈴木さんに、現在進行形のマンション・コミュニティづくりについてお話を伺いました。

ヴェレーナ港北ニュータウン

場所:横浜市都筑区
戸数:346戸(10階地下1階建)
竣工:2008年

理事長の鈴木さんは、都内の大手IT企業にお勤めです。社内での担当部署は、組織風土改革担当。さまざまな部署を横断して、組織の風通しをよくし、人と人、チームとチームを組み合わせ、イノベーティブに新しいビジネスの仕組みを考えることがお仕事だそうです。

鈴木さんは理事長を担当すると、自分のマンション管理もITソリューションを活用して何かできることはないだろうか、というビジネス的な視点から、管理組合の仕事に取り組みを行いました。

「理事長になってから、同じような悩みを抱えている人やマンションはないかと、ネットでもいろいろと情報を検索してみました。ところが、マンション管理といえばこれだ!といえるサイトが見つからなかったんですね」と鈴木さん。

たとえば、理事会の虎の巻的な情報や、マンション管理組合のトラブルシューティングなど、マンション管理のコンシェルジュ的な情報サイトというのは、いくつかそれらしいもの見つかりますが、これぞというものが見当たりません。

また、過去の理事が作成してくれた引継ぎ資料も、効果的に共有する仕組みが無く、いままで蓄積されてきた情報がなかなか活用出来ない点も、ビジネスと共通の課題だと、鈴木さんは感じました。

たとえば、定期点検で中庭の照明が故障しているとの報告を受けたときのこと、実は数年前の理事会で修繕の見積もりをとっていましたが、その時は修理の合意に至らずに経過観察という状態が何年も続いています。

共用部の保全は管理組合の重要な業務のひとつですから当然すぐに修理すべきところですが、なぜ過去に修理を見送ったのか理由を調べる必要があります。

「もちろん決定事項は議事録を見ればわかりますし、管理会社がいますから担当者に聞けばある程度は教えてもらえるのですが、決定に至るまでの検討の経緯までとなると、やはり当事者に直接聞かないとわからなかったりするんですよね。」

鈴木さんがおっしゃるように、理事会の審議も「見える化」と「共有」が必要だと痛感するお話です。

自分の資産だったらやっている「あたりまえのこと」が出来ていない

「以前に決まっていた話なのでとか、相見積もりをとらないで提示通りの金額を支払うとか、一般的な管理組合の運営には不文律みたいなものが存在しがちですが、これはビジネスの世界ではあり得ません。管理組合というのは、自分自身の資産を管理する存在です。自分の資産のことなのに、あたりまえのことができていないというのが問題なのではないでしょうか」。

鈴木さんが指摘されるように、ビジネスの視点で管理組合の運営について考えて見ると、いろいろな問題点に気付かされます。

「管理組合の基準をスタンダード化していく必要があるのでしょう。マンション管理の運営の軸として、理事が決定してきたことをきちんと“見える化”して伝承していく術がない。それが現代のマンション全般の問題点だと思います」。

「ビジネスのたとえばかりで恐縮ですが、ソフトウェアの品質管理では、一定の品質水準に達しているのはあたりまえです。それを下回ると欠陥品ですから。さらに付加価値で競合商品と勝負するには、それ以上の品質で魅力を出さないといけません。今後のマンション管理に必要な付加価値というのは、コミュニティのよさなどのソフト的な魅力なのかもしれませんね」。

「マンションは管理を買う」とよく言われていますが、これからのマンションの資産価値は、いいコミュニティがあるかどうかが、判断基準のひとつになってくるのかもしれません。

懇親会には、家族ぐるみで参加してもらうことがこだわり

家族も交えての懇親会の様子

人間関係に変化が生まれるのは、互いを個人として認識したときだと言います。マンション・コミュニティもまさに同じで、マンションの理事同士のままではなく、1対1の個人として認識したときに、会話が生まれ、個人のつきあいが始まります。理事長の鈴木さんは、積極的にそうしたつながりの場を持つように心がけて行動しているそうです。

「先日思いついて、管理組合理事の懇親会をやりませんかと皆に提案してみました。理事15名のうち、6名の方が参加してくれました。私なりのこだわりとして、皆さんのご家族もお連れしてくださいとお願いしました。理事の仕事をしているとわかるんですが、理事は、仕事の傍ら、土日や平日の夜、家族と過ごす時間を割いて、管理組合の仕事をしている訳です。支えてくれる家族の理解がないとどうしようもないですからね」。

懇親会では、奥様やお子さん同士でも会話が弾み、その後のコミュニケーションが円滑になったのはいうまでもありません。管理組合の理事同士で知り合ったことをきっかけに、家族にまでその輪を広げていくのは、すぐにでも見習いたいアイデアです。

納涼祭や餅つき大会、お祭り好きなマンション

ヴェレーナ港北ニュータウンでは、管理費からコミュニティ形成費を捻出し、コミュニティ委員会を立ち上げました。納涼祭や餅つき大会などの季節のイベントを通して、いま非常にいいコミュニティのつながりが育まれています。

納涼祭の屋台も住民の手作りです

「うちのマンションの住民がお祭り好きなのかもしれませんが、納涼会や餅つきは、キラーコンテンツですね(笑)。お祭りなら協力するという方もいらっしゃいますし、昨年の餅つき大会には約200名の参加者がありました」。

餅つきは世代を超えて楽しめるイベントです

「納涼祭のチラシづくりを担当したので私がWordで作成してみたら、ビジネス文書みたいだったのか、妻にダメ出しされて作り替えられました。さすがにこういう部分ではビジネスで培った技術は通用しませんね(笑)」。

納涼会運営に携わった50名ほどのメンバーとは、いまでも年に2〜3回、パーティルームで親睦会をやるほど親しくなったそうです。一緒にひとつのイベントをつくりあげることが、居住者同士の絆を深めることにもつながったのです。

納涼祭での受付風景。皆さん、楽しそうですね!

地域と関わる、マンションの地縁づくり

また、ヴェレーナ港北ニュータウンでは、地域の連合町内会自治会とも積極的に連携してコミュニティ活動に関わっています。

最近行われた地域の自治会が主催する公園の草むしりには、10人の住民が参加しました。鈴木さんは自治会長になってから、地域の人が自分たちのマンションをどう思っているのかがわかるようになってきたといいます。

「それまでは、近所の人から、マンションの子どもが公園の花壇を踏み荒らすなんていわれたりもしていたんですが、住民一緒に清掃に参加して言葉を交わして顔を知って、1対1の個のつきあいになれば違ってくるんです。知り合えば、集団としての“あそこのマンションの子ども”というラベルではなく、“○○さんの子ども”になります。そういうインフォーマルなコミュニケーションってとても大切ですね」。

人と人のつながりの後から、何かが生まれてくる

「仕事で、何かと何かを組みあわせて、新しいものを生み出すということを常に考えていますが、その基本にあるのは、人です。人と人とがつながって、互いの信頼感が生まれたあとに、シナジー(相乗作用)が生まれてきます。そこには、さまざまな可能性があります。

マンション・コミュニティも同じで、管理組合の理事同士、ある意味フォーマルに知り合った関係ですが、懇親会などのインフォーマルな場で喋るようになると、徐々にプライベートのことも知って人間関係が深まってきます。そこから、きっといろいろなコミュニティの種みたいなものが生まれてくるのだと思います」と鈴木さん。

人と人とがつながり、その後から何かが生まれてくる。
その言葉には、コミュニティの無限の可能性を感じますね。今後のコミュニティ活動が楽しみなヴェレーナ港北ニュータウンです。

2014/08/07