“本”が人をつなぐ、マンションコミュニティの“ほんとのつながり”

以前の記事でご紹介した港区のご近所イノベータ養成講座から生まれた「本とほんとコミュニティ」の活動は、マンションで本を媒介にして人と人の心をつなぐ画期的な試みです。今回その活動をご紹介し、マンションコミュニティで“本”が果たしてくれる役割について一緒に考えてみましょう。

“本”を媒介にしたコミュニケーションづくり

「本とほんとコミュニティ」は、コニーさん、アンさん、アコさん、そしてコニーさんの奥様のユミエさんが中心になって活動しています。コニーさん、アンさん、アコさんは、港区が開講した「ご近所イノベータ養成講座」で知り合った第一期生のメンバーです。

「ご近所イノベータ養成講座」は、地域で人と人をつなげ、コミュニティを活性化させるために活躍する“人財(この講座では、人が財産であるという意味をこめて「人財」と呼んでいます)”養成のために、港区と慶應義塾大学が協働で開講した講座です。

詳しくはマンション・ラボの記事をご覧ください。

地域活性化の人財「ご近所イノベータ」を育てる!港区と慶應義塾大学による人財養成講座

ここで出会った3人のメンバーが、「ご近所イノベータ養成講座」で地域イノベーションのためのアイデアとして発案したプロジェクトが、「本とほんとコミュニティ」です。

コニーさんによると、高層マンションの住民が増加する芝浦港南地区で、マンションコミュニティのつきあいが希薄なことや、高齢者が孤立しがちなこと、旧住民との接点が少ないことを課題として捉え、マンション内で気軽に参加できる交流会を実施するために“本”を媒介にしたコミュニケーションイベントを発案したそうです。

“本”は、世代を問わず共通の話題として交流を深めることができる、ある意味、万能メディア的な存在です。初対面の人とでも好きな本の話題だと、すぐに意気投合して会話が弾んでいきますよね。

その“本”をブックチェンジで交換したり、ブックカフェで話し合ったりすることで、“本”が人をつなぎ、人の「ほんと」を引き出してくれるのだと、コニーさんは言います。

たとえば同じマンションに住んでいても、顔も名前も知らなかった居住者同士が、共有部分でのブックチェンジイベントにより、“本”をきっかけにして、出会い、話が弾む。そんな自然な交流のかたちが実現すれば、きっとマンションコミュニティの輪が広がるはずです。ちょっとワクワクしませんか?

そこで今回は、昨年「本とほんとコミュニティ」が港区の2つのマンションで実施したブックチェンジイベントをご紹介いたします。

ブックチェンジ+子どもへの読み聞かせや遊びを行う「ママ子ワークショップ」

ママ子ワークショップ詳細

実地日:2013年11月30日(土)
場 所:芝浦アイランドケープタワー
タイムスケジュール
11:30〜14:30 ブックチェンジコーナー
13:00〜13:50 読み聞かせ
14:00〜14:55 ママ子ワークショップ

昨年の11月に開催された芝浦アイランドケープタワーでのブックチェンジイベントでは、理事の方々が中心になって約100冊の本を用意されました。たとえば理事の方々が10名いれば、お一人10冊持ち寄っても100冊の本が用意できます。どの家庭にもあるものだから、簡単に持ち寄って集めることができますね。

「こうしたイベントは定期的に継続して開催することで意味を持ってきます。だから簡単に誰にでも運営できることが大切なんです」とコニーさん。

今回のマンションでは、小さいお子さんのいる子育て世代が多いということもあり、絵本が多く集まっていました。

ちょうどこの日は、朝から防災訓練が実施されたり、エントランスでの物品販売が行われていたりと大賑わい。1階エレベーターホールの近くにある共有部分のテーブルが、ブックチェンジスペースに早変わり。マンション内にすてきなブックショップコーナーができたような、おしゃれな雰囲気になりました。

買い物帰りに立ち寄ったご夫婦や、お出かけ前に立ち寄った方も。左がスタッフのアコさん。

ブックチェンジのルールは簡単。不要な本を5冊持参いただいたら、5冊までお好きな本を持ち帰っていいというものです。

共有部分のテーブルを使って本を並べました。お洒落なブックショップみたいですね。

小さなお子さん連れのご夫婦や、お出かけ後のご家族などが、なんとなく足を止めていかれます。ブックチェンジの主旨を聞いて、お部屋に本を取りに戻る人もいます。不要な本の処分って重くて面倒ですが、マンション内で開催されているから、すぐに部屋へ取りに行って渡せるのもいいですね。

中央がコニーさん、左が奥様のユミエさんです。男の子とお母さんが本を持ってきてくれました。

「うーん、どれにしようかな?」って、そこは大人向けの本のコーナーだけど大丈夫かな。

一生懸命いろんな本を選んで、悩みに悩んで、結局自分のおうちにある絵本を気に入って離さなかったお子さんもいました。「すみません、いいですか?」とお母さんも申し訳なさそう。好きな絵本って、何冊あってもいいですよね。

椅子に座って真剣に読み出したお子さんもいましたよ。本に没頭すると時間も場所も忘れちゃうのはみんな同じ。

この絵本はカエルの顔に布が貼ってあります。触って楽しい絵本に夢中な男の子。

「おうちから持ってきた本がどんな人にもらわれていくのかな?」と気になって、ずーっと見守っていた子もいたみたいです。なんだか微笑ましいですね。

「みんな、どの絵本がいいかな?」とAnnさんが子どもたちに質問。

ブックチェンジスペースのすぐ隣にあるキッズルームでは、メンバーのAnnさんが、子どもたちに読み聞かせを行っています。

絵本作家でもあるAnnさんが持参したのは、ものすごく大きな絵本!

『はらぺこあおむし』『からすのパンやさん』『まどからのおくりもの』など、みんなのリクエストで絵本を読んでいきます。真剣に聞き入っている子どもたちの表情とまなざしに、“本”が子どもたちを魅了するパワーを感じます。

キッズカラー代表で保育士の雨宮さんが『ごきげんのわるいコックさん』のお話を読みます。

読んだあとは、みんなでコックさんに変身!きっかけ1つで、あそびの世界が広がります。

自己紹介をし合う「うたあそび」や、身近なものでも楽しめるつくりものなどの、親子ワークショップも開催されて、みんな楽しく遊んでいました。

スタッフのひとり、コニーさんの奥様のユミエさんは、子ども子育て支援のための保育事業や教育事業を手がけてらっしゃいます。ワークショップには、その仲間の保育士の方が参加してくださったそう。“人財”ネットワークを活用していけば、ブックチェンジは、親子や大人向けにさまざまな企画が考えられますね。

みんなで絵本選び!楽しそうなご家族。

今回の企画について、芝浦アイランドケープタワーの理事長の間宮さんにお話を伺いました。

「大規模なマンションですから、自分が理事になっていてもなかなかそうたくさんの居住者とは知り合うこともできません。今日この場にいただけでも、知らない方々とお話しすることができました。こうしたイベントは継続していくことが大切だと痛感しています。これからも定期的に続けていきたいと思います」

やはり居住者同士が言葉を交わすきっかけづくりとして、好スタートだったようです。

小さいお子さんが多いマンションなので、絵本コーナーは大人気。「これは?」「あれは?」とスタッフも絵本選びをお手伝いします。

では、今後定期的にブックチェンジが行われていくとすると、どのような展開が考えられるのでしょうか?

「定期的に開催していくと、参加する意義というか目標がある方がいいと思いますね。たとえば、マンション内にライブラリーを設ける、集まった本の収益金を、被災地や海外の図書館建設に寄付するなどといった目標があれば、皆さんも本を寄贈する意味が生まれてきますよね」と、ユミエさん。

ブックチェンジが終わって集まった本は買い取りに出して、その収益金をライブラリースペースづくりの資金や寄付につなげることができます。定期的に開催されれば、マンション内ライブラリーも夢ではないですね。

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2014/01/31