住民同士“お互いさま”で助け合う!人情マンション「コープ南砂」の江戸長屋的コミュニティ力

江東区にあるコープ南砂は、コミュニティ活動の活発なマンションとして注目されている。その活動の根底には、マンションでありながら、きわめて“江戸長屋”的な人情味が流れている。ここでは、コープ南砂が取り組むさまざまなコミュニティ活動を3回に渡って紹介していく。今回は、高齢化社会の新しいムーブメントともいえる、居住者の相互扶助活動「助け合いの会」を取り上げる。

第二回はこちら:
ごみの減量や構内緑化…自主活動に優れたマンション「コープ南砂」のコミュニティ力がすごい!

第三回はこちら:
防災計画書や防災訓練…自主管理に優れたマンション「コープ南砂」の防災力がすごい!

住民同士、有償ボランティアで助け合う「助け合いの会」

助け合いの会の事務局長 小林 孝氏。

全戸数165戸のコープ南砂は、1981年の入居以来、30年以上にわたって自主管理で自分たちのマンションを運営し、居住者の親睦活動や、防災活動、構内環境整備、高齢者対策など、さまざまなコミュニティ活動を熱心に行ってきた。その活動の根底にあるのは、常に人と人との心のつながりだという。今回は、コープ南砂助け合いの会が主催する「ふれあい喫茶室」の日だということで事務局長の小林孝氏にお話しを伺った。

住宅設備の保守・修理、家事支援などを行う「助け合いの会」

「助け合いの会」は、自治会の呼びかけで2006年11月に設立。住民同士で互いに助け合うことを目的に、住宅設備の保守・修理、家事支援、外出支援、介助支援、子育て支援など、多岐にわたる活動を行っている。

会は任意の会員制組織で、全165世帯のうち現在123世帯の会員がいるという。入会金3,000円と年会費1,000円を納めた会員(1世帯1会員)は、助け合い活動の利用会員であると同時に支援会員にもなる。利用料金は、350円/30分。そのうち、300円が支援会員に支払われ、50円が事務手数料となる。

たとえば、会員の居住者が事務局に申し込みを行うと、事務局から依頼を受けた支援会員が利用会員の部屋を訪問。電球の取り替えから網戸の修理、日常生活の中でちょっとお願いしたい・相談したいことに応じる。

電球の取り替えから、工事の立ち会い、日常の小さなお手伝い

事務局長の小林氏は、この会の設立のきっかけについてこう語る。

「なぎさニュータウンや高島平のマンションですでに行われている活動を参考にして始めました。当初はボランティア活動で高齢者宅を訪問してお手伝いするというやり方でやっていましたが、無料のボランティアだとお年寄りは謝礼にかえって気を使うことになり、また、訪問したお宅によってお礼にも格差はでてくるし、それならばいっそ利用料金を設定して有料にしようということになりました。これなら利用会員にも支援会員にも公平ですからね」

現在の支援活動の利用割合は、会員宅の住宅設備の保守・修理が45%、家事支援が34%。やはり高齢者宅の利用が多いという。

2011年の活動日誌(※)を拝見すると、以下のような項目が並ぶ。

・ 台所照明器具不具合点検
・ 火災保険更新相談
・ 浄水器パッキン交換
・ リモコン電池交換
・ 浴槽工事立ち会い
・ ウォシュレット電池交換
・ TV チャンネル設定
・ イス補強材取り付け
・ 包丁研ぎデー
※活動日誌には、プライバシー保護のため利用者宅・支援者名は削除してある。

高齢者宅では日常のちょっとしたことや住宅設備の不具合、さらに保険の更新や工事の立ち会いなど、第三者のアドバイスやチェックがほしいというニーズが増え、こうした要請にもきめ細かく対応しているのがよくわかる。

生活情報を共有する同じマンションだからできるきめ細かなお手伝い

「それこそ、電球の取り替えから大きな家具の移動まで、できることは何でもやります。住宅設備の点検・修理に関しては、同じマンションですから部品も同じ、設備の耐久年数も同じですから、修理が必要になる時期も重なってくることが多いですね。そういう場合は、部品を一括購入して材料費を安くあげたりすることもできます」

マンション内にあるサービスだからこそ、生活情報を共有して立ち回れるのだ。蛇口の水漏れ、網戸の取り付け、ちょっとしたことでも、安価で気軽に修理を頼めるサービスがマンション内にあるというのは、高齢者のみならず、どの家庭にとってもかなり便利だ。

会のメンバーは年齢もさまざま。和気あいあいと活動に取り組んでいる。

また、江東区の在宅介護サービスと提携して、資格のある支援会員が車いすの方の外出の付き添いを行うこともある。

「自治体の公的なサービスをご存じでない方も多いですが、会のメンバーには江東区の介護サービスのボランティア活動している人もいます。こういうサービスも利用できるんですよという周知にもつながっています」

本格的な設備の修理や介護などはもちろん専門家の手に委ねる。しかし専門家に至るまでもない小さなことを、助け合いの会がカバーする。

「工事などは専門業者に任せますが、たとえば一緒に住んでいる家族がやってあげるような小さな手伝いを、助け合いの会がお手伝いする。いわば隙間を埋めるきめ細かなサービスを、家族に代わって相互に助け合う訳です」

支援会員についても、得意な技能・技術をリストに登録してあるため、利用申請があると、事務局が適した技能を持った支援会員を選んで派遣するという。さまざまな人材リソースが眠るマンションならではの利点を活用しており、「助け合いの会」はまさにマンション内ミニ派遣会社のようである。

みんなでワイワイおしゃべりする「ふれあい喫茶室」

「ふれあい喫茶室」ののれんは、メンバーが自主作成したもの。

この日は、月に2回開催する「ふれあい喫茶室」の様子を覗かせていただいた。「ふれあい喫茶室」は、女性を中心とした居住者が、1階の集会室に集まって、お茶とお菓子をいただきながらおしゃべりするというものだ。会には、一人暮らしの高齢女性も多く訪れる。皆で声をかけあって、足元の心配な方には、お友だちが付き添って降りてくる。

独居の方も家族のある方も一緒におしゃべり

お茶とお菓子を囲んだ「ふれあい喫茶室」。会場設営は男性陣が行っている。

制作中のパッチワークを持ち込んでやり方を教えている人、リフォーム中の着物生地や本を見せて相談している人、おしゃべりに興じる人。皆思い思いの楽しみ方でくつろいでいた。
他にも、お料理の上手な人は自分で拵えた一皿を持ってくることもあるという。そこからレシピのシェアが始まったりするそうだ。裁縫、手芸、料理、それぞれ得意な分野を持つ人が先生になり、他の人にアドバイスするという。

千代紙で作られた手芸作品。

「喫茶室で教えてもらったことも、やってみてちょっとここがわからないと思ったら、直接訊きに行ったりもするんですよ」と居住者のお一人。同じマンションに住む者同士ならではの交流だ。

自由な交流の場は、見守りの場にも、作品作りの場にもなる

三月にはひな壇が設けられ、喫茶室で作られたおひな様が飾られる。

中にはまもなく90歳のお誕生日を迎えるという一人暮らしの女性もいらっしゃった。「皆さんが誘ってくださるので有り難いです」と、おしゃべりの場が楽しそうだ。

「ふれあい喫茶室」の場は、デイケアセンターが提供するそれとも似ているが、
ここでは義務やルールはない。なんと言っても、自分が住むマンションで、気が向いたらここに来て誰かとおしゃべりし、疲れたら部屋に帰ればいいという自由さがいい。あくまで自由な交流の場が設けられているのだ。

「ふれあい喫茶室」の他にも、子供たちを対象にしたクリスマスお楽しみ会や絵本の読み聞かせ会、ハイキングや観桜会、健康体操、消費者講座など、世代を超えたさまざまな交流会が催されている。

“おかげさま”が合い言葉の「人情長屋マンション」

江東区が発行する「江東どんどこどん第十三号」で紹介されたコープ南砂の活動の様子。NPO法人 漫画工房 同潤会によって漫画化された「人情長屋」の様子が楽しい。

江東区の広報誌に、このマンションを「人情長屋」にたとえたマンガが掲載されているが、ここはまさに都心の「人情長屋マンション」なのだ。

小林氏は、「僕ら男性メンバーは、女性が『こうしてほしい、ああしてほしい』と言われたら、ハイハイってやる僕(しもべ)なんですよ。喫茶室の設営は全部男性メンバーの仕事ですから」と笑いながら話す。会の男性メンバーは、リタイアした方や、リタイア後も元気に会社で働く方々など、行動力のあるシルバーが中心に活動している。ともかくメンバーはかなり忙しそうだ。話を伺っている間にも、しょっちゅう呼ばれて出たり入ったり。ともかく人の磁場が活発に動いている、ポジティブなエネルギーを感じた。

「僕たちはよく“お手伝いさせていただきます”っていうんですよ。相互に助け合う“お互いさま”というのは、そういうことですから。たとえば高齢者の“見回り隊”とかいうネーミングはなんだか上目線ですよね。お互いに助け合う、それで得られたことは“お互いさま”なんです。誰かを助けることが、そのうち自分も助けられる側になる。本当に相身互い“お互いさま”ってことなんですね」

コープ南砂は“助け合い”のある共同住宅です
会員は相互に、できることとで手を貸しあいます
困ったときは“お互いさま”、声を掛け合いましょう

コープ南砂助け合いの会の会則。“お互いさま”が会のキャッチフレーズとなっている。

「ふだんからの交流や会話が、この会の信頼関係につながっています。そしてこの信頼関係が、また次の活動の種にもなります。マンション住民のつながりが、信頼になり、安心になり、住みやすさになっているんです」と小林氏は語る。


コープ南砂の「助け合いの会」の活動は、マンション・ラボ研究室「高齢者のためにコミュニティができること」で考えてきた、「マンション内リソースセンター」の発想の実現例といえる。マンション居住者の高齢化や独居が進む時代、今後こうした活動に取り組むマンションは、どんどん増えていくのではないだろうか。次回は、コープ南砂の環境に配慮した活動についてご紹介する。

コープ南砂

江東区にある165戸のマンション。1981年6月の入居から30年以上に渡って、居住者の協力のもとで自主管理を貫いてきた。コープ南砂が行っているさまざまなコミュニティ活動への取り組みには、他のマンションや自治体からの見学・取材も多い。

2012/11/26