単身高齢者とシングルマザーの多世代交流がコンセプト『IGHシェアハウス』の新しい試み

現在、日本社会の大きな課題のひとつに、高齢者問題がある。
特に都市部では、近隣住民との関係の希薄さから、孤独死のニュースが連日のように報道されている。マンションでも、隣人や住民間での交流が少ない場合も多く、孤独死への対応やセカンドライフの過ごし方への対策が、今後ますます重要になってくると考えられる。こうしたなか、単身高齢者を対象に、孤独の寂しさを和らげ、生き甲斐を感じた生活をおくるための取り組みが行われていることをご存じだろうか。

コンセプトは「単身高齢者」と「シングルマザー」の世代間交流

今回紹介する『IGHシェアハウス(=Inter Generation House)』は、単身高齢者とシングルマザーが一緒に生活することで、互いに不足している部分を補っていくという、世代間交流をコンセプトにした新しい形のシェアハウスだ。

クローズアップ現代

取り組みはテレビ番組やラジオなど、たくさんのメディアで紹介されている。

事業を手掛けるのは、世代間交流を推進するサポートをおこなう株式会社ナウい。もともと大手通信販売の会社で、シニア向けの商品を販売するため多くのシニア世帯を訪問し、交流してきた経験のある代表の桑山氏は、当時を振り返ってってこう話す。
「商品のご説明にお宅を何度も訪問するうちに、色々なお話をうかがえるようになりました。その中で、たくさんの方に共通していたのが、寂しい、誰かの役に立ちたい、といったものでした。もともとシニアの方を対象としたビジネスへの関心が高かったこともあり、訪問先の方の要望に答えるような仕事がしたいと考えたのが、そもそものきっかけです。」

IGHシェアハウス

株式会社ナウい 代表桑山氏

桑山氏は2009年に独立し、シニア世代を対象としたチューリップクラブを設立。シニア宅に訪問してマッサージや読書の代行、健康体操といったサービスを展開するなかで、シニア会員の方から寄せられた、空き戸建てを有効活用したいという声に着目。「有休不動産の活性化×シニア向けサービス」という課題の解決を目指した結果、『IGHシェアハウス』の構想が生まれた。

双方にメリットを生み出す仕組みと特長

『IGHシェアハウス』の仕組みは次のとおり。まずは株式会社ナウいが高齢者とシングルマザーの双方に募集をかけ、公共の施設などで合同説明会を実施する。複数の参加者がその場ではじめて対面し、クラフトワークや料理などの共同作業を通じて相性を確かめていき、互いが気に入れば、株式会社ナウいを介して、双方の要望やライフスタイル、生活環境などを話し合いながら、合意できるポイントやルールを設定していく。
「交流会で、はじめてお互いに会うので最初はみんな緊張しているのですが、共同作業を通じて少しずつ距離感が縮まっていきます。また小さなお子さんがいると、こどもを介してすぐに仲良くなるケースが多いですね。気に入った人がいれば、共同生活をおくる上での具体的なルールを決めていきます。例えば食事はどちらがどのような頻度で作るか、掃除はどちらがどこまでやるか、といった日常生活上のルールです。一人一人ライフスタイルや希望する条件が異なりますから、双方で折り合いをつけるこの段階が最も難しいですね。また生活した後も何らかのトラブルが発生し、当人同士での解決が難しければ、当社が間に入って解決します。」

交流会の様子

交流をし、共同作業をすることでだんだんと打ち解けていく。

さらに他のシェアハウスが専用の家をつくり住むのに対し、シニアの方の持ち家を有効活用することが『IGHシェアハウス』の大きな特徴になっている。
「有休不動産の活性化という目的もあるため、高齢者の持ち家の空き部屋にシングルマザー世帯が住むモデルを基本としています。こうすることで高齢者は賃料という形で収入も得られますし、何よりもさみしさからの解放や生活のサポートが受けられます。またシングルマザーについても同居のシニアの方に子供を預かってもらえたりするので、仕事に集中できるというメリットもありますね。」

共同作業を通じて育まれる世代間の交流

『IHGシェアハウス』は、2010年に取り組みを開始したものの、震災の影響もあり本格的に活動をはじめたのは昨年末のこと。現在シニアの方が50名、シングルマザーの方が20名ほど登録し、交流会を行なっている。まだ成約には至っていないが、参加者からの評判もよく、桑山氏も手ごたえを感じているようだ。「シェアハウス自体がメディアで取り上げられる機会も多くなってきているので、取り組み自体を知っていただける機会が増えているのはうれしいですね。また『IGHシェアハウス』の特長でもあるシングルマザーと高齢者をマッチングさせることで、双方の問題を解決していくというコンセプトにも、共感いただける方がとても多いです。この取り組みを続けることで、将来的な高齢者対策などにも貢献できたらいいと考えています。」

交流会の様子

体験説明会の様子。多くのシングルマザーが参加している。

この考え方は、同様の問題を抱えるマンションでも、解決する一つの施策として検討できるのではないだろうか。マンションでの可能性について桑山氏に尋ねてみた。
「マンションでもコミュニティづくりが注目されていることは知っています。コミュニティづくりで大切なのは共同作業と継続性だと思います。同じ目的を共有し作業することで、共通点がつくれるため、仲良くなるチャンスが多いと思います。あとはその機会を継続することでしょうか。マンションであれば、集会室などもあるわけですから、世代間交流をテーマにしたワークショップを設けていくことでコミュニティをつくることもできると思います。例えばシニアの方が昔の遊びや話を同じマンションに住む子供向けに行ない交流を図るのもいいでしょう。また、実はマンション居住者の方から空き部屋を活用できないか、というお問い合わせをいただいたことがあります。単身のシニアの方で、普段使用していないお部屋があり、『IGHシェアハウス』の取り組みにご理解いただけるのなら、参加していただくことも可能だと思います。そうすることで、普段の生活が楽しくなったり、いざという時に助け合える人がいるなど、さまざまな面でメリットがあるように思います。マンションの高齢者対策として、ぜひ検討してもらいたいものです。」

現在日本には約560万世帯ものマンション住まいがいる。首都圏では、住まいの約6割がマンションだ。その中には、無論たくさんのシニア層が含まれている。これから多くのマンションがそうであるように、高齢者問題の解決は必ず大きなテーマとなるはずだ。その解決策の一つとして、『IGHシェアハウス』の取り組みを利用する、あるいは学ぶ、応用するといったことを検討してみてもいいだろう。
マンション・ラボでは、これからもコミュニティあるいは高齢者問題の参考になる事例を継続して伝えていくので、ぜひ参考にしてほしい。

IGHシェア体験交流会情報
高円寺でIGHシェアハウスの交流会が開催されます。
ご興味のある方はこちらまでご連絡ください。・ 日時:2012年4月8日(日) 13時~16時半
・ 場所:東京都杉並区高円寺南3-57-6 3F ココロ躍るカフェ
・ 費用:500円
・ 内容:ガーデニング(アロマ)共同体験、参加者交流や意見交換、シェアハウス説明(予定)
・お問い合せ:電話:03-5303-6701 e-mail:info-nowe@now-e.co.jp

2012/03/27