マンション管理も「中身が見える」時代へ—「マンション管理適正評価研究会」の今後の展開

2019年8月に発足した「マンション管理適正評価研究会」は、有識者が集まって、マンションの管理情報の開示や適正に評価する仕組みを検討、議論する場でした。
合計4回の研究会開催を経て、いよいよマンション管理情報の開示と適正な評価システムの構築を目指すフェーズに入りました。最終的な取りまとめ内容について、一般社団法人マンション管理業協会にお話を伺いました。

「マンション管理適正評価研究会」の目的は、管理情報データベースの構築

2020年3月に公開された「マンション管理適正評価研究会 報告書とりまとめ」は、マンション管理業協会のホームページから閲覧・ダウンロードできます。

一般社団法人マンション管理業協会「マンション管理適正評価研究会 報告書とりまとめ」※外部サイト

一般社団法人マンション管理業協会が業界団体へ呼びかけて発足した「マンション管理適正評価研究会」は、良好な住宅ストック市場を築くために、マンション管理に関する情報を広く一般に開示して、管理情報データベースを構築することを目的としています。

昨年の取材記事でも、「マンション管理適正評価研究会」の活動についてご紹介しました。

これからはマンションの管理状況が評価される時代になる!?—マンション管理適正評価研究会

昨年秋から開催されてきた合計4回の研究会を終え、その内容が「マンション管理適正評価研究会 報告書とりまとめ」として公表されました。マンション管理情報の評価モデルが、より具体化し、管理情報データベースの構築などの具現化のフェーズに入りました。

「マンションは管理で買え」が数値化し、市場で評価されるために

横浜市立大学国際教養学部教授 齊藤広子先生。

「マンション管理適正評価研究会」の座長であり横浜市立大学国際教養学部教授である齊藤広子先生は、本研究会での取り組みを以下のように概観します。

齊藤先生
いままで「マンションは管理を買え」と言われてきましたが、一般消費者はマンションの何を見て、どう管理状況を評価してよいのか、完全には理解できていなかったはずです。中古マンション購入検討者へのある調査では、日当たりや広さ・間取りの次に、管理会社や分譲会社、施工会社の「信頼度」を重視している人が多く、「管理の状況」はその次でした。
現状では、中古マンションの詳細な情報は、実質的には購入の意思決定をした後になる重要事項説明の段階まで待たなければいけません。また、管理組合はどんな役割を果たしているのか、どんなコミュニティ活動をしているのか、民泊の状況は?という、住み手にとって本当に知りたい情報は、現行法の開示すべき情報には入っていません。
「マンション管理適正評価研究会」が、関係者の皆様と意見交換をして取りまとめた目指すマンション管理の適正な情報開示と評価基準は、以下のようなものです。
・マンションの管理情報が、契約より前の段階で、誰でも見られるようにすること
・開示項目は、マンションの概要及び管理体制に関する情報合計146項目のうちから、マンションの管理に関わる主要な項目とする
・これら項目から、管理に重要な影響を与えている5つの項目(管理体制、組合収支、建築・設備、耐震、生活関連)を取り上げて、全体で100点となる配点とし、S、A、B、C、Dの5ランクで評価する
これにより、一般消費者に必要な情報が数値でわかりやすく示され、本当の意味で「管理を見きわめて買う」ことが可能となるはずです。

 

 

<「マンション管理適正評価研究会」によって協議中の評価システム>
マンション管理のランク付け項目と配点
5項目 配点(合計100.00点)
1.管理組合体制関係 管理者の設置
通常総会の開催
総会議事録
規約原本 など
20.00
2.管理組合収支関係 管理費会計収支
修繕積立金収支・資金計画
管理費滞納状況 など
40.00
3.建築・設備関係 法定点検の実施
長期修繕計画書の作成
共用部分の修繕の履歴 など
20.00
4.耐震診断関係 耐震性 など 10.00
5.生活関連 緊急対応
消防訓練の実施
防災対策 など
10.00
管理状態ポイントランク(区分)
90〜100点 S:特に秀でた管理状態
70〜89点 A:適切な管理状態である
50〜69点 B:管理状態の一部に問題あり
20〜49点 C:管理状態に問題あり
〜19点 D:管理不全の恐れがある

(マンション管理適正評価研究会の資料より転載)

ハードとソフトの両面からマンションを良くしていこうというマンション管理組合の熱心な取り組みは、いままでマンション・ラボでも多数の事例を紹介してきました。しかし、こうした管理の取り組みは、クチコミや取材記事で知ることは出来ても、空室の販売状況や資産価値に反映しているかどうかまではわかりませんでした。
マンション管理の通信簿のように、良い取り組みがきちんと評価されれば、管理組合や理事としてもヤル気がでるし、そのことが自分たちの資産価値に直結するということがわかりますね。

「マンション管理適正評価」3つのポイント

「長期修繕計画と修繕積立金会計収支の考え方」修繕積立金の不足が問題化しているマンションには、第三者による評価を取り入れることで改善の可能性が!

「マンション管理適正評価」は、今後以下の3つのポイントを中心に取り組みを展開していきます。

①管理情報開示のさまざまな取り組み
先に紹介した5ランク付け項目と配点の基本となる考え方や項目を共有し、それをベースに、目的に合わせてプラス項目やマイナス項目を設定。マイナス項目も将来改善が可能なものとすることで、今後の努力で評価向上が見込めるように配慮する。

②情報の登録・開示をした管理組合へのインセンティブ
管理組合が情報を開示したくなる仕組みづくりとして、関連団体などと連携したインセンティブを検討中。
例)・修繕工事の借入の金利優遇や返還期間の延長
  ・保険料の割引や税の優遇対策

③行政との連携
改正マンション管理適正化法の成立に伴い、今後、地方公共団体が定める管理計画認定制度と(仮称)「マンション管理適正評価制度」との接続について働きかけを行う。

マンション管理業協会
評価システムは、単なる採点だけではありません、マンションの建物・設備の維持管理(ハード面)、管理組合運営レベルの一層の向上(ソフト面)の第一歩として機能するべく、管理状態をポイントランク化してわかりやすく数値化し、マンションの管理状況を誰の目にもわかりやすく明らかにするものです。
管理組合には、現状を把握し、どのように改善するべきか、どこが問題なのか知っていただき、改善のための努力やサポートを受けることができます。これらの総合的な取り組みにより、管理の良好なマンションを増やすことで、マンションという社会インフラの保全だけでなく、区分所有者にとっても資産価値の維持、良好・快適な住環境の構築となることを目指します。

2022年度マンション管理の「見える化」を目指して

住民にとっても第三者にとっても、マンション管理の「見える化」はとても大切です。

今後は、2022年度の評価システム完成を目指して、行政や関連団体とさまざまな協議を重ねていく予定だそうです。
評価システムによってマンション管理の「見える化」が具現化するときが間近に迫っているのですね。マンション管理の「見える化」によって、管理組合や区分所有者の責任はますます重要なものとなり、区分所有者一人ひとりが責任を果たさなければならないという意識を持って参画していく必要があります。

また、2020年6月16日には「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律案」が、国会で成立しました。
この改正案によって、「国土交通大臣は、マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針を定めなければならない」と規定されています。地方公共団体は、その基本方針に基づき、管理の適正化推進を図るための施策に関する事項等を定める計画を作成でき、管理の適正化のために必要に応じて管理組合に対して助言や指導、適切な管理計画を有するマンションを認定する「管理計画認定制度」を創設できます。
この法律の施行と共に、マンション管理の適正化の推進について、ますます期待できます。今後の展開が楽しみです。


評価システムが完成すれば、これからは管理の良好なマンションが正当な評価を受ける時代へと変わっていくはず。また評価システムは、マンションの売買に活用するだけでなく、マンション管理組合の取り組みがそのまま、管理評価や資産価値に直結するということでもあります。

一部の管理組合理事の皆さんに評価システムについての感想を伺ったところ、
・いま一生懸命がんばっている管理組合さんの取り組みがきちんと評価される仕組みがほしい。
・開示されて評価されることは、大歓迎!ぜひ後押しして欲しい。管理組合の努力が認められるのは大変嬉しいし、やりがいにつながります。

という賛成の声が多く、いままで見えていなかった管理組合の取り組みが評価されれば、理事や住民のやる気にもつながるはず。2022年度の評価システムの完成に期待しています!

マンションの管理業務を行う法人・個人で組織された業界団体。マンションの健全な管理体制の確立をめざして、マンション管理・保全技術の調査研究、管理者育成などの活動に取り組む。
新型コロナウイルス感染症(COVID(コビット)-19)の感染拡大防止についての情報発信も積極的に行っている。

2020/09/04