進む!マンション管理のICT化―マンション管理会社発オンライン理事会事例


コロナ禍において、マンション理事会においても、3密を避けるために「オンライン」を取り入れるマンションが増えつつあります。今回はマンション管理会社の立場でオンライン理事会を推進している、あなぶきハウジングサービスの取り組み状況について、お話を伺いました。

取材先
あなぶきハウジングサービス
イノベーション戦略本部ICTグループICT推進課 佐藤照晃氏
あなぶきPMアカデミーTOKYO館長 仲井悟史氏
東京本社分譲第一グループ東京東支店管理グループ 狩野竜汰氏
東京本社分譲第二グループ川崎支店管理グループ 加納章裕氏

ICT推進課が担うオンライン理事会への取り組み

あなぶきハウジングサービスでは、ICT推進課においてマンションの入居者向けサービスの開発や運営等を行っています。オンライン理事会は、ICT推進課で使用ツールを検討の上、マンション管理担当者がマンションの状況に合わせて導入を進めています。
今回お話を伺ったのは、浅草橋と川崎にあるマンションのオンライン理事会の取り組み状況についてです。オンライン理事会導入のきっかけは、コロナ禍における3密回避ですが、どちらも投資用マンションであるため、理事の方がマンションに来るための時間・費用のコストを節約する意図もあったと言えます。

また、両マンションとも、総会を控えた準備の理事会に当たるため、総会前の議題審議として、決算報告、次年度の予算確認を行った上、浅草橋のマンションでは、大規模修繕実施の検討も議題となりました。詳細については以下をご覧ください。

浅草橋マンションのオンライン理事会について
オンライン理事会実施の背景 コロナウィルスによる影響を考え、3密対策。
遠方居住のため、理事会会場への移動負担軽減。
オンライン理事会の実施方法 理事長・監事・管理会社の計3名が自宅・会社からzoomにて参加。
オンライン理事会で実施した理事会内容 管理会社からの報告、修繕工事実施の検討。
総会前の議題審議として、決算報告、次年度の予算確認。
参加理事の感想 インターネット環境、デバイス共に全員がzoomを使用できる環境であったため、新たに機材を用意することなく実施ができた。
また、オンライン理事会当日は管理会社側が画面に資料を映しながら進めていたため、どこを説明しているかが分かりやすかった。
事前に管理会社から資料を郵送で送られてきたのもよかった。
今後もオンライン理事会を活用していきたい。
川崎マンションのオンライン理事会について
オンライン理事会実施の背景 コロナウィルスによる影響を考え、3密対策。
遠方居住のため、理事会会場への移動負担軽減。
オンライン理事会の実施方法 理事長と管理会社の計2名が自宅・会社からzoomにて参加。
オンライン理事会で実施した理事会内容 総会前の議題審議として、決算報告、次年度の予算確認。
参加理事の感想 今回初めてリモート理事会を実施。
一部、資料共有時に確認できないシーンもあったが、それ以外は問題なし。(事前に資料送付あり、手元資料も参照可能)
リモートでも十分理解ができたため、今後の理事会についてはリモートでも良いのではないか。

参加された理事の方は、初めてでも概ね問題なくオンライン会議にアクセスでき、対面での理事会と同様にコミュニケーションが取れたことから、今後もオンライン理事会への意向を示されています。

こうして、場所に関わらず理事会に参加ができるようになると、今まで参加しにくかった仕事の忙しい方や子育て中の方の参加も可能になってきます。オンライン理事会は、多くのマンションにおける「理事のなり手がいない」という課題について、解決の糸口にもなりそうです。

また、今回のオンライン理事会用ツールはZoomを選んでいます。あなぶきハウジングサービスでは以前より社内会議でも使用していたZoomが、URLやルームID一つでアクセスしやすいこと(現在はパスワードが必要)や、Zoomによる問題で通信エラーが起きにくいことをメリットと感じ、マンション理事会にもZoomを使用しているそうです。

初心者でもカンタン! Zoomを使ってオンライン理事会をやってみよう!

安心してオンライン理事会を導入できる工夫

今回お話を伺ったマンションでは、初めてのオンライン理事会でしたが、事前に工夫をしている点があります。

まず、浅草橋のマンションでは、事前に理事会用資料を郵送して、手元で確認できるよう配慮しています。これには3つのメリットがあります。

1. 手元資料があった方が、パソコン上での画面切り替えの必要がない
2.自分のペースで資料を参照できる
(画面共有だと、ホスト側のペースで画面を提示するため、戻って確認したい際に不便)
3.手書きでメモができる

Zoomの画面共有で資料を確認できるだけでも便利ですが、手元に紙資料を届ける一工夫で、利用者に使い勝手のいい方を選んでもらうという配慮が嬉しいです。

次に、Zoom利用が初めての方との理事会だった川崎のマンションでは、事前にZoomの使い方レクチャーを行っています。基本的なアクセスの方法や音声の切り替え、画面共有の方法などの操作方法を電話で確認し、不安を解消してから、本番に臨みました。

最近は仕事でZoomを利用される方も増えていますが、相手の状況に合わせて事前確認をしておくと、接続不良によるタイムロスを防ぐことができますね。

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マンション管理会社がオンラインで実現したいこと

現在、あなぶきハウジングサービスではオンライン理事会の件数が増加しており、中には大規模修繕の説明会をオンラインと会場の同時進行予定のマンションも出てきています。オンライン理事会が常態化するマンションも出てくるかもしれません。

こうなると、マンションオーナーの参加・決議が求められる総会も、オンライン実施で効率化を進められるのではないかと考えてしまいますが、そこにはまだ壁があるようです。

オンライン総会に必要なのは、まず、オンライン上での「出席」、「議決権の行使」を認めるよう、管理規約を改定することでしょう。こちらは全社で取り組まれているとのことですから、今後の実現に期待がかかります。

次に、管理規約の改正と共に進めるべきものが、システム作りになってきます。次のような事項ができるよう、システム開発を検討しているそうです。
・オンライン上で出席を承認
・理事や管理会社の発言確認と質疑応答
・議決権行使のための電子承認
・オンライン上での議事録作成

こだわりたいポイントは、現在あるマンションオーナー向けの専用サイトと総会参加に関わる仕組みを連動させ、利用者の方にとって使いやすいツールを提供する点。負担を感じずにマンション管理に関わってほしいという心遣いが感じられます。

ただ、こうしたオンラインの仕組みで理事会や総会が効率的になる一方で、年齢が高い方にとっては、インターネットやスマートフォン、パソコンを使うこと自体が苦になるかもしれません。あなぶきハウジングサービスでは、自社の社員へオンライン理事会導入の促進をすることも含めて、幅広い年齢の人が、オンライン理事会へ参加しやすくなるよう、初めは人から人へと参加方法を伝えていくことが最適ではないかと考えています。

今後のマンション管理とICT

あなぶきハウジングサービスのICT推進課では、これからのマンション管理にとって、ICTを使いこなしていくことがマンション管理業界での差別化になると捉えているそうです。マンション管理の価格競争に限界が見えている以上、次に求められるのはICT化による、利便性の高さになってくるようです。

そのための取り組みとして、広い世代にマンションの利便性を高めるために、サービス内容についての動画配信を行い、理解しやすく使いやすい発信を増やしていきたいというお話も。中にはYouTuberのようにチャンネルを持ち、専用サイト内で各種サービス紹介している人も登場しているようで、今後の活躍に期待がかかります。

オンライン理事会が初めての方にも、こうした動画配信をすることで、抵抗なく受け入れてもらうことを目指しているそうです。


思いがけない事態に背中を押されたオンライン理事会ですが、ICTに力をいれてきたマンション管理会社にとっては、これを機にオンラインを一気に導入していきたいところでしょう。マンション住民側からオンライン理事会を提案をされることもあるそうですので、効率よく理事会運営に関わりたい方は、提案してみるのも手かもしれません。

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