マンション理事のぶっちゃけ本音シリーズ①「週末の釣りができないじゃんか!(怒)」~山本さんのケース~

「今年度からあなたは理事です!」そう決まったら、あなたはどうしますか?
理事になると、「あ〜あ」「面倒くさい」と感じる人も多いことでしょう。
でも、本当にそれだけでしょうか?
面倒なこともあるでしょうが、面白かったり、やりがいもあったりもするのでは?
そんなリアルな理事の体験談をご紹介する本シリーズ、第一弾は川崎市にある大規模マンション「パークシティ溝の口」の元理事 山本美賢 さんに質問をぶつけてみました。
「ぶっちゃけ、理事ってどうですか?」

突然不在者投票で理事決定!「釣り三昧の週末がなくなる〜!」

理事になる前の山本さん。平日は仕事で忙しく、週末は海釣り三昧の日々。「理事?何それ美味しいの?」状態でした(笑)

山本美賢 さんは、川崎市の大規模マンション「パークシティ溝の口」で、2011〜2012年の2年間理事を勤めました。「パークシティ溝の口」というと、活発な管理組合活動や近隣マンションと合同開催の防災イベント「炊き出しフェス」などで、注目のマンション。これらイベントも、山本さんたちマンション仲間による自治会で実行しています。

マンションは、つながるとパワーアップする!?3つのマンション共同主催の防災「炊き出しフェス」

山本 美賢さん

パークシティ溝の口(1982年〜1984年竣工・築36〜38年・1,103戸・12棟構成)
2011年・2012年 管理組合理事
2012年 専門委員会ホームページ委員会立ち上げ
   ホームページ委員長(現在はオブザーバー)
2016年〜2019年 パークシティ溝の口自治会管轄 民生委員
2017年〜2020年 パークシティ溝の口自治会長
2020年〜 専門委員会 防災減災委員

いまも防災減災委員として大活躍の山本さんですが、2011年から理事になる前は、「管理組合・理事会・管理会社」の存在すら知らなかったというのですから驚きです。


山本さん
ほんとにマンションの仕組みは何ひとつ知りませんでした。役員改選の通知も、チラシと一緒にポイ。役員の抽選にも参加せず。その結果、不在者投票で2011年6月からの平成23年度の理事になることが決まっていました(笑)。さらにこれまた抽選で、東日本大震災後の初めての年の防災部会リーダーとなることに。毎週、海と魚釣りと仕事三昧の人生だったのに、「オレの人生を返せ!」と、正直腹立ちました(笑)。

「往生際の悪い」新理事長と同世代メンバー理事で意気投合

意気投合した、愉快な同期理事メンバー。かけがえのない同志になりました。

そんなことを言いつつも往生際のいい山本さん。理事として理事会に参加してみると、いろいろな気づきがあったそう。1100世帯もあるマンションは、32人理事体制。築36〜38年ともなると、竣工時から住んでいる住民も高齢化、建物も老朽化。 “2つの老い”に直面し、大所帯の理事会は盛り上がらず、唯一ボランティア住民が取り組む修繕委員会だけが活発に活動していました。


山本さん
まず高齢者が多いことにびっくりしましたね。理事会の会議の「意味のない形式」や「進まなさ」にびっくり。ほぼ休んで1年やり過ごそうと思いました(笑)。
ところが同じ境遇で不在者投票の結果、理事長になってしまっていた同世代の鈴木寿一郎さん(故人)が、もうほんと往生際が悪くてね。「理事長はできない!」って言って逃げまくるんですよ。その逃げ回り方と往生際の悪さと痛快さがおかしくって。僕もお手伝いしますからって、理事長をお願いしました。もう、昼から飲みに行っちゃうほど意気投合しました。

実際、理事長になった鈴木さんは当時東日本大震災後の仕事で大忙しだったそうですが、山本さんと同じ仕事の業界ということもあり、すっかり意気投合。
また平成23年度の理事は、メディア関連、テレビ番組のディレクター、元広告代理店のコラムニスト、銀行、デベロッパー、不動産関連の仕事をしている人など、山本さんと同世代か少し上の世代が多かったこともあり、いい意味で活気付きました。
「このメンバーなら、前向きに何かできるかもしれない」と、山本さんもちょっと頑張ってみることに心を決めました。

【ここがポイント!】理事仲間と共通項を見つけて仲良くなる!

月間1万PVのホームページ開設、住民表彰制度導入、メディアからも注目!

パークシティ溝の口の公式ホームページ。ホームページ委員会を設立し、自分たちで運用することで注目され、メディアで紹介されるように! お祭りでは、近所のパソコン教室と提携して住民向けPC教室を開催。みんなが少しずつ自分のマンションへの関心や自信を高めていくという、よい効果を生み出しました。

「パークシティ溝の口」管理組合公式ホームページ※外部サイト

同世代の理事仲間を得て、「理事としてちょっと頑張る」と決意してからの山本さんの活動は目を見張るばかりです。広告・コンテンツ制作関係の仕事の知見を生かし、理事会配下の専門委員会としてホームページ委員会を立ち上げて、公式ホームページを開設。マンションの魅力や情報を内外に発信しはじめました。

「WEB制作会社経営12年…だって社長だったんだもん」と山本さん。会社の技術系スタッフが必死に、簡単なホームページ作成ツールを見つけてくれました。


山本さん
素人でも簡単にホームページが更新できるツールを見つけてもらって、なるべく敷居を低くして、誰でも更新できるように運用マニュアルも作成しました。おかげで、住民だけでなく外部の人も閲覧してくれるようになったんです。管理組合ホームページとしては月間最大1万ページビューもあったので、メディアから取材依頼の声がかかるようになりました。メディアで紹介されると住民からの反応もよくて、「見たわよ」って、声をかけられるようになったのは嬉しかったですね~。

▼パークシティ溝の口の活動が紹介された記事(※マンション・ラボがコンテンツ協力するMAJOR7サイトの記事より)
築34年「パークシティ溝の口」が人気のマンションである理由は、モノ・ヒト・コトにあり!
※外部サイト
【ここがポイント!】自分の特技を活かして貢献!その方がやりやすいというメリットも!

山本さんがホームページを立ち上げようと思ったきっかけのひとつは、地道に活動する住民の存在を紹介したかったからでした。
さまざまな専門職の住民が集まって長年ボランティアとして活動を続ける修繕委員会、30年以上見通しの悪い通学路で交通安全の旗降り誘導をしている近隣女性、敷地の植栽をいつもきれいに管理している住民グループ。まわりを見回すと、多くの住民が自発的に“縁の下の力持ち”的にマンションを支えてくれていたのですね。


山本さん
ホームページは、修繕委員会の修繕内容や工事の状況を住民に知らせる役割(住民のみ閲覧可能ページ)もあったのですが、ホームページを通じて、マンションを支えてくれる住民の活動や存在を、他の住民にも紹介したいと思いました。そこから発展して、マンションに貢献した人物を表彰する「住民表彰制度」が生まれました。

初年度の住民表彰は、大手建設会社を退職後に修繕委員会を立ち上げ、長期修繕計画などを進める矢野捷一郎さんを表彰。多くの時間を割いて15年以上、マンションの維持・管理のために地道な活動を続けています。すごいことです。

▼修繕委員会の活動はこちらの記事をご覧ください。
マンションの大規模修繕は一日にしてならず〜「パークシティ溝の口」修繕委員会の取り組み事例〜

総会で行われる住民表彰は、貢献してくれた住民だけでなく、外部の人も表彰します。マンションの改革に尽力してくださった管理会社の所長さんや山本さんも住民表彰を受けました!


山本さん
とにかくこの期の理事は、いろんな新しいチャレンジをしたので、住民から喜ばれる一方、もちろん反発や反対意見もありました。大所帯だから全員が賛成な訳はない。これは仕方がないですよね。でも鈴木理事長なんかホームページで『理事長になろう!』という連載コラムを書き出して、「文句があるなら理事になってみろ!」って論調でさらに煽る煽る(笑)。改革には、鈴木さんのような個性的な理事長は欠かせないですね。

山本さんたち理事は、ここまで改革したので責任をとってもう1年留任、合計2年間理事を勤めることに。また任期中に、知見を引き継ぐために専門委員会を整備。当時は、ボランティア集団だった修繕委員会を、正式に管理組合傘下の専門委員会に。資産価値向上や管理・維持向上のためのホームページ委員会、総会で揉めることが多い植栽の整備は、合意形成のために植栽委員会を設立しました。

【ここがポイント!】
住民表彰やホームページで、見えない努力を、本人にも他の住民にも“見える化”!

説得にはエビデンスが必要!「先行事例は先輩マンションに学べ!」

先輩マンションの「サンシティ」さんを訪問。この日は、「サンシティ」さんが実施している「住民台帳(災害対策名簿)」の内容を伺いました。この事例が、「パークシティ溝の口」にも「住民台帳」を導入するための力強い後押しになりました。

山本さんたちは、他の先輩マンションの取り組みを見て、「先行事例は先輩マンションに学べ!」と、積極的にそのマンションへ行って教わるようになりました。


山本さん
マンション・ラボの記事で、他のマンション事例を参考にしたことも多いです。超防災マンションと評価の高い、兵庫県加古川市の「加古川グリーンシティ」には、みんなで加古川まで押しかけて、防災についていろいろ学びました。
広大な敷地に豊かな自然環境を維持している板橋区のサンシティさんは、うちのマンションへお招きして、住民の意見が分かれがちな植栽管理や合意形成の方法についてお話しいただきました。

▼加古川グリーンシティ防災会が防災活動に使うイカ焼き機は、早速真似して購入したそう。
超防災マンションが教える、防災コミュニティづくり成功の秘訣
▼広大な敷地の植栽を、住民有志が管理する「サンシティ」(※マンション・ラボがコンテンツ協力するMAJOR7サイトの記事より)
23区内に東京ドーム3個分の敷地・雑木林5万本を有するマンション「サンシティ」で、住民が自ら育んだ資産価値
※外部サイト


山本さん
僕たちは新米理事だし、先輩マンションがやってきたことから得るものが多かったです。持ち帰った知見を、「他のマンションではこうでした」とエビデンスとして見せることで、反対意見を唱えていた方が納得してくださったこともあります。反対意見があった「住民台帳」づくりも、こうしたエビデンスを活用して住民説得に成功しました。

事例発表などで他のマンション理事との交流も盛んに。同じ悩みと喜びを持つ同士、すぐに打ち解けます。マンション同士でつながる重要さに気付いた山本さんたちは、同じ町内の2つのマンションとつながってお祭りや防災イベントを共同開催するようになります。

【ここがポイント!】
先行事例は先輩マンションに学べ!他のマンションの先行事例はエビデンスとして活用!

理事になって良かったこと「地元が倍楽しくなった!」

ホームページ委員会の創設メンバーと。委員長や理事会引退後も、数年間打ち上げの司会のみ依頼されることに(笑)。もちろん、いまでもオブザーバーとしていくつかの委員会に寄与しています。

理事の任期終了後は、自治会や民生委員を経て、いまでも当時の理事仲間と一緒に、お祭りやイベントのサポートに回っています。


山本さん
2年間の理事の仕事を終えたあとも、自治会や民生委員、防災減災委員会と、何かしらマンションのことに関わっています。理事をやってよかったことは、「地元が倍楽しくなった!」ことに尽きますね。歩いていると誰かしらに会うし、飲み屋の店先を通りかかると引きずり込まれることも(笑)。ビフォア理事時代は「帰って寝るだけ」の地元だったのに、アフター理事のいまや「帰ってからが楽しい」地元の付き合いが深まってます。さらに、地元仲間が増えて仕事の拠点も地元に軸足を置き始めたので、ON/OFFの場でどちらも倍以上に濃厚な付き合いに発展しています。

もう一度やる?う〜ん、理事会の課題は「時間」

理事会や総会の活動には、会議や書類づくりなど、それなりに作業時間が必要。総会や重要な説明会などの開催や運営も課題です。

最初は、「海釣りや仕事の時間が奪われる!」と腹立たしかった理事の任命。それが2年で予想外の楽しさと達成感を味わうことになった山本さん。では、また理事をやりたいかというと…。


山本さん
理事仲間は皆、「やりがいを感じた」「やってよかった」と口々に言ってます。僕ももちろん、そう。ただ、「もう1回やるか?」と聞かれれば、「リタイヤして時間ができたら…」が大半の答えです。やりがいはあるけれど、時間が奪われるのも確か。普通の会社員は、あらかじめ年間の予定を調整するなどして臨まないと難しいですよね。

マンションは高齢の住民(世帯主)が約60%と多いこともあり、全体の連絡は紙の書類の投函が基本。投函頻度も多く、どれが必要な書類でどれが不要な書類かが判別しづらく、家族もちょっとイライラしがち。議事録の確認も、書類投函→捺印→総務という手続きを踏みます。
また長時間に及ぶ理事会は、どうしても話の長い人が出てきがちです。おかげで理事会は議論も含めて4時間の長丁場に及ぶことも。また総会は、声の大きい反対意見の人の独壇場となりやすく、理事会や総会の効率化が課題となっています。


山本さん
今年の理事会は、コロナ禍の当初はお休みしつつも、その後はリアルで参集していたようです。6月の総会は、外にあるピロティで開催しました。一方、自治会はオンライン会議を採用して、効率的に活動しているようです。理事会も、オンライン理事会や、スケジューリングや議事録の保管に便利なITツールを導入すれば、ずいぶん効率化できると思うんですけどね。そうすれば、忙しい働き盛り世代も理事になりやすいかも。

コロナ禍でオンライン理事会を導入したマンションでは、コロナ禍に関わりなく今後も利用したいという好意的な意見が多く、理事会の効率化や参加率の向上に貢献しています。このことで、理事さんへの時間的負担や制約が激減すれば、理事のなり手問題の解決になりそうです。

▼オンライン理事会を導入したマンション事例
単身赴任中の理事も参加可能になった!ブラウシアの事例

また、煩雑な管理組合業務の効率化に、専用のITツールを導入して成功しているマンションもあります。こうした便利なツールを活用して、時間を効率的に使う改善策も、これからどんどん必要になるのかもしれませんね。

▼マンション管理組合専用グループウェア「Mcloud」を導入して効率化を図るマンションの事例
マンションのWebシステム導入は「超便利!」を実現するものだった!導入マンションのビフォーアフターとは?

「マンション管理組合専用グループウェア「Mcloud」※外部サイト


山本さん
僕たちから始まった管理組合改革は、次の理事に引き継がれて、いいサイクルで回っているようです。うちは、自治会が新入居者に対してウェルカムパーティを開催するんですが、新入居者の子育て家族さん5世帯中3世帯が、メディアでうちのマンションのことを知っていたそうです。確実な数値データがある訳じゃないけど、築40年弱のマンションで、こうして人気があるのは、管理組合や自治会の活動によって資産価値が担保されているからじゃないかと思います。そういう見えない効果が指標化されれば、理事や住民の励みになっていいんですけどね。

山本 美賢さん

川崎市溝の口在住。TV制作会社→カラオケ会社→ベンチャー企業→ロックアップを起業し、現在に至る。被災地など地方の方々と関わった経験を知見として残し伝えるための組織にも参画。株式会社ノクチ基地代表、一般社団法人減災ラボ理事、ジオラマ推進ネットワーク理事。
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不在者投票で選ばれたときは腹立たしかったという山本さんが、理事会活動に引き込まれていったのは、「同世代の仲間がいたこと」「楽しかったこと」に尽きそうです。あとは、メディア紹介による住民への波及効果、先輩マンションとのつながりと広がりなど、よいサイクルが出来上がっていきました。やっぱり何でも楽しくなければ、行動のモチベーションになりませんよね。
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2020/09/23