いま「まかない付きアパート」が新しい! 賃貸とシェアハウスのリミックスで大成功の「クロスコート向ヶ丘」、その魅力の秘訣とは?

紆余曲折のスタートと新規入居者募集経路の開発

1号棟の2階の3室はコワーキングスペースとして時間貸しに。純和風の凝った設えはそのまま活用して、個性的なコワーキングスペースに仕上がりました。レンタルスペースサイト「SPACEE」に登録して以来、美大生が作業したり、近隣のワーカーが会議を開いたりと、さまざまに活用されています。

夏山さんは、家業が家主でもなく、長年大手企業に勤務してきた、会社員からのゼロスタートの大家さんです。これまで夏山さんが所有してきた不動産の中でも、「クロスコート向ヶ丘」は、いわゆる「ワケあり物件」でした。

高台にある「旗竿地」というメリットは、入居者のプライバシーが確保できて、見晴らしの良いこと。裏手にある竹林は、春には筍掘りが楽しめます。東日本大震災で崩れた擁壁も補修済みです。

夏山さんは、2018年1月に、数年間空き家だった築45年と築49年の母屋付き木造ワンルームアパート2棟、850㎡の敷地を購入しました。
公道に接する出入口部分が細い通路になっていて、その奥に敷地がある「旗竿地(はたざおち)」的な土地ということもあり、販売価格は土地の価格よりも格安になっていましたが、建物内には荷物も多く残され、敷地内は生い茂った樹木や雑草で覆われた状態でした。

夏山さん
知人が手がけた東京・谷中の古民家再生リノベーションを見て、いつか自分でも築古物件の再生を手がけてみたいと考えていました。簡単なリフォームで原状復帰できると見込んでの購入でした。しかし、いざリノベーションを始めてみると、内部にハクビシンや白アリが見つかって害獣害虫対策を施したり、建物の傾き補正工事、給排水設備の整備などの工事が必要になったり、「アパート+民泊」計画から「アパート+まかない付き+コワーキング」へ変更になったりして、結局外装・内装のリノベーションが完了したのはその年の9月でした。

1Rのアパート部分は、空間DECOさんによるステージングを取り入れて入居者募集を始めました。

空間DECOさんによるステージングは、マンション・ラボでもご紹介したもの。最近の賃貸物件の募集には欠かせないものとなってきました。

マンションの賃貸でも売却でも空室がどんどん埋まる!?話題のホームステージングについてきいてみました!

とはいえ、春の転居時期を逃したこともあり、アパート部分の入居者募集は苦戦する結果となりました。しかも従来の不動産仲介業者では「築50年の木造アパート」と聞いただけで、価値を認めず、価格面での値下げを求めてくるような状況でした。

夏山さん
「クロスコート向ヶ丘」には、「古民家リノベーション×まかない付き×住み込み管理人×シェアスペース×コワーキング×生田緑地内という自然環境」という複数組み合わせた個性があります。それが差別化になるのですが、従来の不動産仲介の概念では、それを価値として見てくれない。
じゃあ、その魅力をわかってくれる人たちに直接伝えようと、シェアハウス専門のポータルサイト「ひつじ不動産」や、FacebookなどのSNSを中心に募集することにしました。内覧希望者にも、管理人家族が直接対応できるので、お互いに相手の人柄を見きわめられるのも良かったですね。

アパート部分にもトイレ・バスはありますが、2階の共用スペースにもトイレ、広いバスルームが用意されています。食堂で朝食を食べて、ここで朝の支度をして出勤する入居者さんもいるそうです。

募集経路を変更することで、シェアハウスや古民家リノベーションに興味のある人たちからの問い合わせが増加。また、シニア向けの不動産仲介サイト「R65」にも物件を掲載しました。その結果、外国からの留学生、美大生、遠距離介護をしている60歳代の方といった多彩な年代や背景の入居者で埋まりました。

夏山さん
おかげさまで、いまはキャンセル待ちをいただいてるような状況です。SNS経由で、来年春に上京予定の学生さんのお母さんからも問い合わせをいただきました。親御さんにとっては、住み込みの管理人家族がいて、まかない付きなのが安心できるとおっしゃっていました。

賃貸はハコではない、暮らしというコトを提供する場

庭のカマドを使った、オーナー夏山さんと調理師さんによるBBQ。なんとお二人はBBQ検定の資格まで取得したそうですよ〜。入居者さん、知人、友人、近隣の方も集まって、飛騨牛からマシュマロまで焼く本格BBQパーティとなりました。

「クロスコート向ヶ丘」は、築50年の古民家フルリノベーション、元板前さんによるまかない付き、コワーキングという個性を活かした賃貸として、新たな募集経路を開発して、大成功となりました。

今後は、日本語学校との提携で外国人留学生を積極的に受け入れたり、日本に短期間住みたいという外国人の方の需要に向けてマンスリー賃貸を進めたりしていきたいと、夏山さんの構想は止まりません。

夏山さん
「クロスコート向ヶ丘」は、ただの賃貸のハコじゃなく、「コトを提供する場」です。ここで、いかにおもしろい暮らしを入居者さんに提供できるかということが重要だと思います。
これからも、自分たちで手をかけて、そして楽しみながら、人と人のつながりを大切にしていきたいですね。もともとそういうのが好きで、半分趣味でやっているような部分もありますから(笑)。自分で楽しむ遊び心って大事なんだと思います。


ユニークなまかないアパート「クロスコート向ヶ丘」誕生の背景には、さまざまな紆余曲折がありました。しかしオーナーの夏山さんは、できないことに直面する度に、そのことを武器に変えていく強さと臨機応変さで乗り越えてきました。
何より、オーナーさん、管理人兼調理師さんご家族、入居者さんの顔の見える間柄がステキです。Facebookでの日々の投稿を拝見していると、管理人ご家族が「入居者さんを家族のように思って接している」というのも頷けます。
「何かの時に頼りになるのは、遠くの親戚より、近くの他人ですよ」と、夏山さんがいうように、楽しいことから始まったコミュニティは、何かの時にも強い結びつきで助け合えそうです。

小田急線「向ヶ丘遊園」駅から徒歩9分。生田緑地内の高台にある2棟建て、全20室の1R中心のまかない付きアパート。まかないは、朝食200円、夕食500円。母屋のある1号棟には、入室者専用食堂、ランドリールーム、レンタルスペースがある。ほかにBBQ用カマド、庭付き、インターネット無料、駐輪場完備。現在、人気で空室待ち中。

ひつじ不動産「クロスコート向ヶ丘」 ※外部サイト

夏山さんが、会社員からのゼロスタートで不動産業を始めた経緯や不動産戦略については、今年上梓したばかりの著書に詳しく書かれています。

夏山栄敏『投資オンチでもできた弱者逆転の「ランチェスター式不動産投資成功術」』(セルバ出版) ※外部サイト

2019/11/08