いま「まかない付きアパート」が新しい! 賃貸とシェアハウスのリミックスで大成功の「クロスコート向ヶ丘」、その魅力の秘訣とは?

現在空室待ちが出るほどの人気の賃貸物件が、小田急線「向ヶ丘遊園」駅近くにあります。築50年弱の木造2階建てアパートで、なんと「まかない付き」! オーナーは、賃貸業の経験がまったくなかった元サラリーマン。それだけでなく、このアパートの暮らしぶり、入居者さんも管理人さんもオーナーも、みんなとっても楽しそうなのが魅力なのです。

プロの料理人による「まかない付き」ってすごくない?

「クロスコート向ヶ丘」は高台に位置しています。こちらは1号棟。手前は、2階にある食堂やコワーキングスペースへ通じる玄関、奥は賃貸住戸です。

入居者に食事を提供する「まかない付き下宿」ってご存じですか? 学生さん向けに食事を出す集住スタイル。映画や夏目漱石の小説でしか読んだことがない!という若い人もいるのでは? いまでは「食事付き学生寮」という形態でわずかに残っているだけかも…。

現代にもまかない付き賃貸アパートメントがある!しかも相当美味しいらしい!という噂を聞きつけて伺った「クロスコート向ヶ丘」は、小田急線「向ヶ丘遊園」駅から徒歩9分。駅からバス通りを進むと、なんと広大な緑地を有する生田緑地の敷地内にありました。

ニコニコ笑顔がすてきな「クロスコート向ヶ丘」のオーナーの夏山栄敏さん。都内にお住まいですが、いつもこちらに来ているので入居者の皆さんともすっかり打ち解けた間柄に。

2号棟は、オールブラックにペイントして個性的なスタイルに仕上がりました。こちらは10室の賃貸住戸のみ。正面に、庭やBBQカマドがあります。

2棟ある「クロスコート向ヶ丘」のうち、1号棟の1階には10室の部屋が並び、2階に入居者向け食堂とレンタルスペースがあります。大広間に長い座卓が並んだ食堂は、なんだか夏休みに親戚の家に遊びに来たような親しみある雰囲気です。

大広間に隣接したオープンキッチンで、調理師さんがすでに調理中。

この日は、「平塚漁港祭り」と題したお魚三昧の夕食。オーナーと調理師さんとで、平塚港の漁師さんの元まで直接買い付けに行きます。手書きのかわいいPOPボードは、管理人兼調理師ご夫婦の娘さん(SNS担当)が毎日描いています。

なんとこれで1食500円! ホウボウ、ツバス、平目、鰺のお刺身、アジフライ、アラ汁。新鮮なお魚はどれも美味しかった〜!

入居者は、朝食は前日の12時迄に、夕食は当日の12時迄に予約を入れるシステム。SNSで連絡を入れるので、たまに「残業になったけど、残しておいて〜!」なんていう人も。臨機応変に対応できるのは、管理人兼調理師さんご家族が住み込みでいてくれているからこそですね。

毎日の朝夕メニューは、Facebookとインスタグラムから発信中。旬の食材を取り入れ、バラエティに富んだ献立を工夫している様子がよくわかります。ときに、オーナーや入居者さんからのお土産や食材が食卓に上り、和気あいあいとした雰囲気が写真から伝わります。

夏山さん
土用の丑の日は、ふるさと納税で届いた鰻を差し入れて、「ひつまぶし」を出してもらったりしました。流しそうめんやたこ焼きパーティーをすることもあります。言い出しっぺは、いつも僕なんですけど(笑)。みんなで食べると美味しいし、なにより楽しいですからね。

現在の入居者は30歳代を中心に19歳から62歳までと幅広い。男女構成も半々で、4割ほどが留学生や日本で就職している外国の方々。意外に社会人が多い。もちろん入居者全員がまかないを食べる訳ではなく、居間へお茶だけ飲みにくる人も。自分の部屋とは別に、共用部分としてシェアダイニングがあるイメージです。

夏山さん
「クロスコート向ヶ丘」は、みんなでワイワイできるシェアハウスと、プライベートが確立したアパートのいいとこ取りなんです。水廻りは独立しているので、賑やかなのが好きな人は食堂に来るし、ひとりでいたいときにはそのまま部屋へ帰れる。「集」と「個」の使い分けができる、ちょうどいい距離感だと思います。

どうして「まかない付き」に!?

とある日の食堂。この日は韓国人の入居者さんプロデュースの、本場チゲ鍋パーティ。部屋の奥に見えるのがキッチン(写真向かって右)。最近は自室にテレビを持たない入居者さんも多いので、食堂へテレビを見に来る人もいるそうです。これも新しい住まい方ですね。

——「まかない付きアパートメント」という発想はどこから来たのでしょうか? 

夏山さん
もともと1号棟の2階は、前オーナーの居住スペースでした。リノベーションしたときに、ここは民泊にする予定でしたが、法規則で民泊は難しいということがわかり、方針を変更。そんなとき、東郊住宅社の社長の池田峰さんの講演で、入居者向けの食堂「トーコーキッチン」の話を伺ったのがきっかけですね。うちでもそんなことができたらいいなあと。

トーコーキッチン ※外部サイト

管理人兼調理師さんご夫婦の紹介。一緒に働く娘さんは、手書きポップ制作やSNS担当、入居者さんとのコミュニケーション担当と、いまや「クロスコート向ヶ丘」に欠かせないキーパーソンです。彼女の働き方は、新時代の管理人さんスタイルだなあと感じました。

トーコーキッチンの事例の話から、「妹家族が住み込みで料理人をやってもいいって」と奥様から朗報がもたらされます。妹さんの夫は、和食の板前さんを経て、長年大企業の社員食堂や寮で勤務している調理師。定年間近でもあったのでこの機会に、家族で移住して住み込みで「クロスコート向ヶ丘」の管理人兼調理師を担当してくれることになりました。

夏山さん
なんといってもプロの調理師ですから。食堂に現れた入居者さんの顔を見てから、味噌汁の味噌を溶くし、揚げものも揚げる。お抱えの料理人がいるようなものですよ。

取材中に、「これから仕事です〜!」というフリーライターの女性が、食堂で夕食をとって出かけていかれました。まかない付きというのも、入居を決めるときの魅力のひとつだったそう。さまざまな働き方、年代の入居者さんが交流できるのも、食堂という場があってこそですね。

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2019/11/08