大家さんが“自分の住みたいまち”をつくる!?武蔵新城のまちの活性化をめざすセシーズイシイの取り組み

写真提供 © SESES ISHII LABO

最近、賃貸業を営む大家さんによる意欲的なコミュニティ活動が目立ちます。今回ご紹介する大家さんは、神奈川県川崎市・武蔵新城エリアで賃貸マンションブランド「セシーズイシイ」を管理・運営する石井秀和さんです。賃貸マンション1階の共用部分を地域のHUBとしてまちに開き、「ふらっと1000Bero in 武蔵新城」イベントを開催するなど、大家業だけにとどまらない精力的な活動で、まちを盛り上げています。その秘訣をお伺いしました。

賃貸入居者向けのコミュニティづくりの課題

石井秀和さんは、生まれも育ちも武蔵新城。曾祖父からの不動産賃貸業を受け継ぎ、四代目として活躍しています。

石井さんは、武蔵新城、武蔵中原、溝の口を中心に、自社の賃貸マンションブランド「セシーズイシイ」の18棟・約350戸の賃貸物件を管理しています。

壁紙や床材が選べる「セシーズイシイ」の「カスタマイズ賃貸」の一室。(写真提供 © SESES ISHII LABO)

「セシーズイシイ」は、賃貸でありながらカスタマイズができる「カスタマイズ賃貸」のサービス提供や、ホームステージング、賃貸入居者のためのコミュニティづくりなどを推進してきました。

▼以前、空間DECOさんが手がけるホームステージングの記事でも、「セシーズイシイ」の賃貸コミュニティづくりのコツをご紹介しました。

マンションの賃貸でも売却でも空室がどんどん埋まる!?話題のホームステージングについてきいてみました!

石井さん
うちの賃貸物件は単身者用マンションが多く、入居者の80%は単身世帯です。単身世帯の場合4年に1回は引っ越すことが多く、マニアックなリノベーションにこだわる人はまだ少ないようです。また東日本大震災以降、もしものときのつながりは欲しいとは思いつつ、女性の単身者からすると「自分の住むマンションでコミュニティができても、一人暮らしで住んでいる部屋を知られるのは不安」という声も聞きました。

そこで石井さんは、賃貸入居者のためのクローズドのコミュニティではなく、賃貸マンションの共用部分にまちに開いた場をつくり、入居者も地域の人々も巻き込んでいく方が、入居者も参加しやすいのではないかという思いに至ります。

まちを巻き込む!“まちに開いた共用部”からオープンなコミュニティづくりへ

自社の賃貸マンション1階の共用部分をリノベーション。“まちに開いた共用部”として「PASAR SHINJO (パサール新城)」を2016年にオープン。独自運営のカフェ「新城テラス」、多目的共用スペース「パサールベース」、パン教室「Baking Studio “sucre a la neige”(ベーキングスタジオ “シュクレ ア ラ ネイジュ”)」が入っている。(写真提供 © SESES ISHII LABO)

石井さん
まちに開いた場として「PASAR SHINJO(パサール新城)」を開設したことで、地域に住む人が集まってくるようになりました。
カフェには上に住む入居者さんがふらっとお茶を飲みに来てくれることもありますし、ご自宅でパン教室を主宰している人が場所を探しているからとパン教室が始まったり、多目的共用スペース「パサールベース」の利用から知り合った人との交流で、新しいつながりが自然に広がることもあります。

カフェ「新城テラス」には、川崎市内の自家焙煎珈琲豆、近隣の食材を活かしたメニューなどを取り揃えました。川崎市内の社会福祉法人はぐるまの会が育てた無農薬ハーブを広めるためのプロジェクト「はーぶこーでぃある レモングラス」の販売やドリンクメニューもあります。地元に根付いたコモンカフェになっているのがいいですね。(写真提供 © SESES ISHII LABO)

新城テラス ※外部サイト

多目的共用スペース「パサールベース」は、クチコミで近隣のママさんを中心に広がり、英会話教室、サークル、ワークショップ、地域の人がつながるハンドメイドマルシェなど、多彩なイベントに活用されています。(写真提供 © SESES ISHII LABO)

多目的共用スペース「PASAR BASE(パサールベース)」 ※外部サイト

【POINT①】賃貸物件の共用部分を、まちに開いたHUBスペースに活用

賃貸物件1階の共用部分を、カフェ、多目的スペース、パン教室など、さまざまな人が集まる場としてリノベーションしたことで、求心力のある場が誕生。入居者だけでなく地域の人にコミュニティを開くという、賃貸オーナーとしての決断がうまく機能しました。

まちの魅力の可視化「ふらっと武蔵新城」

「ふらっと1000Bero in 武蔵新城」は、武蔵新城の飲食店を知ってもらうために、複数の地元メンバーでスタートした企画。各店舗がオリジナルの1,000円メニューを考案して参加する、武蔵新城のまちを挙げてのビッグイベントへと成長した。(画像提供 © ふらっと1000Bero in 武蔵新城)

“まちに開いた共用部”が自然発生的なゆるやかな人のつながりを生み出したことで、石井さんは、そこからもう一歩進んだ地域社会活動のサポートを始めます。

そのひとつが、武蔵新城の飲食店が参加する「ふらっと1000Bero in 武蔵新城」です。武蔵新城の住民は、平日は東京や横浜方面の会社で働いていて、地元の飲食店を知らない人も多くいます。そんな住民にまちへ出て地元のお店を知ってもらうきっかけづくりにしようと企画された「ふらっと1000Bero in 武蔵新城」。いまでは飲食店だけでなく、不動産、物販、美容室なども参加する、まちを挙げての名物イベントへ成長しつつあります。

石井さん
もともとは「ふらっと武蔵新城」と名付けた活動で、仲間とFacebookで武蔵新城の食べ歩き情報を発信していたものです。そこに隣町の溝の口で開催していた「1000 bero」イベントをドッキングさせました。
いまやコミュニティサポートの仕事が凄く増えてきていて、まちづくり屋さんみたいになっています(笑)。武蔵新城には、おもしろい活動をしている人も多くて、みんなが地域経済と文化を盛り上げていけば、相当おもしろいまちになるはず。実際、イベントをきっかけに、武蔵新城に住みたいと引っ越してきてくれる人がいたりして、手応えを感じています。

ふらっと1000Bero in 武蔵新城 ※外部サイト

「PASAR SHINJO」の近くにある賃貸マンション「石井ビル」の住居6室は、石井さんの友人の手によって「仕立てる賃貸」としてリノベーションが進行し、その現場監督を担当した人や石井さんのお友達が住む部屋が5室になっているという求心力ぶりです。おもしろことをやっている人のまわりには、一緒にやりたい仲間がどんどん集まってくるのでしょう。

武蔵新城のまちを巻き込んだ社会活動をすることで、新たなコミュニティを創造し、このまちに住みたい人を増やせば、まわりまわって賃貸物件の空室対策にもつながるはず、という石井さんの計画は、順調に育まれているようです。やはり「このまちに住みたい!」という魅力がなければ、まちの活性化もありえません。

石井さん
以前「リノベーションスクール」で若い人たちと一緒になって、リノベーションプランやまちづくりの実践を学んだ経験が、いまの自分の糧となっていると思います。自分がここに住みたい!と思うほど、まちの価値をつくりださなければ、不動産業だって成り立たない。大家仲間や面白い試みをしている人たちと知り合って、悩みを共有できたのも大きいですね。

【POINT②】まちの魅力を可視化する地域社会活動やイベントに積極的に関わる

遊び、学び、地域貢献、さまざまな地域社会活動が活発化することで、まちの魅力が可視化されていきます。内外の人から「このまち、おもしろい!」と思ってもらえるイベントに積極的に関わり、イベントを創造していくことが、石井さんの事業にもつながっています。

職住“超”近接! テレワークの時代、まちに仕事場を増やす

多目的共用スペース「パサールベース」では、テーブル1枚・1時間単位で貸し出しも行っています。(写真提供 © SESES ISHII LABO)

さまざまな仕掛けを企画して自ら動いていく石井さんですが、いま考えているのは、将来テレワークが浸透する社会を見込んで、武蔵新城を職住“超”近接のまちとすることだそうです。

石井さん
政府のテレワーク推進で、会社に行かない働き方が当たり前になれば、人々の暮らし方が変わってくるはず。自分が住んでいる場所にテレワークできるシェアスペースやシェアオフィスがあるとか、地域で知り合った人と新たな仕事を創造するとか、地元コミュニティで活躍するとか、まちへの関わり方も変わってきます。武蔵新城に人々が関われる場や機会があれば、職住“超”近接のまちとして魅力的に発展していくのではないでしょうか。そんなまちのプロデューサーとして、武蔵新城で新しいコミュニティの仕掛けをつくっていければと考えています。

【POINT③】まちの可能性を模索する

将来のテレワーク推進にあわせて、職住“超”近接のまちとしての可能性を探るなど、時代の変化と共に、常にニーズを掘り起こしていく視点も賃貸オーナーには必要なことです。

その他、石井さんがいま現在関わっているさまざまな企画は、以下のサイトでご覧いただけます。
SESES ISHI LABO ※外部サイト


最近は大家としてテナントの事業計画をチェックするなど、テナントと一緒に建物のブランディングや価値の創造を行っているという石井さん。大家業からまちづくりへ、また新たな挑戦が生まれてくるに違いありません。これからの石井さんの活躍から目が離せません!

セシーズイシイ代表 石井秀和(いしい ひでかず)さん

1975年11月生まれ。生まれも育ちも川崎市中原区。株式会社南荘(みなみそう)石井事務所 代表取締役。不動産賃貸業を家業としている。大学卒業後IT企業に就職、その後24歳で家業に戻り、約350世帯を自主管理。現在は武蔵新城を中心に展開するセシーズイシイマンションシリーズを管理。賃貸マンション共用部を改装し、「PASAR SHINJO」を開設。それをきっかけにJR南武線「武蔵新城」駅を中心としたエリアに「この街に住みたい、住んで良かった」という人を増やすための仕組みづくり、情報発信やイベント企画などさまざまな活動を行っている。
セシーズイシイ:株式会社南荘石井事務所 ※外部サイト
※「セシーズイシイ」は、株式会社南荘石井事務所の提供する総合賃貸サービスの総称です。

その他、賃貸オーナーさんの取り組みを紹介した記事もあわせてご覧ください。

空室0%!賃料UP!を実現する若手大家さん・越水さんの元気とアイデアがあふれる取り組みを紹介!
カスタマイズ賃貸に学ぶ、マンションDIYの魅力〜エスポワール松風台

2019/10/25