マンション騒音問題、相手の心を動かす「促し方」で、苦情の手紙を書く

苦情の目的は、問題を解決すること!相手を責めることではない。

—感情的にならないで、相手に対処を促すためには、どのような苦情の手紙を書けばよいのでしょうか?

井上さん「言う側も決していい気分ではありませんし、何らかの迷惑を被っていることを考えますとその気持ちも理解できます。しかし苦情や抗議の目的は、相手を促して対処してもらうことですね。“促す”というのは、相手が自分の意思でそうする気持ちになって行動する・行動させるわけです。ですから、一方的にこちらの不都合を書き連ねて相手を責めても相手が動いてくれなければ、問題解決にはなりません。相手がこちらの事情を汲み取ってくれるように、事実は明記しながらも、ときには穏やかな表現を用いるなどの配慮も必要でしょう。こちらの事情や気持ちに共感してもらえること、理解を得ることが大切です。騒音などについては、自分だけでなくほかの住民の方も同じように迷惑しているという事実があれば、その点も明記するのもひとつの方法でしょう」

「苦情を述べる目的は、相手の反省の気持ちを促し、こちらの希望にそうように速やかに対処してもらうことが大切」という井上さんのアドバイスは、騒音問題だけでなく、さまざまなトラブルへの対処方法に共通して言えることですね。

苦情の手紙には、第三者視点も取り入れて、一度冷静になって書くことが必要だという井上さんのアドバイスを以下にまとめてみました。

苦情の手紙を書く際に注意すべきこと

□感情的になりすぎないように、冷静に状況を説明する。
□内容に誤りがないよう、事実を正確に明記する。
□事実を明記しながらも、穏やかな表現を用いることも気くばり。
□たとえ苦情であっても、マナーは大切。

実際に苦情の手紙を書く上での大切な4つのポイント!

しかし「実際にどうやって書けばいいのかわからない」「手紙を書くのは苦手」という方も多いはず。そこで、管理組合宛に出す上階の生活騒音への苦情の手紙サンプルを、マンション・ラボ編集部と井上さんで作成してみました。さらに、このサンプルをベースにアドバイスも加えていただきました。

編集部で作成した苦情の手紙サンプルを、井上さんに添削していただきました。大切なのは4つのポイントでした。

編集部で作成した苦情の手紙サンプルを、井上さんに添削していただきました。大切なのは4つのポイントでした。

井上さんの4つのアドバイス

【1】手紙を読む人への配慮

手紙の最初に、部屋番号・氏名なども自分の自己紹介をきちんと行います。また、読んでもらう相手(管理組合、管理会社など)への配慮の気持ちも忘れずに書きましょう。
言い換え例:お忙しいところ、お恐れ入ります/突然のお手紙で誠に申し訳ございません/など

【2】苦情の概要と経緯説明

現在の状況、いつから始まっているのか、騒音の時間帯、騒音の概要と経緯を明確に簡潔に説明します。もし、ほかの住戸の方も騒音を感じているという声があれば、まわりの方もお困りになっているという情報を追記しましょう。騒音を感じているのが自分だけではないことを立証することにもつながります。
言い換え例:ご近所の方の意見も伺ってみたところ/周りの方もお困りのようでしたので/など

【3】相手の立場にも寄り添う

小さいお子さんがある程度大きな声で騒ぐことに関していえば、どうしようもない場合もあります。相手のご家庭の気持ちにも共感できるという気持ちを伝えて、相手の立場に寄り添ってお願いすると、相手の行動を促す力が増します。
言い換え例:元気なことが一番ですが/お子さんが成長する過程で当然のことと理解しておりますが…/など

【4】解決方法の提案

最後に、どうしてほしいのか、こちらからも解決方法を言える範囲で提案するのもいいでしょう。やみくもに「やめてください!」というのでは解決できません。暮らしている限り、ある程度の生活騒音は仕方のないこともあります。たとえば、早朝・深夜などの時間を区切って配慮してもらうなど、どこか折り合える点を提案して改善を願うのが好ましいでしょう。

井上さん「大切なのは、こちらの権利ばかりを主張するのではなく、相手に理解してもらう、お願いするという気持ちかと思います。手紙の中でも、苦情や抗議といったものはお詫びなどと同じく書きにくいものですね。言葉ひとつで相手に与える印象も違ってきますし、相手が気分を害してしまい、解決どころか逆効果になってしまう恐れもあります。今後お付き合いをするうえで気まずさが残らないように、マナーや配慮も忘れずにうまく伝えることができたらいいものですね」

1106254115_main_lより多くの言い換え表現を知るために役立つ井上さんの著書。「隣人のゴミの捨て方についての苦情」の手紙や、手紙・メール・FAXなどのマナーが、Q&A方式で文例と共に紹介されています。

井上明美『最新 手紙・メールのマナーQ&A事典』(小学館)(外部リンク)

「相身互い」の精神が、マンショントラブルを未然に防ぐ!

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井上さん「同じ境遇にあるもの同士が、共感を持って助け合うことや、またそういった間柄のことを“相身互い(あいみたがい)”と言いますね。マンションという同じ屋根の下に住んでいる者同士ですから、“相身互い”の精神で思いやり助け合って暮らしていけるのが理想的でしょう。感じ方の個人差はあるかもしれませんが、たとえば、顔を見合わせたら挨拶をするなど、多少のコミュニケーションがあると、大きなトラブルも起こりにくいのではないでしょうか」

井上さんが数年前に住んでいたマンションでは、飼い猫が部屋から逃げ出したときに、管理員さんが、まるで自分のことのように親身になって探してくれたそうです。また、猫好きの方とのおつきあいもあり、引っ越したいまでも、管理員さんや住民の方と年賀状のやりとりや交流を行っています。マンションでそんなおつきあいを築くことができるってすてきですね。
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井上 明美さん

井上明美 着物写真Aビジネスマナー・敬語講師。国語学者、故金田一春彦氏の元秘書。言葉の使い方や敬語の講師として、企業・学校などの教育研修指導の場で講義・指導を行う。長年の秘書経験に基づく、心くばりに重きを置いた実践的な指導内容には定評があり、話し方のほか、手紙の書き方などに関する執筆や講演も多い。総合情報サイトAll Aboutでは、「手紙の書き方」ガイドを務める。著書多数。
→最新刊『できる人は、ここまでやっている!一生使える「敬語の基本」が身につく本』(大和出版)(外部リンク)
総合情報サイトAll About「手紙の書き方」ガイド(外部リンク)


騒音は我慢し続けるのもつらいものです。適切な言葉で知らせることで、相手にも解決を促すことができるといいですね。

以前マンション・ラボで、住民同士の年賀状交換でコミュニティづくりを行うアイデアを紹介したことがあります。こうした運動もまた、騒音問題解決の一助になるかもしれません。ご一読ください。

マンションのコミュニティづくりのアイデア~コミュニティカードや切手のいらない年賀状とは?~

2016/10/22