プールを多目的室に!カーシェアリングの実施!マンションコミュニティパワーの原動力とは?

仙台初の免震タワーマンションであるライオンズタワー仙台広瀬は、前回の記事でご紹介したように、居住者で一致団結して3.11を乗り切った。

その団結力の秘密は、共有施設のプールを多目的スタジオに変更するなど、大きな問題を自分達で乗り越えてきた解決力と、積極的なコミュニティパワーにあった。

今までのコミュニティでの取り組みを、管理組合法人の杉山丞理事長にお伺いした。

マンションを経営的視点で見ると、赤字の共有施設は大きな問題

ライオンズタワー仙台広瀬には、30階に料理の出来るスカイラウンジ。2〜3階には、プレイスタジオ、テラスラウンジ、スポーツジム、スタジオ、保育園。1階には、集会室、キッズルーム、ゲストルーム。さらに敷地内には、近隣の人も利用できる喫茶コーナー、立体駐車場や洗車場が用意されている。

大規模マンションの魅力のひとつは、こうした豪華な共有施設にあるが、実際の問題は入居後に見えてくることがある。利用客の少なさから当初想定していた共有施設の使用料が入らず、その維持費が赤字になって管理費アップに反映される問題も少なくない。ライオンズタワー仙台広瀬でも、まさにその問題に直面した。しかし、管理規約変更や共有部分の変更には、区分所有者と議決権の3/4以上の賛成が必要となるため、問題解決には時間がかかる。ライオンズタワー仙台広瀬は、こうしたひとつひとつの問題を、居住者が積極的に関わることでクリアしていった。そこには、初年度からマンションの財政健全化に取り組んだ住民パワーがあった。

無駄を省く!財政健全化への取り組みが深い絆を生んだ

ライオンズタワー仙台広瀬では、初年度の臨時総会の議案内容に疑問を感じた居住者が、ネットを活用してコミュニケーションを取り合い、問題解決に立ち上がった。まず設立総会で予算案や修繕計画を保留として、問題提議した居住者が理事に立候補。新たな議案を提議し、毎週夜遅くまで会合の場を設け、皆で議論を重ねて財政健全化に取り組んだという。大規模マンションでは、なかなか積極的に理事会などに関わらないケースも多いが、ライオンズタワー仙台広瀬の場合は違った。
理事会の積極的な改善の取り組みのおかげで、支出の大幅削減に成功。そこから、機械式駐車場収入の10%積立を60%積立に変更し、20年で5.7億円の赤字になるところを黒字に。その他、エレベーターの保守費用や管理体制を見直すことで、管理費を15%削減することにも成功した。さらに、理事会が管理会社と向い合って財政健全化という大きな問題解決に立ち向かったことで、深い絆が生まれ、その後のサークル活動などの交流にも発展したという。

では具体的にどのような取り組みを行ってきたのか、その事例を次にご紹介しよう。

プールが多目的スタジオに!共用施設の改善を成し遂げる

ライオンズタワー仙台広瀬には、先に挙げたようにさまざまな共有施設がある。管理組合では、これら共有施設の過去5年間の総利用数と総収入を洗い出して、その利用状況をチェックした。たとえば、スカイラウンジは年末年始には利用が多く予約が取りにくいほど人気だが、温水プールのアクアスタジオは、ガス代・清掃などの維持費がかかる割に月5回ほどの利用しかなかった。利用状況を確認してみると、多目的に使える施設ほど人気が高く、プールやヒーリングスタジオといった特殊な施設は利用客が少ないことが判明した。

多目的ホールの改修計画図により、大規模な改造だったことがわかる。

特にアクアスタジオは、年間200万円の維持費がかかっている赤字運営施設だったため、6年目に3,000万円の費用をかけて、卓球や音楽・ダンスができる多目的スタジオに変更することとした。また、隣接していたヒーリングスタジオやロッカー室などは、キッチン付きのミーティングラウンジに変えた。このことにより、多目的スタジオとミーティングラウンジを一体利用することで、軽運動や音楽の発表会、ダンス、懇親の場など、さまざまな用途に使用することができるようになり、利用者が大幅に増大したという。

アクアスタジオ(温水プール)が多目的ホールに!

また、1階のオートロックの外にあったギャラリールームは、外部の人も利用できる喫茶室に変更。これら共有施設の改善によって、高齢者を始めとした多くの居住者が気軽に集える場を得たことでコミュニティも活性化するようになった。

カーシェアリング導入により、機械式駐車場削減計画が実現可能に近づく

ライオンズタワー仙台広瀬の機械式駐車場は、342台を収容できるものだった。しかし市中心部という交通の便のいい立地条件と環境負荷、そして今後の維持費を考えると、カーシェアリングを導入して機械式駐車場数を減らしていくことが良策という結論に至った。

しかし最初から理事会主導という進め方ではない。事前に実施したアンケートでは、マイカー保有者の半数以上が毎日使用していない現状が判明。また、2割の居住者にカーシェアリング参加の意向があることがわかった。そこで杉山理事長ら有志数名によって「カーシェアリングの会」を発足。9世帯で1台を共同使用することから始まった。当時の仙台ではカーシェアリング業者がいなかったため、レンタカー業者から車を借りて、会員のボランティアでカーシェアリング事業として自主運営を行った。6時間1,600円、12時間2,600円という安価な料金設定により、徐々に利用者は増え、現在34名の会員で2台を共有するところまで拡大してきたという。マイカーを手放してカーシェアリング会員になる居住者も現れはじめ、期待通りに空き駐車場区画も増え、機械式駐車場の一部解体が実現可能になりつつあるという。

「現代ではマイカーを一家に一台持つということ自体が環境負荷となります。粗大ゴミや二酸化炭素排出を減らすエコ活動に貢献できるほか、車の維持費も劇的に安くなりますし、住民同士の結びつきを強めていくという効果もありました」と、杉山理事長は語る。
こうした取り組みも、集住というマンションならではの利点を生かしたものだといえる。

会費無料・全員参加の自治会誕生でイベントやサークル活動が活発に

ライオンズタワー仙台広瀬では、財政健全化に取り組んだ結果生まれた余剰金を利用して、一般会計から自治会費を捻出。居住者全員が、会費無料の自治会へ自動的に入会となるシステムを設けて、マンション内自治会を設立した。さらに、行政からの自治会補助費や廃品回収の収入などを自治会運営費に回して、さまざまな季節イベントの開催や、コーラスや英会話などのサークル活動の支援を行っている。登録したサークルには、共用施設の優先予約や月1回の無料使用、コピーや印刷設備の無料使用権などを提供するかわりに、たとえば夏祭りイベント時などに、フラダンスサークルに踊ってもらったり、音楽グループに演奏してもらったり、といった協力関係がうまく機能しているという。

さまざまなサークル活動に活用されている多目的ホール

多目的ホールでは音楽演奏会も行われている。

管理組合は、実質的なマンションのハードを管理する組織だとすると、マンション内の自治会はいわばマンションのソフト(人の交流)をオーガナイズする組織だといえるだろう。

また自治会では、2005年に行政の福祉サービスを利用した「介護予防教室」を試験的に実施。好評を博したため、その後は自治会主催のサービスとして、「いきいき健康教室」を月3回の会費制で継続している。「いきいき健康教室」は、高齢者を含め居住者全員の健康管理と参加者の交流に役立っている。

当初は在宅介護支援センターの協力を得て実施されていたサービスが、自治会主催イベントとして継続されている。小さい子どもの遊び場だったキッズルームが高齢者のための場に活用されているのも意義深い。

従来のマンションコミュニティの交流は、楽しみや遊びの部分からアプローチしていたが、健康維持を皆の共通目的に据えたところは、非常に新しい発想であり、今後主軸となっていく予感がする。

2フロア毎に顔見知りになろう! 3.11以降の取り組み

3.11では、こうした日頃からの積極的な取り組みが功を奏し、1階のキッズルームを一時避難スペースに、ゲストルームは車いすの方の宿泊スペースにするなど、共有施設が臨機応変に活用された。3.11を経験して以降、隣近所のコミュニティが防災体制の基本であると実感した自治会は、2フロアを1ブロックとしてブロック別懇親会を企画。居住者の反応も好評のため、自治会の定例行事に発展しているという。

ブロック別懇親会の様子。皆、名札を首からぶらさげて参加している。

「3.11の際、自治会長と一緒に、支援要望のあった高齢者宅を一軒一軒訪問しました。エレベーターが止まったこともあり、買い出しに行けなくて困っているという高齢者宅には、自治会で調達した水や野菜をわずかですがお届けしたりもしましたが、今後の災害で電気や水の普及がこれより時間がかかることを想定すると、各家庭での3日分の備蓄や、フロア単位で居住者の安否確認をする必要性を痛感しました」と杉山理事長は語る。

確かに、同じフロアの居住者とは生活時間が異なれば顔を知らないことも多い。しかし緊急時には同じフロア同士で助け合う方が安否確認もスピーディだろう。自治会では、2フロア毎の懇親会で名札をつけてもらって、さらにその際の集合写真を撮って参加者に配布。顔と名前を覚えやすくする工夫を施している。また、ブロック毎に班長を決めている。こうした小さな居住者の輪は、確実な防災につながる。ぜひ他のマンションでも見習いたい、小さな交流アイデアのひとつだ。

互いを尊重し、問題意識を共有して協働作業を行うことの大切さ

理事会と自治会の積極的な取り組みが、こうしてさまざまな計画の実現化につながっているが、多数の居住者から賛同を得るための秘訣とは何だろう?

「ポジティブな問題意識を共有して皆で智恵を絞ることが、さまざまなコスト削減の実現化につながっていると思います。たとえば機械式駐車場の修繕積立金が大幅に不足することが判明した際も、高いからと値下げ交渉を管理会社相手にするのではなく、長期修繕計画の健全化のためにお互いに知恵を絞りましょう、と管理会社と共に同じ方向を向く協働体制をとるようにしました。また、数年後には、機械式駐車場そのものを削減していくために、近隣に駐車場用地を購入しようと管理組合を法人化したり、カーシェアリングという見地からも取り組みました。しかも、やりたい人が率先して自主的に活動し、その輪を次第に広げていく。これはどの活動でも同じです。基本的には、互いを尊重し、信頼関係を積み上げていくことで、大きな問題に立ち向かえるのです」と、杉山理事長は答える。

ポジティブな発想、自主的に動く、小さな輪から大きな輪へ、これらがライオンズタワー仙台広瀬のコミュニティパワーの秘訣だといえる。

ライオンズタワー仙台広瀬の理事会では、財政の健全化と将来に備えた住環境整備を2つのテーマとして掲げている。財政の健全化は、マンションの普遍的テーマであるが、ライオンズタワー仙台広瀬では、10年後のマンション世帯の高齢化を見越して、居住者交流イベントやサークル活動の支援、高齢者が憩える共有スペースの整備、介護予防サービスやカーシェアリングサービスの提供といったきめ細かな部分まで取り組んでいる。
これは、今後未曾有の高齢化社会に突入する現代において、集住のマンションが積極的に取り組むべき共通のテーマだ。ぜひ皆さんのマンションでもこれらテーマについて話し合ってみてほしい。

ライオンズタワー仙台広瀬の防災への取り組みの記事はこちら
仙台初の免震マンションがコミュニティの力で3.11を乗り切った!~被災マンションレポート~

2012/10/24